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タイトル未定  作者: 影丸
第一章 陰から影へ(転生編)
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第ニ十七話 初めてのお使い、いざ空陰鍛冶屋へ

 店を出た途端、足を止めたくなるような暑気。


 ふと、空を見上げると、燦々と光輝く太陽。

 雲一つなく、日陰がほとんどない。


 少しでもいいので陰を作ってくれと思うも、そんな僕の思いは叶わず、容赦なく陽光が地面を照らし、陽炎が発生している。

 きっと地面は高温になっているに違いない。

 

 そんな地獄の暑さの中を歩いている多種多様な人たち。

 そして、深くフードを被り、下を向いて歩く一人の子供。

 そう、僕です。


 両手で大きな箱を抱え、その親指で母親に書いてもらった紙切れを押さえ、たまに確認する。


 フードを被る理由。

 一つは、暑さ防止。

 もう一つは、他人の目線を感じたくないため。ここ重要。


 ――だが、無理だった。


 フードでも緩和されないほどの陽光。

 更に、両手に大きな箱を抱えている為、強制的に周りの視線を集めてしまった。

 しかも、箱は白色の包装に、大きな青色のリボンが付いている。


 うん、これは目を引くよね……。

 多分僕が周りの人だったら、二度見して凝視する。


 てか、今疑問に思ったんだけど、なんでこんな目立つ包装なの?

 プレゼントとは聞いたけどさ。めっちゃ大きいし。


 周りの人たちは多分、こう思っているだろう。


 小さな子供が想いを寄せる相手にプレゼントを渡すのだと。


 だって、さっきから周りの人たちがニヤニヤしてこっちを見てるんだよ?

 こっちは恥ずかしさで頬が林檎みたいに赤くなって爆発しそうなのにさ。


 いや、本当に人見知りには厳しいって。

 更に僕は陰キャなんだぞ。


 確かに僕は、陰キャを脱したい。

 そう願ったことはあるし、その気持ちはある。

 けど、今ほど日陰者で居たいと思ったことはない……。


 それほどの視線を感じ、早歩きで進み続け、遂に目的地である空陰鍛冶屋に到着。


 外壁はざらついて、青色に塗装。

 屋根は黒色の瓦。

 その上には煙突が一つ。


 出入り口の上に巨大な看板があり、『空陰鍛冶屋』と書いてある。


 どうやら、ここで間違いなさそう。


 外観だけでも立派な感じが伝わってくる建物。

 卯月衣服店と瓜二つ。とまではいかないが、かなり似ている。


 卯月衣服店の外観。

 外壁はざらついて、赤色に塗装。

 屋根は白色の瓦。

 煙突はないが、大きさや形は近しいものを感じる。


 ま、それはいいとして。

 僕はその店に入る前に、深呼吸を一度。


 更にもう一度深呼吸を試みる。


 そして、心の準備を整え、いざ!

 初めてのお使い先、空陰鍛冶屋へ!


 ――と、その前に。


 僕は母親に書いてもらった紙切れを右ポケットへ。

 更にプレゼントを左腕で抱える。


 よし、準備完了。


 改めて、いざ!

 初めてのお使い先、空陰鍛冶屋へ!


 と威勢がいいのは頭の中でのみ。

 実際は緊張で心臓が飛び出しそうなほどドキドキが止まらない。


 僕は緊張で震える右手をドアノブへ。

 そして、扉を開き、入店……。


 と同時に、一言。


「す、すいません……」


 自分でも驚くほど小さい声。

 しかも緊張で震える。


 中に入り、周囲を見渡す。

 だが……。


「えっと。って、誰も居ない……?」


 え?

 誰一人いない、だと……。

 緊張の余り、心の声が漏れた。


 おいおい不用心だな。

 もし僕が強盗だったら、ここにある武器や防具全部盗んじゃうよ?

 この影の能力で。


 まあ、勿論そんなことはしませんが。


 仕方がないので、店の中を徘徊。

 そして、壁に掛けられた様々な武器。

 棚に飾られている防具。

 アクリルケースに並べられたアクセサリー。


「おお〜」


 それらを見て、自然と声を口にする僕。

 これは緊張からではない。

 というより、いつの間にか緊張が消えていた。


 恐らく、それ以上に唆る物たちを目の前にし、感情が変化したのだろう。

 だとしたら、初めてのお使いがこの店で良かった。


 僕の中で一番興味を引く物、それが全て揃っているのだから。


 僕はそのまま武器や防具などを凝視。

 そして、立て掛けてある値段の札をチラ見。


 うん。

 高額すぎて言葉にできない……。

 直ぐに目線を逸らす。


 すると、近づいて来る足音が聞こえる。

 けど、僕は武器や防具に夢中で気付いてない。

 それほどの集中力を今発揮中。


「お、いらっしゃい」


 と、一人の男性が一言。


 その声で、遂に誰かの存在に気付いた僕。


「ひゃっ!」


 その反応で変な声が出ちゃった。

 はっず……。


「あ、ごめんごめん。驚かせるつもりはなかったんだけど、大丈夫?」


 その男性は右手に後頭部を当て、申し訳なさそうに謝罪している。


「あ、はい。大丈夫です。あの、空陰鍛冶屋の人ですか?」


 僕は気を取り直し。

 確認の為、その男性に質問を一つ。


「うん。そうだよ。俺はここの店長をしてる、輪陰回連(わかげかいれん)だよ。って言っても、従業員は俺だけなんだけどね」


 その男性は、輪陰回連。

 黒色の髪に、緑色の瞳をしたイケメン男性。

 年齢は二十代後半。

 頭には白色のタオルを巻き、甚平みたいな衣服を着ている。


 ぱっと見た感じと、話し方から、優しそうな印象。

 どうやら、母親が言っていた優しい男性は、この人で間違いなさそうだ。


 となれば、本題に入ろう。


「そうなんですね。あの、僕は月影浸夜っていいます。今日は母の月影璃映から、こちらにプレゼントを渡すように言付かっており、お届けに参りました」


 丁寧に自己紹介と、今日ここに来た目的を説明し、持ってるプレゼントを差し出した。


 少々子供らしくない気がするが、今はそんな余裕はない。

 さっきの緊張が蘇りつつあるのだ。


「月影……。そうか、君が……。ありがとう、あの子も喜ぶよ」


 輪陰さんは僕からプレゼントを受け取った。

 と同時に、何故か目を見開き、驚いている。


 まあ、プレゼントを送るくらいだから、母親の知り合いあろうし、僕のことも知ってるのかもしれない。

 だとしたら、僕が長い間覚醒していないのも知ってる可能性がある。

 なら、驚いても無理はない、か。


 ――ん?


「あの子?」


「ん、あれ? もしかして、あ母さんから何も聞いてないのかい?」


「はい、特には何も。ただそのプレゼントを空陰鍛冶屋にいる優しい男性に渡すように言われただけです」


 僕は母親から聞いた情報を全て伝えた。


「はははっ。そうか、優しい男性か。まあ、悪い気はしないが。そのプレゼントは、きっと一人の女の子に向けてのものだと思う」


 輪陰さんは笑った後、プレゼントの包装を丁寧に剥がし、中身を開いて確認。


 その中には、衣服。

 しかも、全て女性ものだ。

 更に言えば、子供用。


「あ、本当ですね。全部女性ものだ」


「うん。あ、そうだ。浸夜くん、この後って時間あるかな?」


 唐突に輪陰さんからの問い掛け。


「え? あ、はい。大丈夫です」


 それに反応する僕。


 気のせいだろうか?

 嫌な予感がする。


「そっか。じゃあ、次は俺からのお使いを頼まれてくれないかい?」


 と、僕の反応を確認し、更にお使いを要求してくる輪陰さん。


「え。あー……」


 当然戸惑う僕。


 嫌な予感的中。

 けど、輪陰さんとは今日初めて会った。

 輪陰さんは僕のことを知っていても、僕は知らない。


 だから、失礼だけど、まだ完全に信頼できていない。


 それに、もし僕が子供だからって理由で頼んでいるのなら、そんな簡単には引き受けられない。


 更に、暑いから、もう帰りたい……。


 なら、きっぱりと断ろう。


「勿論、報酬は弾むよ」


 だが、追加でご褒美の言葉を口にする輪陰さん。


「分かりました」


 即答する僕。


 その言葉を待ってました!


 さっきまでの正当な理由はどこへ?

 そう疑問に思うほど、子供というのは正直だ。


 まあ、報酬があるのなら、喜んで引き受けよう。


「そ、即答だね。うん、素直でいいよ。子供はそうでなくっちゃ」


 少し動揺する輪陰さん。


 だが、何故か褒めた。


「はい。それで、どこに行ったらいいですか?」


「うん。実は、今から鷹爪(たかつめ)宝魔晶店っていうお店に行ってほしいんだ。それで、そのお店、または近くにいる女の子を手伝って、ここまで戻って来てほしい。いいかな?」


 意外と簡単なお使い。

 母親のお使いの後だと、余計にそう思ってしまう。

 恐らくこの頃、母親はくしゃみをしているはずだ。


「分かりました。因みに、その女の子の特徴ってありますか?」


 僕は輪陰さんに疑問を問う。


「うん、あるよ。君と同じモノクルを右側に掛けてるから、一目で分かるはずだ。それと、台車に宝石や魔晶石を箱一杯に詰んで運んでると思う」


 輪陰さんは、僕が左側に付けているモノクルを、右手人差し指で差し、返答。


 正直、髪の色や瞳の色だったら、探すのが大変だと思った。

 けど、モノクルを掛けている女児で、台車で大きな荷物を運んでいる。

 そこまで特徴があれば、探すのは容易だ。


 速攻で終わらせる。


「はい、分かりました。任せて下さい」


「ありがとう。ちょっと待ってね」


 輪陰さんは僕に背を向け、一つの机に向かって移動。


 そして、右腕を動かし、何かを書いている? 気がする。

 恐らく、行き先である鷹爪宝魔晶店の地図だ。


 その後、一枚の紙切れを右手に持ち、こちらに向かって来る。


「はい。これに鷹爪宝魔晶店の行き先を書いておいたから、それを見ながら気をつけて行っておいで」


 予想通り、お使いの行き先を書いてくれていた。

 しかも、とても分かりやすい。


 建物の外観や、近くの建物のことなど、鮮明に書いてある。


 流石は優しい男性と定評のある輪陰さんだ。


 まあ、多分言ってるの母親と僕だけだと思うけど……。


「ありがとうございます。では、行って来ます」


「うん。よろしくね」


 斯くして、僕は新たに輪陰さんの優に負け、外に広がる夕の中へ進んで行く。

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