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タイトル未定  作者: 影丸
第一章 陰から影へ(転生編)
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第ニ十六話 子供らしく振る舞う

 あれから約三ヶ月が経った。


 まず、あの日から起こった出来事を報告しよう。


 塞養さんはあの日の戦闘で無理をした結果、全身筋肉痛に。

 更に筋肉痛の影響で免疫力が低下し、夏風邪を引いてしまったらしい。


 当然僕はお見舞いに行った。

 元はと言えば、僕のために頑張ってくれた結果だ。


 僕は塞養さんが好物の柏餅を持参し、塞養さんの元へ。

 そこには看病をしている母親が出迎え、僕も及ばずながら看病をした。


 そして、しっかり休息を取り、塞養さんはすっかり元気になった。

 逆に今度は元気すぎて心配になるほど元気です。


 それに母親は何か吹っ切れたような、そんな表情を浮かべるようになった。

 何かあった、のだと思う。


 けど、悪いことではないことは伝わってくる。

 なので良し。


 まあ、何はともあれ二人とも元気。

 それが一番いい報告だ。


 で、僕はというと……。


「浸夜〜。今ちょっといい?」


 店の手伝いをさせられてると、突如母親が呼びかけてくる。


「うん。大丈夫だよ。どうかしたの?」


「ちょっと、浸夜にお使いをお願いしたいのよ」


 ほうほう。

 お使いですか……。

 うん、勿論答えは決まってる。


「え! 嫌だ!」


 そうです。拒否です。


 前までの僕なら、『うん、いいよ』の二言を言っていたが、最近は違う。

 どうやら僕は少し、年頃? の子供とはかけ離れているというか、真面目? という印象があるそうなのだ。


 僕的にはとてもいい印象がついているようで嬉しいのだが、それは僕だけのようで、母親や塞養さん曰く、子供っぽくないらしい。


 よくよく考えてみたら、確かにそうだ。

 普通なら三歳から体力強化なんてやらないだろうし、能力訓練だってサボったりすると思う。

 それに、僕のこの影の能力は特に序盤から難関だった。

 あの時点で諦めるよな、普通の子供なら。


 けど僕は、まあ、高い目標というか、もう後悔したくないっていう思いがあったからこそ頑張れた。


 それに、僕はもう一人じゃない。

 塞養さんが居てくれたから、能力訓練も頑張って、改めて冒険者になる決意を固めることができたんだ。

 だから、ここまで来れた。


 だから、ほんの少しだけ、羽目を外してもいいのでは?

 って、そう思ったんだ。


 で、最近は子供らしく嫌なことはやりたくないと駄々を捏ねてみたりしている。

 これこそ、子供らしい振る舞いでしょ?


「え? なんで? 何か用事でもあるの?」


 母親は首を傾げ、不思議そうにしてる。

 そして、少々目線が痛い。


「いや、外暑いから出たくない」


 僕は暑いのが苦手だ。

 前世でも苦手だったが、影の適性能力者になってからは嫌いに変更。


 太陽が沈み、陽光がなければいい。

 だが、今は真っ昼間。

 より強く陽光が差す時間帯だ。


 しかも、今日は特に暑い。

 九月だというのに太陽が燦々と輝いている。


 あ、因みに今日は九月六日。


 まあ、とにかく嫌なものは嫌なのだ。

 なので、正当な理由を述べる。

 子供らしく。


 だが、当然母親はいつものように、


「え? なんて? もう一回言ってみなさい?」


 と圧をかけるように恐ろしい笑みを浮かべながら、僕に問いかける。


 けど、大丈夫。

 ちゃんと対処法は考えてある。

 それは……。


「日に当たると溶けてしまう病気にかかったので外に出たくない」


 そう。理由変更。


 まあ、今回は嘘だけど。


「さっきと言ってること違うじゃないの」


 母親は呆れるようにため息をつく。


 そして、僕も諦めて問う。


「で、どこに行けばいいの?」


空陰(そらかげ)鍛冶屋っていうお店に行ってほしいの」


 僕が諦めたのを確認し、母親もいつも通りの優しい表情に戻る。


「鍛冶屋ってことは、武器とか作ってるところなの?」


「ええ、そうよ。武器・防具・アクセサリーなどを作ってるお店なの」


 ふむふむ。

 武器や防具が売ってるのね。


 これはいいことを聞いた。


「母さん」


「ん? どうかした?」


「僕、お使いのご褒美がほしい」


 お使いをすれば、その対価を頂く。

 そして、子供なら自らせがむ。


 で、僕は今子供。

 故に僕はせがむ。


 しかも、僕が欲しい物がそこにはある!


「なんだ、そういうことね。いいわよ。それで、浸夜は何がほしいの?」


 お、いいのかい?


 正直怒られると思った。

 が、母親の許しを得た。


 なら、その対価を頂こう。

 僕が欲しいもの。


 それは!


「鎧!」


「却下」


 なんと即答。

 一秒の差もない。


 これは、僕がそう言うって予想してたな?


 ふっ。やるな、母親よ。


「えー」


 当然僕は残念がる。


 せっかく鎧が買えると思ったのに。

 今の僕ではまだ早いと言うことか……。


 じゃあ、仕方ないね。

 諦めよ。


 人間。いや、子供は諦めが肝心だ。


「お小遣いあげるから。それで何か買っていいわよ」


「はーい」


 なんと。

 お優しいではございませんか。


 流石母親。

 偉大なり。

 ありがとうございます。


 母親は財布から鷲掴み、その行動を見た僕は両手を皿のようにして待ち構える。


「はい。大切に使うのよ」


 母親が掴んだその手を解放し、僕の手のひらに置いた。


 自分の手のひらにのしかかる硬貨の重みを感じ、ギュッと握り締める。


「うん。ありがとう」


 僕は素直にお礼。 


 で、貰ったお小遣いは……。

 銀貨三枚。

 恐らく前世で換算すると三千円。


 うん。絶対に鎧や剣は買えない。


 子供の僕でも。いや、子供だからこそ分かるぞ。


 僕はじっと貰った銀貨を見つめる。


 そんな僕にはお構いなしに、母親は店の奥に移動。


 僕はとりあえず、貰った銀貨を右ポケットへ。


「浸夜くん浸夜くん! 外が暑いなら、このパーカーを着ていくといいよ!」


 すると、母親との会話を聞いていた塞養さんが近くに来て、灰色のボリュームネックパーカーを手渡してくれた。


「ありがとうございます」


 僕は受け取ったパーカーに腕を通し、前のファスナーを閉め、着服。


 現在のコーデ内容。

 灰色のボリュームネックパーカー・黒色のテーパードパンツ・臙脂色のスニーカー。


「ふむ、でもこれだとまだ不十分? かな? そうだ! あとはマスクと手袋があれば万全!」


「おお、確かに。これで準備万端です」


 マスクと手袋を受け取り、着用。


 現在のコーデ内容。

 灰色のボリュームネックパーカー・黒色のテーパードパンツ・臙脂色のスニーカー・黒色のマスク・黒色の手袋。


 すると、包装された大きな箱を両手に持っている母親がこちらに戻って来た。


「浸夜ー、これを……。って、何やってるの?」


 そして、僕の姿を見て一声。

 徐々に眉間に皺を寄せる母親。


「ん? 日差し防止のために着替えたんだよ」


 僕は真面目な表情で返答。


「浸夜、その姿で外に出たら不審者に間違われるわ。マスクと手袋は置いて行きなさい」


「はい……」


 現在のコーデ内容。

 灰色のボリュームネックパーカー・黒色のテーパードパンツ・臙脂色のスニーカー。


 黒色のマスク・黒色の手袋、取り外す。


「はい、これが荷物ね。あと、この紙に簡単に地図書いておいたから、それ見ながら気をつけて行ってくるのよ?」


「うん。これ、何が入ってるの? もしかして割れ物とか?」


 母親から荷物と紙切れを受け取り、念のため確認。


 割れ物だとしたら、亀みたいな速度で移動するのは必須。

 つまり、時間が掛かる

 そして、僕は暑さに耐えられない。


 なので辿り着けず、結果母親に怒られるのは確定。


「ううん。衣服よ。あ、でも中は開いちゃ駄目だからね。それはプレゼントだから」


 僕は安堵して吐息を一つ。


 続けて母親に質問。


「そうなんだ、分かった。で、その空陰鍛冶屋の誰に渡したらいいの?」


「そのお店の中に入ったら、優しそうな男性がいると思うから、その人に渡してあげて」


「母さん」


「ん?」


「僕大変なことを忘れてたよ」


 そう、これは転生以来の緊急事態だ。


 僕はとんでもないことを忘れていた。


 それは……。


「大変なこと? どうしたの?」


「うん。実は僕、人見知りなんだ」


 そうなんだよ。

 僕は人見知りだ。


 母親や塞養さんなら兎も角、他の人に話しかけるのはまだ早い。

 それに、僕は基本店の手伝いや能力訓練をしているため、外に出たのは数回程度。


 しかも、お使い自体が人生初。

 当然経験値不足だ。


 こんな状態ではまともに話すことはできず、追い出されるのは必然。


 なので、母親に告げてみた。

 きっとこの優しい母親なら、


『それなら今回は辞めておきましょう』


 と、許してくれる。

 はずだ。


 僕はそう願ってる。



 だが、何故か母親は、


「そうなの。じゃあ克服するためにも色んな人と話したほうがいいわね。頑張ってね」


 と返答。


 な、ん、だ、と……。


 い、いや。

 もう一度言ってみよう。


 言い間違いかもしれないし。


 うん。それがいいや。


 いつもなら、このまま引き下がる僕だが、これは譲れない。

 例え母親だとしても。


 だから、反撃だ!


「え? あ、いや。だから人み……」


「気をつけて行ってくるのよ?」


 けれど、僕の反撃の言葉を遮り、母親が追撃の言葉を発する。

 圧を込めて。


 当然僕はというと、


「あ、はい……。そう……ですね。行って来ます……」


 敗走です。


 斯くして、僕は母親の圧に負け、外に広がる暑の中へ進んで行く。

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