表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
タイトル未定  作者: 影丸
第一章 陰から影へ(転生編)
20/28

第十九話 塞養役雇VS月影浸夜①

 僕と塞養先生はそれぞれ距離を取りつつ、反対方向へ歩き始めた。

 二人との距離が三メートル程度になったら、その位置に立ち止まった。


「浸夜くん、準備はいい?」


「はい! いつでも大丈夫です!」


 正直、緊張で心臓の鼓動が次第に大きくなってて大丈夫とは言い難い。

 けど、まあこれも今だけのはずだ。

 戦闘が始まれば、きっと落ち着くはず……。

 僕はそう思いながら、右手に持った木刀を目の前で構えた。


「よし! じゃ、このコインが地面に落ちたら、試合開始ね!」


 塞養先生はそう言いながら、ズボンの左ポケットから一枚のコインを取り出した。

 そして、左手の人差し指の末節の上にコインを置き、いつでも弾ける大勢に入っていた。


「はい! お願いします!」


「うん! じゃ、いっくよー!」


 塞養先生はやや斜め上を向きながら、笑みを浮かべていた。

 と同時に、左手の親指に力を入れて、上に向かってコインを弾いた。

 そのコインは回転しながら、総合集合住宅のおよそ四階の高さまで上がった。

 そして、徐々に落下し始め、その速度は上がった時の約二倍の速さで地面に向かって落下している。


 そのコインが丁度塞養先生の頭部程度までの位置まで落下した時に、不意に塞養先生の姿が目に映った。

 僕の目に飛び込んできた塞養先生は、今まで見たことがないゾッとするような怖い表情を浮かべていた。

 多分、戦闘モードってやつだ。

 塞養先生はいつでも動けるように木刀を構えている。


 そして、コインが地面に落ちた。


 その瞬間、二人とも同時に動き始めた。

 お互いに距離を詰めようと走り出した。

 けど、塞養先生の方が一手早かった。

 僕が右足を大きく前に踏み込もうとしたと同時に、塞養先生は左手を前に突き出し、


風砲(ふうほう)


 と言葉を発した。

 すると、塞養先生の前に風が集まってきて、徐々に分厚い風の砲弾のようになり、僕に向かって発射した。

 その風の砲弾はとても早く、人間の速さなど全く及ばないほどだった。


 見ただけでも分かる。

 恐らくまともに受ければひとたまりもない。

 『影壁』で防御。

 と言いたいところだが、僕も走り出していたこともあり、距離がさほど開いていない。

 直ぐそこまできている。

 つまり、『影壁』の発動が間に合わない。


 なら、しゃあない!

 僕は右足を大きく右側に踏み込み、体を逸らした。

 そうすることで、その風の砲弾を間一髪で躱すことができた。

 躱すことができて僕は安心していたのだが、塞養先生は左手の人差し指と中指を立てて、自分の方向に向けながら、


風砲(ふうほう)(そう)


 と言葉を発し、僕が躱したことで後方へ進み続けていたその風の砲弾を操作し、再度僕に向かって迫っていた。

 しかも、その風の砲弾は僕の後方から迫り、前方からは塞養先生が迫って走ってきている。

 つまり挟み撃ちだ。

 今度はさっきみたいに攻撃を避けても、必ずどちらかは僕に直撃する。

 けど、逆に言えば僕からの攻撃も必ずどちらかには当たるってことだ。


 てか、遠隔操作できるのか。

 僕は右手に持っていた木刀を地面に突き刺した。

 そして、体を横向きにして右手と左手を横に突き出し、


影砲(えいほう)(りょう)!」


 と言葉を発した。

 すると、僕の両手から影が出てきて、徐々に分厚い影の砲弾のようになり、両側目掛けて発射した。

 多分速度も威力も塞養先生には及ばないが、それでも今は問題ない。

 まずは、当たればいい。

 当たるだけで少しはダメージが入るはずだからな。


 だが、僕の動きを見ていた塞養先生は左手を前に突き出し、また


風砲(ふうほう)


 と言葉を発すると、塞養先生の前に風が集まってきて、徐々に分厚い風の砲弾のようになり、僕に向かって発射した。


 そして、僕が発動した影の砲弾と、塞養先生が発動した風の砲弾がぶつかり合い、その衝撃で周囲に土煙が舞い始めた。

 僕は咄嗟に目の前で右腕を構え、目を細めた。

 その土煙によってお互いの姿が全く見えない。


 とりあえず、僕は先程地面に刺した木刀を右手で持って構えた。

 

 すると、近くで塞養先生が

 

風纏(ふうてい)(ざん)


 と呟く声が聞こえた。

 だが、まだ土煙で塞養先生の姿は全く見えない。

 けど、間違いなく塞養先生は攻撃状態。

 どこから攻撃が飛んできてもおかしくない状況だ。


 けど、姿が見えないのは塞養先生も同じだろう。

 だから、僕は右手に持っている木刀を前に突き出して、


影纏(えいてい)(ざん)!」


 と言葉を発した。

 すると、右手で持っていた木刀を中心に周囲の体から影が集まっていき、纏うようにその影は斬撃の形状に変化していった。


 更に僕は両目を瞑りながら地面に左手をつき、


影界(えいかい)


 と言葉を発した。

 この能力は周囲にある影の動きを察知し、位置を把握することができる。

 そして、九時の方向に一つだけ影の動きを感じ取った。


 よし、見つけた!

 僕は両手に持っって木刀を振り上げ、その方向に向かって走り出し、そのまま振り下ろした。


 だが、塞養先生は僕が動いたことによって微かに動いた土煙を見逃さなかった。

 塞養先生は僕の攻撃に合わせるように、右手で持った木刀を下から上に向かって振り上げていた。

 互いの木刀がぶつかり合い、その衝撃で周囲に舞い上がっていた土埃が一気に消し去っていくのを感じた。

 それほどの威力。

 しかも、その衝撃で僕が持っている木刀は震え、その木刀を通じて両手も震えていた。

 けど、恐らく二人が繰り出した攻撃の威力は同じだ。


 今のところは……ね。


 そして、結果的に勝ったのは、塞養先生だった。

 というのも、塞養先生の木刀には徐々に風が集まり威力を増していたのだ。

 対して僕の木刀には衝撃の影響で纏っていた影が徐々に削られていた。

 その後、塞養先生は総合集団住宅の周りに設置してある柵に向かって僕を突き飛ばした。


 僕はそのまま受け身も取れず、その柵に激突してめり込み、


「ぐがぁっ!」


 と蛙が潰れたような声を上げた。

 そして、激突した衝撃でその柵は歪んでいた。


 くそ、駄目か……。

 分かってはいたが、やっぱり威力は塞養先生の方が上だ。

 てか、背中痛いな。

 何故か立ち上がろうとしても、全身に力が入らない。

 これって、もしかしてどこかの骨が折れてるんじゃないかな?

 そう思えるほどのダメージだ。

 しかも、たった一撃でこれかよ。


 とりあえず、この傷をなんとかしないと……。

 そうだ、『治影』。

 この能力で治癒を。


 けど、そんな僕にはお構いなしに塞養先生はこちらに向かって走って来ていた。

 そして、塞養先生は走りながら右手に持っている木刀を前に突き出して、


風纏(ふうてい)(かい)


 と言葉を発した瞬間、木刀を中心に周囲の風集まっていき、纏うようにその風はぐるぐると回りながら吹きまくっていた。

 しかも、その風の効果によって速度を徐々に上げながら、直ぐそこまで迫っていた。


 って、休んでいる暇ないか。

 まあ戦闘中だもんな。

 けどやばい、あんなのもろに食らったら確実に体のどこかに風穴が開くわ。

 僕は咄嗟に左手を前に突き出し、


影壁(えいへき)!」


 と言葉を発した瞬間、僕の前に影が集まってきて、分厚い影で構成された四角形の壁が出現した。

 とりあえず壁で防御するしかない。

 けど、僕はこの時に気がついていた。

 僕は初めての戦闘ということで、咄嗟の判断力が枯渇している。

 それに、思考がいつもよりも遅いのを実感する。


 そんな中、塞養先生がそのまま影の壁に向かって木刀を突き出した。

 なんとか間一髪で防御に成功した。

 が、僕の考えは甘かった。


 塞養先生が持っている木刀による突きと回転力を増し続ける風の威力によって、先程僕が構成した影の壁は歪み、亀裂が徐々に広がって今にも崩れ落ちそうだった。


 僕は再度左手を前に突き出し、


「くそ! 影壁(えいへき)(こう)!」


 と言葉を発すると、僕の前に影が集まってきて、先程の約五倍程度の分厚い影で構成された四角形の壁が出現した。


 そして、タイミングよくその前に構成した影の壁は完全に崩れ落ち、 塞養先生は先程構成した約五倍程度の分厚さを誇った影の壁に向かって再度木刀を突き出した。

 だが、先程の影の壁とは違い、流石の強度だ。

 塞養先生が持っている木刀による突きと回転力を増し続ける風の威力を持ってしてもビクともしていないようだ。


 よし、とりあえずは防御成功だ。

 けど、正直やばいな。

 この『影壁:厚』は僕が使える中で最高密度の影の壁だ。

 だから半端ないほど影を消費する。

 それは塞養先生も理解しているだろう。

 できれば最後まで取っておきたかったけど、流石にこの状況で使わざるを得ないわな。

 それと、この消費量だと多分もう二度目は発動できないかもしれない。

 つまり、これが破られたら、もう止めることはできない。

 それに、さっきみたいにあの風は時間が経つごとに威力が増しているように見える。

 てことは、今の影の壁もいずれ崩れ落ちる。

 しかも、恐らく塞養先生はまだまだ余力が残ってる。

 それに対して、僕は防御するので精一杯だ。


 けど、そんなの戦う前から分かってたことだ。

 なら、今塞養先生の動きが一定に留まっている今のうちに畳み掛ける。

 駄目かもとか、勝てないかもとか、そんな考えは後にしろ。

 今考えるべきなのは、塞養先生に勝つこと。

 ただそれだけで十分だ。


 僕は全身の細胞に命じ、なんとか気力で立ち上がった。

 背中が痛いなんて知らない。知ったことか。

 それよりも、今やるべきことがある。

 僕は左手を前に突き出し、先程構成した影の壁に手のひらを当てた。

 そして僕は、


沈影(じんえい)!」


 と言葉を発し、先程構成した影の壁の硬度を失くし、突っ込んでいた塞養先生を影の中に沈めた。

 通常この能力は僕自身の地面に映った影の中に対象を沈ませるんだけど、考えてみればこういう使い方もできる。

 それに、塞養先生に手の内全て知られているなら、塞養先生が知らない能力を、今ここで新たな能力を発見すればいいだけの話だ。


「うおっ!」


 塞養先生は驚きの余り言葉を呟いた。


(ねん)!」


 僕は塞養先生が影の中に沈んだのを確認し、そう呟いた。


「ぷふぁー! お、やるねー!」


 塞養先生は直ぐに影の中から顔を出し、戦闘が始まってから初めてまともに言葉を口にした。


「でもさ浸夜くん、……それじゃあ甘いよ?」


 塞養先生はそう言うと同時にニタッと笑い、


風纏(ふうてい)(ざん)


 と言葉を発した。

 そして、木刀を影の外に出るように振り上げた。

 すると、塞養先生が持っていた木刀を中心に周囲の風集まっていき、纏うようにその風は斬撃の形状に変化していった。

 その風が完全に斬撃の形状に変化したのを確認した塞養先生は、木刀を影の壁に向かって振り下ろし、纏っているその斬撃のような風によって影が内側からどんどん削られていく。


 そして、塞養先生は影を全て削り取り、影の中から脱出した……。


 はずだったんだろうね。塞養先生の考えでは。


「ん? 何……、これ?」


 塞養先生は自分の思っていた結果にならず、思わず声を漏らした。

 そんな塞養先生の姿を見て、今度は僕がニタッと笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ