表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
タイトル未定  作者: 影丸
第一章 陰から影へ(転生編)
19/28

第十八話 塞養流 免許皆伝

[2023/7/3/ 更新]

 更にあれから約二ヶ月が経ち、僕は六歳になった。


 ていうか、今日は六月九日。

 まさに僕の誕生日だ。

 それに、前世で僕が死んだ日でもある。

 そう思うと、凄く運命的な日だな。

 僕はしみじみ思った。


 そして、塞養先生との別れが差し迫っていた……。


 まあ、別れって言っても、決してどこかにいなくなる訳ではない。

 というのも、あれから塞養先生と共に能力訓練を行なってきたけど、どうやら僕が練人種だってこともあり、能力の上達速度が凄まじく速いらしい。


 すると、昨日塞養先生から、


「浸夜くん。残念だけど、私から君に教えれることは、もうないみたいだね……」 


 塞養先生は下を向きながら、今まで見たことがないぐらい不服そうな表情を浮かべながら、そう呟いた。

 けど、塞養先生は徐々にいつも通り誇らしげな表情に戻しながら、


「よし! 明日、塞養流 免許皆伝を行うよ! ちゃんと体調を整えて、準備しておいてね!」


 と言われたのだ。


 つまり、今日は塞養先生との最後の能力訓練の日でもある。


 あと、そのことと関係あるのか分からないけど、何故か今日は店を休業するらしい。

 最初は母親の体調が悪いのかと思ったのだが、いつも通り元気よく僕に抱きついてきたので、間違いなく体調が悪い訳ではなさそう。

 因みに、母親は毎朝挨拶しながら僕に抱きついて来るのが通常。


 けど、少し気になることがある。

 それは、最近母親は夕食を食べ終わると、何故か直ぐに自室に篭ってしまう。

 しかも、よく聞き取れないけど、何やらぶつぶつと呟いているみたいなんだよな。

 一体何をやっているのやら。


 まあそれはそうと、免許皆伝ってことは、師匠である塞養先生が弟子である僕に何か奥義を伝授してくれるんだと思うけど、一体何を教えてくれるんだろう。

 今までも塞養先生から多くの能力を教えてもらったけど、それ以上の凄い能力とかかな?

 だとしたら、少し期待してしまうな。


 けど、これが最後か……。

 長いようで、とても短かったな。

 思い返してみれば、最初はダジャレから始まったんだっけ。

 けど、結果的にそれが僕を救ってくれた。


 そして、その時に思ったんだ。

 もし可能なら、この人にずっと能力を教わりたいって。

 それに、いつも一生懸命になって僕に色々と教えてくれたな。

 僕は心を高鳴らせながらも、突き刺さるような悲しみを感じていた。


 すると、塞養先生が元気よくお店の扉を開けて入って来た。

 何故かいつも以上に元気いっぱいみたいだ。

 そんな塞養先生の姿を見て、僕は確信した。


 これは間違いないな。

 恐らく僕が思っていた通り、必殺技的な能力を教えてくれる気でいるに違いない。

 塞養先生が入って来たのと同時に、僕もさっきまで座っていた会計用の椅子から立ち上がった。


「おはよう、浸夜くん!」


「お、おはようございます! 塞養先生!」


 塞養先生が元気いっぱいなので、僕も元気に挨拶をした。

 いつもは朝ってこともあり、そんなに元気を出せないけど、最後だからね。

 今日は最初から全エネルギーを使い切る勢いで行こう。

 それが、塞養先生に対する今までの礼儀ってやつだ。


「体調はどう? どこか痛いところとかない?」


 塞養先生は手を膝に置いてしゃがみながら、僕に向かって語りかけてきた。


「はい、大丈夫です!」


 体調も良好。

 筋肉痛も全回復状態。

 うん、完璧だ。


「そっか! じゃ、早速行こう! ついて来てね!」


「はい!」


 けど、ついて来てって、直ぐそこじゃん。

 僕は少し疑問を抱きながら、塞養先生の後ろを付いて行き、店の外に出た。

 空を見上げると、空全体を厚みのある雲が覆っていた。


 どうやら今日は曇りのようだ。

 曇りの日は紫外線が多いことから、あまり好まれない印象があるけど、僕にとっては絶好の日なのである。


 何故なら、陽光が差さないから。

 まあ、そんな単純な理由だ。

 

 そして、そのまま僕達はいつも通り店の裏手にい……、かない? ん?

 塞養先生は何故か店の外の大通りを歩き出した。

 不思議に思い、僕は店の裏手側を二度見した。

 いつもなら店の裏手で能力訓練をしているのだが、何故か塞養先生は他のどこかに向かって歩いているようだ。

 けど、何処に向かってるんだ?


「あの、塞養先生」


「ん? どうかした?」


 塞養先生は立ち止まり、こちらを振り向きながら返事をした。


「今日は店の裏手でやらないんですか? いつも店の裏手でやってますけど」


「あー、今日は少し広い場所でやりたいと思ってるの! だから、今日は私が大家を務めてる総合集団住宅でやろうと思って、今はそこに向かってるって訳だよ! 昨日璃映さんにも許可は取ったから、安心してついて来て!」


 なるほど、そうだったのか。

 それに、前もって母親に許可を取っているとは流石ですね。

 けど、そういえば僕はその総合集団住宅に行ったことないかもしれないな。

 確か塞養先生の話では、この総央国内で一番大きい集団住宅っていうことは聞いたことがあるけど。

 てことは、多分かなりの敷地なんだろうな。


「なるほど。でもなんで広い場所じゃないと駄目なんですか?」


「あー、それはね! 昨日言ったように、今日は塞養流 免許皆伝を行うから、多分周囲の地面が抉れると思うの! だから、いつも能力訓練をしてるお店の外だと、最悪の場合お店が消し飛んじゃうから、広い場所に移動しようって訳だよ!」


「な、なるほど……」


 ほうほう、なるほどね……。

 今しれっととんでもないこと言ったぞ。

 周囲の地面が抉れる?

 最悪の場合、店が消し飛ぶ?

 一体何をどうしたらそんなことになるんだよ。

 いや、それぐらい強大な能力を教えてくれるってことか?

 なんか不安になってきた。


「よし、着いたー! ここが総合集団住宅だよ!」


「お、おー」


 僕の不安な気持ちが片付かない間に、どうやらその総合集団住宅に到着してしまったらしい。


 その総合集団住宅は六階建で、横一列は九部屋ある。

 つまり、全部で五十四部屋あるみたいだ。

 そして、屋根は黒色の瓦で、外壁は白色だった。

 しかも、出入り口には巨大な洋風黒色の鉄で作られた門あり、その周りには門と同じ素材の柵で囲まれていた。

 それに、塞養先生が言っていた通り、敷地内もかなり広く、その総合集団住宅がもう一棟建つほどの広さだ。

 僕が想像していたよりも遥かに大きな建物で、広大な敷地だ。

 確かに、ここなら思う存分に能力を発揮できそうだ。


 僕は目に飛び込んできた光景に圧倒されながら、塞養先生と一緒にその門を開けて敷地内に入った。


「ごめん、浸夜くん! ちょっと待ってて!」


「あ、はい」


 塞養先生は総合集団住宅の一つの部屋に入っていった。

 すると、直ぐにその部屋から出て来て、こちらに走って来た。

 けど、何故か両手に何か持っている。


「お待たせー! はい、これ使って!」


 塞養先生は僕に向かって右手に持っているその何かを手渡してきた。

 僕はそのままの流れでそれを受け取った。


「これは……、木刀、ですか?」


 そう、塞養先生が両手に持っていたのは二本の木刀だった。

 その内の一本を僕に手渡したのだ。


「うん! 今日はその木刀を使って!」


 いや、そう言われましても……。

 木刀なんて前世でも使ったことないんだけど。


「それに、ここなら多少地面が抉れても、建物が壊れても大丈夫だから、存分にやろうよ!」


 いやいやいや。

 え、地面はともかく、建物壊れちゃ駄目じゃないか?

 多分、塞養先生は、いいんだろうけど。

 確実に、ここに住んでいる人達全員怒ると思うよ。

 てか、そもそも木刀で何をするんだろう。

 何故か塞養先生も木刀持ってるし。


 うーん。

 よし、聞こ。

 それが早いわ。

 僕は考えることを諦めた。


「は、はい! でもその前に一つ質問があるんですけど、いいですか?」


「うん! もちろんいいよ! 何個でもどしどし言って!」


「では、その……、塞養流 免許皆伝って具体的に何をするんですか?」


「あ、ごめん! 言ってなかったっけ?」


「は、はい」


「今日行う塞養流 免許皆伝っていうのは、要は私と本気の戦いをするっていうことだよ! で、今渡した木刀を使う、または能力で相手に『降参』っと言わせた方が勝ち! 簡単でしょ?」


 ……。

 ん? 聞き間違いかな?

 今塞養先生と僕が戦うって聞こえたような……。

 しかも、本気で。

 この木刀を使って。

 いや、流石にそんな訳はないか。

 そうだ、一度聞き返してみよう。


「……え? 本気の戦い、ですか?」


「うん! そう! 本気の戦い! ガチバトル!」


 なんてことだ。

 聞き間違えじゃなかった。

 え、けど、塞養先生は免許皆伝って言ってたよな。

 それはちゃんと覚えてる。

 だとしたら、内容が違うんじゃないかな?


「え、えっとー塞養先生、免許皆伝って普通は師匠が弟子に奥義を教えるのでは?」


 この情報は正しいはずだ。

 昔、僕が中学一年生の時に、クラス内のガタイのいい男性が


「俺こないださー、柔道を教わっている師匠から免許皆伝の奥義を教えてもらったんだー!」


 とクラス中に響き渡るように言っていたから間違いない。

 まあ、当然話したことはない人だったけどね。


「ん? うーん。あ、そう! 普通はそうなの! だからその前に、塞養流って付けてるでしょ? つまり、私流の免許皆伝の方法ってことだよ! 一種の試練ってやつ!」


 塞養先生は顔を逸らし、何処となく焦っていた。

 いやいや、流されないよ!

 明らかに免許皆伝っていう意味を分からず言ってたでしょ!


 それに、よく考えてみれば、塞養先生と対決したことは一度もない。

 しかも、塞養先生は僕に教えてくれる時も、風の能力を使って見せてくれたのは数回ほどだったし、正直ちゃんとした実力って分からないんだよな。

 まあ、最初に見せてくれた『風壁』もかなりの強度と大きさだったし、間違いなく他の風の能力も強力なはずだ。


 あと、塞養先生は教え方も上手いけど、そもそも能力について幅広く知っている。

 つまり、応用が効くってことだ。

 多分、僕が考えつかないような斜め上の方法で能力を使ってくる。

 でも一番問題なのは、僕は塞養先生に手の内全部知られているってことだ。


 てことは、つまり相手は格上、しかもハンデあり。

 うん。これは、もしかして既に勝負はついているんじゃないか?

 久々に絶望的な感じだな。


 まあ、今からどうこう言ってもしょうがない。

 それに、試練と言われると何故か断れないし、ここで塞養先生に勝つぐらいになってないと、きっと冒険者基識学園の入学試験を突破することなんてできないはずだ。

 なら、僕も戦う覚悟を決めよう。

 例え相手が格上で、手の内全部知られているとしても。

 それでも、必ず塞養先生に勝つ。

 そして、この試練を乗り越えてみせる。


 僕は深呼吸をし、気持ちを落ち着かせた。


「よし! わかりました! では、早速やりましょう!」


「お! やる気満々だねー! いいよいいよ! その調子でやっていこう!」


「はい!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ