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タイトル未定  作者: 影丸
第一章 陰から影へ(転生編)
17/28

第十六話 能力の先生、その名は塞養役雇

[2023/7/3/ 分割]

「じ、時間帯ですか?」


 僕は普通に疑問に思い、塞養さんに聞き返した。

 時間帯で能力が使用できる、また使用できないなんてことあるのだろうか。


「浸夜くんって、もしかして今まで日中に能力の練習してたんじゃない?」


「はい、そうですね。考えてみれば、確かに。え、まさか……」


 塞養さんが言った通り、僕は今まで日中でしか能力を使おうとしなかった。

 というか、母親から


「浸夜、夜は危ないから、極力外に出ちゃ駄目よ。特に真夜中は。最近真夜中に空き巣の被害が多発してるみたいだから」


 と言われていたからだ。

 それに、さっき僕が塞養さんを空き巣だと勘違いしたのもその理由からだった。


 けど、塞養さんはなんで深夜になら僕のこの影の能力が使えるんじゃないかって思ったんだろう。

 まさかとは思うけど、僕の名前が浸夜だから真夜中にしか影の能力を使用できないなんていうんじゃないよね?


 あ、分からない人に説明すると、浸夜と真夜をかけてるんだよ。

 いや、でも流石にね。


 確かに、塞養さんは今までも突拍子もないことを言う人だった。

 けどね、流石にそんなダジャレみたいな答えは返ってこないだろう。

 僕は心の中で少し不安に感じながら、塞養さんの答えを待った。


「そう、そのまさかだよ!」


「ずばり、今の浸夜くんは真夜中の時にのみ、その影の能力が使用可能なんだよ!」


 塞養さんは自信満々な表情を浮かべた。


 やっぱりかーい。

 僕が思った通りの答えだった。

 いやでも、そんなダジャレみたいなことありますか?


 まあ、確かに僕も一度は考えたことはある。

 けど、実行したことは一度もなかった。


 だってそんなことありえないでしょ?

 深夜しか使えない能力ってなにそれ。

 本当にそうだったら、僕は夜にしか戦えない。

 つまり、夜戦しかできないってことじゃんか。


 と、とりあえず、塞養さんはふざけている訳ではない。

 というか、至って真剣に言っているみたいだ。


「え、でも、時間帯によって能力が使えないなんてことあるんですか?」


 そう、僕が何よりも疑問に思ってるのは、その時間帯だ。

 そもそも、時間帯によって能力が使えないなんて僕が読んだ本には書いてなかった。


「ううん、普通ならそんなことはないと思うよ! 私も聞いたことないし!」


「けど、そもそもの話なんだけど、浸夜くんのその影の能力は他の能力とは何もかもが違うというか、異質なものなの! 私自身も今日の朝に確信した! だから、他の能力はこうだとか、きっとそういう考え方じゃ駄目なんだよ! 新しい考え方で、その影の能力を使えるようにならないと!」


 塞養さんの言ったことを聞いて、僕は無意識に口を開いていた。


 正直驚いた。

 僕は塞養さんのことを見誤っていたのかもしれない。

 あの一瞬だけで、僕の影の能力のことを理解し、ちゃんと考えた上で適切なアドバイスをしに来てくれたのか。

 それに、あんなにも必死に走って。

 いい人だってことは分かってたけど、まさかここまでしっかりと考えてくれていたなんて。


 そうだよな。

 塞養さんの言う通りだ。

 この影の能力は他の能力とは異質で、本の通りに使おうと思っては駄目だ。


 それは分かっていたはずなのに、何故かそこのことを忘れてた。

 けど、塞養さんのお陰で思い出したよ。

 これもまた、僕に与えられた一つの試練だ。

 なら、乗り越えないといけない。

 僕は開いていた両手を強く握り、そう決意した。


「なるほど! 分かりました! じゃあ、とりあえずやってみますね!」


「うん! 頑張って!」


 うん、いい声。

 それに、なんだろう。

 前髪に隠れて見えないはずの塞養さんの瞳が輝いているように感じる。

 いつもなら嬉しいんだけど、もしもこれで能力が使えなかったらと考えると、その輝く瞳が心に刺さるように痛かった。

 いや、このもしもって考えるのがもう駄目なんだよな。

 絶対に出来るって、そう信じよう。


 よし、やるか。

 僕は右手を前に突き出し、目を瞑ってイメージした。

 影の壁ができるイメージだ。

 影の支配したかのような、そんなイメージ……。


 僕は今までにないほど集中し、目を開きながら、


「よし、影壁(えいへき)!」


 と言葉を発した。


 すると、周囲に広がる影が僕の前に集まって来て、徐々に厚い影で構成された四角形の壁になって出現した。

 大きさは、僕どころか塞養さんをも全て覆うほどの大きさだ。


 おお!

 本当に真夜中に能力使えちゃったよ!

 僕は口を開いて喜んだ。

 が、心の中ではまだ信用できないでいた。


 いや、待て待て。

 朝やった時みたいに、これは僕の生み出してしまった錯覚かもしれない。


 僕は袖で目を擦り、もう一度目の前にある影の壁を見た。

 けど……、そこにはちゃんと影の壁が出現していた。


 その時、僕は確信した。

 これは、マジのやつだ。

 なら、塞養さんが言った通り、真夜中にしかこの影の能力は使えないってことになる。

 これもこの影の能力限定の条件みたいなものなのだろう。


 けど、今はそんなのはどうでもいい。

 だって、なにはともあれ、絶望的だと思っていた序盤の難関だった影の能力を使うことが出来たのだから。

 そして、僕は目の前に出現した影の壁をじっと見つめていた。


 これが、影の能力。

 これが、僕の力。

 やっと……。

 やっと出来た。


 けど、なんでだろう。

 嬉しいはずなのに、僕は自分でも分からない程、何故か冷静だった。

 でも、本当に嬉しい。

 それは事実だ。

 なんていうか、新たな一歩を踏み出せたって感じだ。


「おおー! 凄い! 凄いよ、浸夜くん!」


 塞養さんが喜びながら、僕に向かって拍手をしていた。

 本当に嬉しそうに喜んでる。


 けど、凄いのは塞養さんの方ですよ。

 まさか本当に真夜中に影の能力が使えるようになるなんて、本当に塞養さんのお陰です。

 多分、あなたは天才だ。

 そう思えるほどに、僕は塞養さんの凄さを感じていた。


 とりあえず、お礼の気持ちはきちんと伝えよう。

 ちゃんと言葉にして。


「はい。でも、今日影の能力が使えるようになったのも、全て塞壅さんのお陰です。本当にありがとうございます」


「ううん、そんなことないよ! でも、本当に良かったね! まさか本当に真夜中に能力が使えるようになるなんてね!」


 塞養さんは両手を合わせて少し傾けながら、誇らしげな笑みを浮かべていた。

 ん?

 てことはやっぱり、ダジャレ……?

 いや、でも……。


「えっとー、塞養さん。まさかとは思いますけど、浸夜と真夜中の真夜をかけた、なんてことはないですよね?」


 僕は一応聞いてみた。

 いやいや。

 そんなことはないとは思いますけね。

 うん、そうだよ。

 けど、ね。


「ん? うーん、ま、まあとりあえず、今日は浸夜くんが初めて能力が使えたってことで! 一歩前進だね!」


 塞養さんは顔を逸らして、明らかに動揺していた。

 あ、今誤魔化したぞ。

 これは、間違いなく浸夜と、真夜中の真夜をかけたダジャレだったな。


 まあ、だとしても塞養さんのお陰っていうのは変わらない。

 それに、初めて影の能力が使えたことは事実だし、本当に塞養さんには感謝だな。

 塞養さんの言う通り、一歩前進だ。


「今は真夜中にしかその影の能力を扱えないけど、徐々に訓練していったら、きっと日中でも使えるようになると思うよ! この調子で頑張ってね!」


 なるほど。

 つまり、真夜中しか使えないのは最初だけで、訓練していけば時間帯関係なく徐々に日中でも影の能力が使えるようになるってことか。

 よし、頑張ろう。

 僕は何処となく元気が漲っていた。


「はい。頑張ります。塞養さんのお陰で、一歩前に進めた気がします。ありがとうございました」


「そう! なら良かった! じゃあ、私はこれで失礼するね! またね、浸夜くん!」


 塞養さんは僕に向かって右手を振っていた。


「はい。また」


 僕も塞養さんに向かって右手を振った。

 そして、塞養さんは帰るべく歩き出した。


 本当に今日は塞養さんにお世話になった。

 塞養さんが居なかったら、一生この影の能力が使えなかったかもしれない。


 もし、可能なら、このままもずっと……。


「塞養さん!」


 塞養さんは気づいてくれたらしく、立ち止まってこちらを振り返った。


「ん? どうかした?」


「あの、もし良かったら……。僕の能力の先生になってくれませんか?」


 言ってしまった。

 けど、後悔はない。

 それほどに今日の出来事は嬉しかった。


 もし断られても、それでも構わない。

 聞いてみるだけ聞いてみよう。


 だが、塞養さんは嬉しそうに笑みを浮かべていた。

 その表情を見ただけで、僕は安心して心が軽くなる感じがした。


「うん! もちろんいいよ! 私で良ければ喜んで!」


 相変わらず前髪に隠れて表情は分からない。

 けど、何処となく嬉しそうな、その言葉を待ち望んでいたような、そんな感じがした。

 すると、塞養さんはまた僕の方に歩いて来て、僕と同じ目線になるようにしゃがんだ。


「じゃあ、改めて! これからよろしくね! 浸夜くん!」


 そして、塞養さんは僕に向かって右手を差し出した。

 これは、間違いない。

 握手だ。


「はい。これからよろしくお願いします。塞養さん。いや、塞養先生」


 僕も塞養さんに向かって右手を差し出し、互いに手を握り合った。

 すると、塞養さんは嬉しそうに笑みを浮かべた。


 斯して、塞養先生による能力訓練の日々が始まったのである。

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