第十三話 三年間の記録
[2023/7/6/ 追加]
この三年間でこの世界の基礎的なことが分かった。
この家には様々な本が置いてあって、僕は夢中になって読み進めた。
その結果、この三年間の間に全て読破してしまったのだ。
いやー、我ながら驚いたよ。
自慢ではないが、僕は決して本を読むのが得意な訳ではない。
というよりも、苦手な方だ。
まあ、その理由は自分が興味を持ったからだろうね。
例えば、勉強とかだと全然読む気にならない。
だって嫌いだから。
けど、自分が興味を持って夢中になれることだと、こうものめり込んでしまうとはね。
いや、ほんとびっくりだわ。
因みにだけど、僕が読んだ本は全部で五冊。
それぞれ、『九大種国一覧表』・『種族一覧表』・『練人種の固有能力』・『獣壁国民絶滅事件の謎』・『冒険者基識学園入学試験内容』という名前の本だ。
その五冊を読んで分かったことを説明すると、この世界には全部で九個の国が存在し、全ての国を含めて『九大種国』と呼ぶ。
で、僕達がいる国は九大種国の中でちょうど中央に位置することから、『総央国』というらしい。
因みに、他には練速国・剛強国・森遊国・霊宿国・天知国・龍鎧国・獣壁国・鬼角国が存在する。
各国にはその国を治める頂点にいる人が存在し、その人物を『国頂』と呼ぶ。
恐らく、前世でいうところの大統領みたいな役職なのだろう。
それと、各国にはその国を警備する『警備隊』という役職が存在する。
そう、前に見にいった試験闘技場内を警備していた人達がまさにその警備隊だったのだ。
警備隊は、主に国内での争いごと、事件の阻止や防止を中心に活動している。
そして、その国の警備隊全体の指揮をする警備隊長が必ず三人存在するらしい。
僕はまだ見たことがないけど、警備隊長の服装は他の警備隊とは少し異なっているらしく、更に軍服の上からマントのようなものを羽織っているんだとか。
それに、僕や母親は練人種だったけど、この世界には他にも種族が存在するみたいで、全部で八種族存在する。
練人種以外には、剛人種・森人種・霊人種・天人種・龍人種・獣人種・鬼人種。
けど、正確には各種族を区分しているらしく、剛人種・森人種・練人種・獣人種をまとめて『一般種族』と言い、霊人種・天人種・龍人種・鬼人種をまとめて『変異種族』と言う。
その違いは、『一般種族』は最初に誕生した種族のことで、『変異種族』は一般種族の異種族同士によって新たに生まれた種族のこと。
更に、各種族にはそれぞれ元々備わっている『固有能力』が存在する。
他の種族の固有能力はまだ分からないけど、練人種の固有能力は『熟練度の速度上昇』。
この固有能力は、体力や能力の上達速度が上昇し、他の種族よりも優位に立てるらしい。
道理で人体強化の成果が異常に速かった訳だ。
多分僕自身も努力したっていう理由もあるだろうけど、異常な程に成果が表れるのが早かったもんな。
でも、ということは影の能力の上達速度も他の種族の人よりも速いってことだよな?
え、この固有能力ってめっちゃいいじゃん。
これは僕の影の能力も直ぐに使えるようになれそうだな。
あと、国と種族の名前から恐らく察していると思うけど、それぞれの国には、ある一定の種族しか住むことが出来ないと決まっている。
例えば、剛強国には剛人種、森遊国には森人種、獣壁国には獣人種、といった感じで一種族しか住むことが出来ない。
けど、宿は各国にいくつか存在するので、短期間であれば種族が異なってもその国に滞在することが出来るらしい。
だが、総央国については唯一総合的に全種族が住むことが出来るみたいで、そのほとんどが冒険者、または元冒険者の人達だ。
その理由は、そもそも総央国が冒険者の為に存在する拠点のような国だから。
でも、総央国に唯一住んでいない種族がある。
それは、獣人種だ。
というのも、獣人種は実質絶滅している、らしい。
その理由は、数十年前に起こったある事件が原因でそう言われている。
その事件が発覚したのは、各国の現状を報告し合う目的で常時行われている各国の国頂同志の定例会議が行われた時の話だ。
各国の国頂が参加している中、何故か獣壁国の国頂だけ未参加。
しかも、全く連絡が取れなかった。
不審に思った各国頂達は話し合い、獣壁国の様子を確認するべく一人の冒険者に様子を見に行かせた。
その一人の冒険者が獣壁国に到着すると、普段国の出入り口の警備をしているはずの警備隊が存在しないことに不審に思い、そのまま獣壁国の中に入ると、辺り一面に広がっていたのは焼け野原だった。
建物は焼け果てて崩壊し、壊滅状態になっていた。
その冒険者は今見ている光景が信じられず、誰かいないか周辺を歩き回った。
すると、足元に何か当たったと思い目線を向けると、そこには全身焼け爛れて死んでいる獣人種の人間が横たわっていた。
しかも一人だけじゃない。
周囲を見渡すと、そこには数百人、いや数千人の獣人種の人間が地面を覆い尽くしていた。
その冒険者は絶望的なその光景を目の当たりにして、無意識に嘔吐していたそうだ。
そりゃあそうだ。
僕もきっと同じ光景を目の当たりにしたら、同じ状態になっているだろう。
その後、その冒険者は生存者がいないか駆けずり回った。
一種の希望を求めていたのだろう。
大声で叫び、崩壊した建物を退けて探し回った。
けど、生存者は誰一人も発見出来なかったらしい。
その後、その冒険者は自分が見た光景と獣壁国のことについて各国頂に報告し、獣壁国の崩壊が全国に広渡った。
だが、この事件は数十年経った今も尚、多くの謎が解明されていない。
まず、そもそも何故獣壁国内の人間全員が焼け果てていたのか。
それに、周囲の状況から見て、争った形跡はなかった。
これは同じ獣人種同士の犯行なのか。
それとも、異種族による犯行なのか。
この全てがいまだに明らかになっていないらしい。
それと、一番の謎は『消えた死体』だ。
所々に地面が抉られていて、そこには血痕が残っていた。
明らかにそこにも死体があった跡が残っている。
にも関わらず、その死体が消えていた。
その消えた死体は全部で百体程度。
つまり、何者かがその死体を移動、または盗んだ可能性がある。
なので、その人物がこの事件の犯人なのかもしれない、と考えた各国頂達は各国に逮捕依頼を出し、その犯人の捜索をさせた。
けど、今もその犯人は見つかっていない。
まあ、まず目撃者が一人もいないっていうのが、この事件が未解決である原因でもあるらしいけど。
それに、そもそも獣壁国自体が謎の塊みたいな国だ。
獣壁国はその名の通り大きな壁で囲われている国で、所謂秘密主義の国だった。
だから、そもそも分かっていないことだらけだったんだ。
恐らく国内で何かしらの決まり事があったのだろう。
なので、獣人種の固有能力も明らかになっておらず、その姿を見た人もほとんど居ない為、獣壁国にいた獣人種の人間で全てだった可能性が高い。
そういう理由から確定ではないが、実質的に獣人種は絶滅しているらしい。
そして、後にこの事件を『獣壁国民絶滅事件』という。
以上。
この三年間で分かったことでした。
あ、そうだ。
最後に僕が次に目指す目標について話そう。
僕達が住んでいる総央国には、冒険者を目指す子供達が冒険者の基礎知識を学ぶことが出来る機関が存在するらしい。
その名を、『冒険者基識学園』という。
その冒険者基識学園に入学するべく各国から多くの子供達が移住して来るほど人気があるそうだ。
因みに、八歳から十歳までの人が入学することが出来る。
もちろん、僕もこの冒険者基識学園の入学するつもりでいる。
だが、この学園には誰でも入学できる訳ではない。
というのも、この学園には入学試験が存在するらしく、その試験が超難問らしい。
その内容は、学習能力を図る『筆記試験』と、体力を測る『体力試験』と、能力を測る『能力試験』だ。
そして、最大の難関は『能力試験』。
この能力試験でほとんどの人が脱落するらしい。
毎年、数百人の子供達がその入学試験に望むそうだが、合格出来るのは二人程度。
最悪の場合、入学者が居ない年もあるそうだ。
というか、近年はそれが普通らしい。
正直そのことを知って、絶望しか感じなかった。
けど、それでも目指す価値がある。
母親に聞いた話では、別に冒険者基識学園に入学しなくても、十六歳になったら冒険者資格試験を受けることが出来るらしい。
けど、それじゃ駄目だと思った。
何故なら、これを乗り越えられずに立派な冒険者にはなれないと思ったからだ。
うん、次の目標、それは冒険者基識学園の入学だ。
それに向けて、今後は能力の使い方、もとい強化を中心に頑張ろう。
そう心に誓った。




