ミツバチ酒を飲まない男2
男は、思った。失敗した。わざわざここまで来たが、何も仕事を得ていない。有名な酒場となれば、仕事の一つや二つ取れると考えたが、現実はそう甘くはなかった。
男は、毒づいた。ここはうるさすぎる。面白くない下劣な話を、なんの躊躇もなく、皆が話し笑っている。
ため息をついた。その時だった。鼻が赤く腫れているボサボサ頭の男が近づいてきた。ボサボサ男は、鋭く睨んでいる。
「俺を睨んでいたのは、お前か。何か依頼でも?」
「依頼なんかあるか!ボケ!傭兵を見るとミツバチ酒も不味くなるわ!!戦争が終わって、傲慢な傭兵どもがいなくなると思っていたら、しぶとく仕事を探して、この地を歩き回っている!!お前らの存在が気に入らん!そこらへんで死に、植物の養分にでもなってろ!」
ボサボサ男は、身体を震わせて、唾を吐きながら罵った。
「このクソ傭兵!名前はなんだ!この俺様が、お前を成敗してやる。ボコボコにするやつの名前は、知っておかんとな。ちなみに俺様は、コウリー。覚えとけ!」
「喧嘩の依頼か?よし、受けて立つ。」
酒場にいた人々は、喧嘩という単語を聞き、視線を送ってきた。うるさかった酒場が、さらにうるさくなり、コウリーと傭兵の男の周りに一瞬で人集りができた。
こんなにうるさくなってもなお、禿げ頭の酔っ払いは、立ったまま爆睡していた。