ミツバチ酒を飲まない男
巨木が生い茂り、道なき道を歩いて見えるのは、カブト族の集落であった。複数の巨木を柱の代わりにし、逆V字型通路があり、それらが何重にも積み上がっていた。枝には、青色光石が吊るされており、下の階であっても明るかった。
この集落の名前は、ヨルンテ。ヨルンテで有名なものといえば、ミツバチ酒だ。舌の中でぱちぱちと弾け、しっとりと甘い味がする。人々はこの味が忘れられない。そのため、ヨルンテの酒場<マヨエル亭>はいつもうるさかった。
それぞれが政治や歌、ダンスで盛り上がっている時、腕を組んで、壁によかかっている男がいた。ミツバチ酒も飲まずに。
その男は、赤い鎧一式を着て、その上に魔術師のローブを羽織っている。とても奇妙な格好をしていた。
「何をしているだ?」男に向かって禿げ頭の酔っ払いが言った。「ボケーとしてんじゃない!もっと楽しめ!奢ってやろうか?」
「いや 大丈夫だ。仕事を探している。何かないか?」
男は手を振って言った。
「もしかして、傭兵か?」
禿げ頭の酔っ払いは、ふらふらしながら言った。今にも倒れて爆睡しそうであった。
「ああ、そうだ。金がなくてね」
男は、ため息混じりの声で言った。誰かが睨んでいるのを感じた。
「頼むような仕事はねえなぁ…何かに困っている者が来るようなところ…じゃ...ねえ..」
禿げ頭の酔っ払いは、立ったまま寝てしまった。意外にも倒れなかった。男は、驚き、鼻で笑った。