復讐聖女
「はあ、はあ、はあ、もうダメ」
「お嬢様、お逃げ下さい。リヒテンシュタイン本家、最後のお血筋、私がここで足止めを
します」
最後の護衛騎士が、敵に立ち向かっていった。
「ハハハッハ、最後の騎士を討ち取ったぞ!これで、あの小娘一人だ!」
そして、私は独りになった・・・
私はクリスチーネ、リヒテンシュタイン侯爵の2女。兄と姉がいる。末子であるが、姉が王太子の婚約者にとの話があった・・それが、卒業パーティで、異世界から来た聖女様をイジメていると殿下に断罪され、即、屋敷に兵がやってきた。
これは誰が見ても、謀略だ。
「おい、最後の娘を見つけたぞ!」
「捕らえてヒン剝いてやれ」
もうダメ、御守刀を喉に当て、死のうとしたが、怖い。怖い。怖い。
「へへへへ、お嬢ちゃん。怖くないからこっちきな」
何あれ、野良犬を捕まえる輪っかの付いた棒・・・・私をどうする気なの?
「おやめなさい!」
声が響いた。一人のシスター服を着た老齢の聖女がいた。
「ここは、聖女の修行の場のピエール山です。殺生は許しません」
「はん。何だってババ」
「おい、止せ!ピエール山の聖女と揉めたら不味いって」
「な~に、誰もみていやしないって、ババ、死ねや」
刺客が剣を振るう。しかし、老齢の聖女は
「そうですか、致し方なし」
「聖女戦闘の型、与太者殺し」
剣を振るった男の腕の関節を軽く、ポンと掴み剣を止めた。
「な、すごい力だ、動かねえ」
そのまま、聖魔法を放ち、関節を破壊する。魔族に効果のある魔法だが、高熱化をすればレーザーのように、人も斬れる。
ポロと腕が地面に落ちた。
「あら、俺の腕が・・ここ、殺生禁止だよね。俺を殺さないよね」
「ええ、そうでしたか。私はこれから間違いを犯します。女神様、お許しを」
「え、やる前に、許しを請うなら、まだ、間に合うよ。やめようよ」
そのまま、指を男の頭から下まで斬る動作をする。
パラとそのまま、真っ二つに刺客の体は割れた。
「ありゃ、視野が広がってるポエ~」
「「撤収だ、逃げろ。ピエール山の聖女は、化け物ぞろいって噂は本当だった!」」
刺客達は剣を捨て、逃げて行った。
「はあ、はあ、お助け頂いて、有難うございます。私は、リヒテンシュタイン侯爵が末子クリスチーネです。貴方様のお名前をお聞かせ下さい!」
「ピエール山修道院長ナターシャです。今夜は星が騒いでいたので、山道を散歩してました。では、この道をそのまま進めば村があります。そこで訳を話して、ナターシャの紹介と言えば、職を世話してくれる人がいるでしょう。私の名前を使いなさい。貴女の旅路が良い方向に行きますように」
「待って下さい!私も聖女の力が欲しい。貴方の元で修行させて下さい!」
「ピエール山の聖女の修行はとても厳しいのです。昨日まで令嬢で暮らしていた貴女では無理です」
「はあ、はあ、ピンクブロンドの聖女に復讐をしたいのです」
「!!今、貴女、ピンクブロンドと言いましたね!」
ナターシャはしばらく考え込んだ。
「・・良いでしょう。これも運命かもしれません。付いて来なさい」
「はい、院長!」
☆☆☆☆5年後
「聖女基本の型、乙女の祈り」「「はっ」」
「聖女基本の型、乙女の祈り膝立」「「はっ」」
「お~い、クリスチーネ、こっち来い」
「はい、戦闘指導聖女赤毛のアリーシャ様」
「今日は、お前の下山試験だ。オレを指命しやがって、本気か?」
「はい、聖女クリスチーネ、本気です。貴女に勝てないようではピンクブロンドに勝てないからです!」
「はん。口で言うは易し、俺をここから一歩でも動かしたら合格にしてやるよ。ハハハ」
「聖女戦闘の型、ガントレット乱れ打ち」
「オラオラオラ!」
赤毛のアリーシャは左手にはめたガントレットだけで、クリスチーネに撃ち込んでいた。
踏み込みはしない。余裕ではなく、手加減をしている。
拳の形になった聖魔法が、クリスチーネを襲う
「聖女防御の型、フランソワの華!」
クリスチーネはメイスで精一杯の防御をしている。攻撃に移れない。
「な~んだ、それで、良くオレに挑めたな」
だが、
(私は負けない。私は負けない。私は負けない)
チャンスは一回のみ
クリスチーネは、聖魔法をため込んでいた。
「はあ、はあ、はあ、聖女戦闘の型、環境利用闘法、地津波!」
「何?」
バキ、バキと音がする。
防御を解き、赤毛のアリーシャの攻撃を受ける。
「フグ、グワ、はあ、はあ、」
攻撃に構わずに、メイスを精一杯振りかぶり地面を撃とうとした。これで、地津波が起き。
さすがの、赤毛のアリーシャでも動かざる得ない。
「お前、正気か?」
その時、猫が赤毛のアリーシャの後ろを通った。
「ニャンニャーニャー」
「こら、クロちゃん。お姉様方の試合を邪魔しちゃいけないのです!」
幼年部の皆で飼っている黒猫とそれを追いかける少女が、地ならしの間合いに入った。
(う、う~、しまった。止められない。ならば)
クリスチーネは、メイスを地面に撃ち込まず。勢いのまま、空中で体ごと回転した。
1回、2回、3回~とまだ勢いは止まらない。
「何だこりゃ、こんなに回転するなんて、すごい威力だ。ヨシ、聖女慈悲の型、令嬢を抱っこ!」
赤毛のアリーシャは、その回転に飛び込んでクリスチーネを抱えて自ら周り、威力を相殺し、地面に降りた。
「お前、まだ、未熟だ。修行は続けろよ。それと、いつでもピエール山にこい。稽古をつけてやるからな」
「え、それじゃ、合格ですか?」
「あたぼうよ。あれを見せられたら、合格にするしかあんめえよ」
「赤毛のアリューシャ様!有難うございます!」
「こら、抱きつくな。治療してから下山だぞ!」
それを廟の裏で見ていた。院長、ナターシャと聖王国の筆頭聖女セイコがいた。
「後進が育って・・これから楽しみですね院長先生」
「ええ、しかし、クリスチーネは、これから過酷な旅になりましょう」
ナターシャは手を組み。クリスチーネの旅路の安全を静かに祈った。
最後までお読み頂き有難うございました。