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第6話 サポーター クロロ誕生‼︎

 ノワルが転移の宝玉でこの町に来てから数日が経ったある日、ギルドの交易所へ素材を換金しに行くノワルの姿があった。

 数日の間に町のことも理解してきた。そのおかげで生きるすべを身に付け、持てる知識を糧に憧れていた外の世界での生活をしている。


 近頃町では人々がある噂でもちきりらしい。


 ダリス近郊で凶暴、獰猛な魔物の数が減ってきているとの事。更に先日の悍ましい魔力の原因についてらしい。

 ギルドに入ると、ギルド酒場でも冒険者が噂話の考察や意見交換をしている。


 実はその噂の原因は他でもない全て自分なのである。ノワルはこの話題に触れないようにしていた。

 自分だと明かせばたちまち目立ってしまう。目立ってしまうとそのうち魔族にも目をつけられ正体がバレてしまい、やっと手に入れたこの生活が終わってしまうからである。



 ノワルは素材の換金を終え早々にギルドから立ち去ろうとした。



  ……と、そこへ1人の女性が駆け寄ってきた。

「突然すみません。お話しよろしいでしょうか?」


「はい?」


「私、このギルドで受付をしております、カロナと申します」


 ノワルはこの酒場や、町で見かける冒険者の話で耳にしていたので名前を覚えていた。

 彼女は容姿端麗で愛想も良いダリスギルドの受付嬢で名がとおっている。


「ここ数日、あなた様が換金している素材が珍しい物ばかりで……あっ!…別に盗み見しようとしてたわけでは無くて、鑑定士がいつも驚いているのをずっと見てまして…」


「?」


「あの!」


「はっ、はい」


「冒険者になりませんか?」


「……⁉︎ 、冒険者…ですか…?」


彼女は真意を伝える。


「あなた様の実力なら冒険者になると地位や名誉、富をも得られ、町も平和にできる……と思うのです!」


 しかしノワルの胸中は、目立ち過ぎて正体がバレ、魔族軍に見つかりでもすればこの憧れていた生活が終わってしまう。

そう思っている為、カロナの真意に答えられない。


 「ご……ごめんなさい‼︎…こ、この交易素材は知り合いから換金を頼まれているだけで俺のじゃないんです!」


 そう言い訳し、その場からそそくさとギルドを後にするのだった。



・・・・・・・



 住処にしているボロボロの空き家まで急いで帰ってきた。


 カロナに言われたことを思い出す…。


 確かにこの数日、生きるすべを身につけているものの、それはその日暮らしのこと……。


 このままの行き当たりばったりではダメなのは理解している。しかし、先のこと、未来のことに関して全く見通しが立たないでいるのが現状である。


(自分がしたい事は何なのか、思い描いていたのは、憧れていたのはなんだ……)


 そう。あの勇者の冒険譚のように、世界の隅々まで冒険しながら生きるには、冒険者にならないといけない。

 なぜならダンジョンや洞窟探索、クエスト受注などは、冒険者でないと許可されていないのはこの数日で確認した。

 かといってこの実力で冒険者になり活躍するといずれ確実に目立ち過ぎ、魔族に見つかってしまう。


(何かを変えなくては…。何かを…)


 何か良い方法は無いのか、夢と現実に葛藤するノワルであった。



*******



 翌朝、悩めるノワルは一睡も出来なかった。


 悩みを消化しきれないまま出てきた答えは1人で考えても仕方ない……ということ。


 何か良い方法を求め辿り着いたのは結局カロナの元だった。



- ダリスギルド -



 ガランゴロン……。


「…‼︎」

「あら、あなたは昨日の…」


「昨日は突然帰られたので……お気を悪くさせてしまったのでしたら謝ります」


「いえいえ!…そんなことありません。こちらこそ余計な心配をさせてしまいましたね」


「…?…どうかされましたか?」

元気がないノワルにカロナが不安そうに見つめる。


「いえ…実は昨日あなたに冒険者を進めて頂いてから、これからの事を考えていたのですが、答えがみつからなくて……」


「それではこちらにどうぞ。私でよければお悩みお聞かせ下さい。何か解決できるようなことあるかもです!」


「これも受付嬢のお仕事ですから!」

 カロナは意気込んでいる。


 ノワルは自身の素性を隠しつつカロナに悩みを打ち明けた……。


「実力は無いがダンジョンや洞窟探索、クエスト受注などしたい…ですか……」


「……でしたらサポーターなんてどうです?」


「サポーター?」

ノワルは聞き慣れない言葉に首を傾げた。



『サポーター』とは…。

 冒険者と共に旅へ同行し、直接的に戦闘には参加せず、冒険者の身の回りの世話、道具やアイテムの管理、金銭管理、情報収集など便利に尽くすジョブである。


 ノワルは閃いた。これなら表立って目立た無いし、冒険者でないと許可されない場所などは間接的ながら同行していればその条件をクリアできると。

 サポーターになれば夢を続けられる‼︎


 ノワルは決めた‼︎今日から『サポーター』になると‼︎


「ありがとう‼︎感謝する!」


 ノワルはカロナの手を取りピョンピョンと飛び跳ねて喜んだ‼︎


「よ↑かっ↓た↑です↓ぅ〜↑」

カロナは身体を上下に揺すぶられ目を回している。




 ノワルの興奮が冷めたので、ギルドにてサポーターへの手続きを始める。



「それでは、こちらの登録用紙にあなた様の情報を記入して下さい」


 カロナはノワルに用紙を差し出した。


 ノワルは登録用紙の記入にいきなりつまづく。


(名前……どうしよ…)

(ノワルって書いたら後々魔王って絶対ばれる!)

(何か考えないと…)


(そうだ!)

(服…黒いからクロ……クロロで良いか)



【登録名】クロロ(自称)

【性別】男

【年齢】18歳(嘘)

【住所】不定

【両親】不明(嘘)

【他】不明


「えっと…これだけですか?」


「…はい」


 何せ素性は隠さ無いといけない為、登録書には書けないことが多く嘘だらけである。

カロナに怪しまれながらも無事に登録を終えた…。


 この時をもって魔王ノワルの偽りの姿として、『サポーターのクロロ』が誕生したのである‼︎



今日から俺は、『サポーターのクロロ』だ‼︎

読んでいただき誠にありがとうございます。

貴方の貴重なお時間と共有できましたこと、大変嬉しく思います。


よろしければ温かい評価とブックマークのほどお願い致します。

私の自家用車のナンバー灯も点灯してくれると思うので、作品の創作意欲に繋がります。


では、次話でお会いしましょう。

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