表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/52

第4話 新世界

 灰色の光が目の前から広がり眩しさに目を閉じた瞬間、ノワルは脚が地に着いた感覚があり、目を開けると視界には大きな木で作られた門があった。門の奥にはレンガと木で作られた家々が見え、門から高い石垣が先が見えないくらい周囲を囲っている。


「わぁお……」


魔王城と違い色とりどりの色彩が視界に広がっている。


 ノワルはついに夢にまで見た魔王城より外の世界へ来たことを実感した。

 目には今にも溢れんばかりに涙が込み上げてきている。そして…


「やったぁ〜〜〜‼︎ついに来てやったぞぉぉぉ〜‼︎」


ノワルは遅れて表れた高揚感が爆発し両手を突き上げ叫んだ。



 暫く喜びに浸っていると、門の奥で見えた小さな動くものが目に止まった。


(あれはなんだ……?)

(⁉︎…に……人間だ…)



 目を凝らしてみると腰を抜かして酷く怯えている。更に自分に背を向け逃げる人々の姿も。

そして遠くからこちらに向かって武装した者が数名向かって来るのも見えた。


「…‼︎」


(ここは魔族領でも無く人間の住む町…)


ノワルは悟った。


自ら発せられる恐ろしく悍ましい魔力、気配がこうさせたのだと。

ハッとした瞬間、すぐさまこの場から立ち去り姿を隠すのだった。



 逃げていった先に運良くは空き家があった。転移して来た場所から遠く離れており人気は無い。しかしこの空き家は長い間手付かずで中々にボロボロである。


(ひとまずここで落ち着いて考えよう…)


 ノワルは外の世界の景色や、魔族や魔物以外の人を見た高揚感を抑えつつも今は冷静に今後について考えるのであった…。



*******




 朽ちて空いた屋根の穴から太陽の日差しが差し込みノワルは目を覚ました。


「大丈夫だ…。ここは城じゃない」


 目に見える情報から幻ではない今日を迎えているのをノワルは受け入れた。


 「そうだ……これから人間領にいるには、俺は魔王を捨てなければならない」


 上体を起こし、ノワルは自分の姿を人間になるよう変幻した。

 尖った爪や頭の角は隠し、そして殺戮に満ちた紅い目は、自身から溢れ出る魔力を抑えるとマシになった。

とにかく人から警戒されないようにした。


(今日からは人間……人間なんだ)


(魔王としての力は出さない。性格や口調も格好も変え、身体能力も限りなく人間の能力限界まで力を制御する……)




 上手く変幻が出来ているか、恐る恐る転移した場所へと戻ってみる。


「……‼︎」


 早速、門の向こうからノワルに向かって人間があるいてくる……。


(ドクン……ドクン……)


 ノワルは長年感じたことのなかった緊張が一気に押し寄せ、合わせて心臓の鼓動が早くなるのを感じた。手には自然と力が入り汗ばむ。


(ドクン…ドクン…ドクン…)


 心臓の鼓動する音が周囲にも聞こえてしまいそうだ……‼︎


 ノワルは顔をしかめ向かってくる人間を直視できないでいる。


(ああ……!どうなるんだぁ〜〜〜)


 ノワルの耳は向かってくる人間の足音をキャッチした。すぐ目の前に来ているのがわかる。


(〜〜〜〜〜‼︎)


 次第に足音はノワルの真横を通り過ぎていく………


 ノワルの心臓はフルスロットルで鼓動し、自分のものじゃないように思える程である。


 ノワルは薄く瞼を開け人間が通り過ぎて行くのを確認する。


(………⁉︎)


「あっ……!」


 なんと、自分の横を人間が通過していった……。


 ノワルは通り過ぎて行った人間が何事もなく通り過ぎていく後ろ姿を見ていた。


 どうやら上手くいったらしい。


 今度は怯える者も逃げる者もいない事を確認できた!


「よしっ!」

ノワルは小さくガッツポーズをした!




 ふと門の上を見ると"魔王城から1番遠い町ダリス"と看板に書かれている。

 あからさまである。


(ダリスか……確か書物にもあったな…)


 この世界の大陸は【人間領】と【魔族領】とに分かれており、その時代の冒険者ギルド勢力と、魔族軍の侵略によって長きに渡り境界線の均衡が著しく変化するのであった。

 その人間領に位置するここ、ダリスは、魔王城からもっとも遠く魔族進行も及ばない最果ての地と記されていた。


 ……ということは転移の宝玉が自身に発動し、改めて自分が長い間夢にまでみた自由を得られたと確信するのであった。


 大きな木でできた門を潜りいざ町に入ってみた。

 ただっ真っ直ぐ歩いてるだけでも人間の姿や賑わい、町並み、風景など憧れてたものがそこにはあった。

 ノワルの心は常に浮ついている。恐らく表情は緩みっぱなしだろう。



ふと辺りを見渡すと一際賑わう一画があった。

読んでいただき誠にありがとうございます。

貴方の貴重なお時間と共有できましたこと、大変嬉しく思います。


よろしければ温かい評価とブックマークのほどお願い致します。

私の口角もキュッと上がるので、作品の創作意欲に繋がります。


では、次話でお会いしましょう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ