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第17話 いざ、頂へ

 昨晩、ジードの過去とグリフォンとの因縁を知った2人は今回の討伐に新たな決意が芽生え、より一層討伐を達成する意味と団結を生むのだった。




 出発前、ロードランナーの背中に荷物を乗せる前だった。ロードランナーは水辺へ喉を潤しに向かった。3人は洞穴にて荷造りをしていた。

 突然、水辺に大きな影が降ってきた。ロードランナーは喉を潤すのに夢中で気がついていない!


 それは一瞬だった。


 空から大型の魔物が地面スレスレまで急降下し、翼を広げて落下の勢いを殺した。そして、羽ばたく反動でロードランナーを前脚で鷲掴みにして瞬く間にして飛び立っていったのである!


「グギャァァァ‼︎」


 3人が気づいたのはこのタイミングだった。さっきまでいたロードランナーはどこにも見当たらない。水辺の水面は静かに揺れたまま。そしてなぜか上空から声が聞こえる。


「しまった⁉︎」


 アシルは洞穴から飛び出し空を見上げる。すると、グリフォンがロードランナーを掴んで遥か上空を飛び、風塵の塔へと向かっていた!


 アシルは何も言葉が出なかった。


「ギャァァァ……‼︎」


 遠くの空にロードランナーの鳴き声が聞こえるのだった……。


「くそっ‼︎」


 ジードは拳を地面に叩きつける。


「みんな、すまない。僕が油断したばっかりに……」


 クロロは自らの失態に酷く後悔するのだった。


「クロロのせいじゃない。俺たちの誰のせいでもない!悪いのはグリフォンだ‼︎ ジード‼︎クロロ‼︎行こう!グリフォンを倒しに行こう‼︎」


 アシルの正義の心はグリフォンを許せないようだ。


「あぁ!」


 3人は拳を突き合わせ討伐へ向かうのだった。




- 風塵の塔 -




 高さ約550m、直径約200m、上へ行くほど内径が狭くなっている円形状の塔は、切り出された石材をいくつもに積み上げられた古来よりそびえ立つ塔である。一説によれば神々の戦い(ラグナロク)の頃よりあったとされる。誰が、何の為に、どうやって作ったのか最早わかるものはこの世にはいない。ただ、積み上げられた石材は風化が激しく、痛ましく月日の経過が見てとれる。


 塔の入り口は扉などない。いや、昔はあったのだろうが何せ風化が激しい。今は何も拒むものがないかのように大きな口を開けていかなる者でも受け入れているようだ。


 3人は塔の中へと入る。


 塔の内部は壁に沿うようなかたちで遥か上まで螺旋階段が続いており、ところどころに踊り場がある単純な作りだった。


 上を見上げると頂上は気が滅入るほど遠い。そのまま見上げ続けると、後ろへこけてしまいそうなほどだ。

 すると、極小さな光が見える。おそらくこの階段の最終なのだろうか、屋上へと続いていそうだ。


 一階フロアは内部を吹き抜ける風により、足元に砂塵が渦巻く。


 「いくぞ!」


 ジードを先頭にこの果てしない階段を登っていく。

 上へと登っていくとやはり相当の年月が経っているからなのだろうか、足場が崩れていたり、無くなっている箇所があった。そういった場所には、先駆者がアンカーを打っていたり、マーカーで印があったりと幾度となく登頂する者がいたのだろう。

 クロロも新規にアンカーを打ち、足場を確保しなければならない箇所もあった。



・・・・・・・



 どれくらい登っただろうか、一段ずつ上がって行くがやはり体にこたえる。特に足だ。だんだんと上がらなくなってくる。

 一同は踊り場のスペースで休みやすみ登るのだった。



 (フフフフフ………) 


       (フフフ……………)


              (ウフフフフフフフ…………)



 どこからか微笑む声が聴こえる。

 周りに人なんていなかったはずだ。3人は耳を疑うが、声は止まない。


「あそこです‼︎」


 クロロは上を指差した。そこには腕が翼になっており、膝から下は鳥の脚の形で、それ以外は人の女性の姿をした魔物が上空からこちらへと舞い降りてきた。しかも、3体‼︎


「あれはハーピィです!」


「みんな!警戒を怠るな!来るぞ‼︎」


 ハーピィはこちらから距離を取り旋回している。その内の一体は体が光を纏っている!


「皆さん、3体の中の1匹は魔法を詠唱中です!」


 クロロは相手の動きから目を離さない。


「ああ、確認した。ヤバいな……。俺のガードで防げれる程度ならいいが」


 ただならぬ緊張感が漂う。

 

「アシル……」


「どうしたクロロ?」


 クロロは上を見ながらアシルにアイコンタクトをする。


「まったく……君は無茶を言う。もし落ちそうになったら受け止めてくれよ」


「わかりました!」


 クロロの思惑はアシルに認識されたようだ。


「来るぞ‼︎」


 ジードはシールドをずっしりと構える。


 魔法の詠唱をするハーピィを纏う光が一瞬強くなる。すると幾何学模様の魔法陣が足元に浮かび上がり魔法が発動する!

 なんと、ハーピィの周囲に球体状に圧縮された渦巻く風が無数に発生する‼︎


「あれは、風魔法ファル・ウィンド‼︎」


「あの数……きついな、全て受け切れるだろうか……」


「キィェェェェェ……‼︎」


 ハーピィの叫びとともに1つ、2つと球体状の風が勢いよくこちらに飛んできた‼︎

 ジードはシールドでガードする!しっかりと踏みとどまり構えてはいるが、1発の衝撃が強くシールドを支えるだけで精一杯だ!

 続けて、残りの攻撃も休むことなく浴びせられる!まるで鉄の塊の乱射乱撃雨あられだ。


「ぐっ……‼︎」


 ファル・ウィンドはまだ止まない!逸れたものは背後の壁や足元の床に当たり砂埃を巻き上げた。



 一体どれくらい続いただろうか……ようやく攻撃が止まったが、かなりの数が放たれたので敵味方とも砂煙で状況が確認できないでいる。

 砂埃が晴れてき出すと、周囲の壁や地面はその威力を物語るかのように丸く窪んでいる。


 すると今度は、別の一体が両翼を交差した状態から大きく広げると、無数の羽がこちら目がけ飛ばしてきた‼︎

 飛んできた羽はシールドや床、壁など周囲に突き刺さるほどの威力だ‼︎

 更に最後の一体がこちらに目がけ鋭い脚詰めを突き立てながら蹴りを入れてくる‼︎

 砂煙で視界が悪い中、ジードはそれを何とかシールドで受け止める!


「うぉぉぉぉ‼︎」


 ジードは耐えるのに必死だ!


「こいつら、連携を決めてきやがる!」


「はい、ハーピィは大変賢い魔物です!中には脚で武器を掴んで攻撃するやつもいる程です」


「冷静に解説してんじゃねぇ……よ‼︎」


 ジードは蹴りを入れてくるハーピィをシールドで突き放す!


 すかさずまた最初のハーピィが魔法詠唱を唱えている!


「おい!クロロ!また来るぞ‼︎ 次またさっきの連携がきたらどうなるかわからねぇ‼︎」


「大丈夫です。こちらも手を打ってます!」


 クロロは機をうかがっている。


 ハーピィも次の攻撃の為に3体とも塔の中央で集まっている。



「アシル‼︎今です‼︎」


 クロロが叫ぶと、どこからかアシルが剣技を放った声がする‼︎


飛凰旋風陣ひおうせんぷうじん‼︎」


 なんと!アシルが対面側からクロロらの方へ剣撃を繰り出しながら勢いよく跳んでくる!

 抜刀からの体を回転させ斬りつける斬撃は、中央で飛んでいるハーピィ3体を的確に斬りつけた!

 ハーピィを斬りつけたアシルはクロロらへの元へと着地しようとするが、距離が届かずそのまま落下しそうになる!


「危ない‼︎」


 すかさずクロロはアシルに手を伸ばす!

 アシルはクロロの手を握る。しかし、落下方向への力を支えきれずクロロも体勢を崩しもろとも落ちそうになる!


「危ねぇ‼︎」


 クロロが落ちそうになるところでジードがクロロの腕を掴み、何とか踏みとどまることができた。


「キャァァァァ……………」


 ハーピィは3体とも血を噴き上げながら落下し、クロロらは戦闘に勝利するのだった………。




 アシルを引っ張り上げ、3人は無事に踊り場で落ち合うのだった。


 「ハァ、ハァ、お前ら……何やってんだよ⁉︎……それにアシルはどっから来た⁉︎」


 2人を引っ張ったジードは息を切らし状況の確認をする。


「アシルには上の階へ行ってもらい、対面側からこちらに向かって跳んで来てもらいました」


「でも、階段を登ってなかったぜ?登ってたら奴らにバレるし」


「ジード、この踊り場の真上を見て下さい」


 ジードは真上をみると状況を理解した。

3人がいた踊り場の真上を通る階段の大部分は風化が激しく無くなっており、代わりの足場としてアンカーが打ってあるだけだった。


「あそこ目がけてアシルには僕の両手に脚をかけて上へ跳んでもらいました」

「幸運なことに、ファル・ウィンドを受けた時に砂埃が舞い上がり敵味方とも姿が見えなくなった状況が作れ、敵がアシルに気づかない状況が生まれました。それがこの奇襲を成功させる確率を大きく上げてくれました!」


「ほんとに怖かったよ」


 アシルの顔は青ざめている。


「まったく、むちゃな戦略だな」


 ジードは頭を抱える。


「さっ!もうすぐ頂上ですよ!」



*******




- 風塵の塔 屋上 -




 やっとのことで螺旋階段を登りきり屋上に到達した。

 屋上は直径100mほどの広さで天井などはなく、外周にそって石柱が等間隔に並んでいる。地上から550mともあって風が強く、砂が体に打ちつける。

 床はひび割れしていたり、欠落している箇所も見受けられる。




「グリフォンは…………いませんね」


クロロは辺りを見渡すが存在を確認できない。


「もしかして逃げたのか?」


「その可能性も否定できない」


「…………?」


クロロは遠くに水滴が落ちきているのを確認しその場所へ駆け寄った。


(なんだ、これ?……雨なんて降ってないし)


なんとも不可解な現象が起きていると思った途端、ギョッとした。


(……血だ!)


なんと血が空から滴っていたのだ‼︎


「クロロ‼︎そこから離れろぉーー‼︎」


 アシルの叫ぶ声が聞こえる。その声に従い一目散にその場から離れた!


 すると突然、血が滴っていた場所に巨大な何が落下し、衝突音とともに多少の粘度がある液体が叩きつけられたような音が辺りに響いた。


(な………何だこれ?)


 クロロの目の前に理解し難いモノが視界に入る。


(に、肉塊?……いや、死体………か?)


 何かの死体であろうモノは表皮をエグられ、体の形を形成する骨があらわになっている。


(でも何だってこんな大きな死体が………)


 クロロはモノの全体を見てそれが何か理解した。


「ロ、ロードランナー………!」


 すると空からゆっくりとグリフォンが降下し、遠くの石柱の上に留まった。



 これはあきらかにグリフォンの挑発!


「完全になめられてるね」


「ああ、心底ムカつくぜ!」


「よくも僕のサポーターを‼︎」


 3人は臨戦態勢をとる!


 グリフォンも3人の気迫を勘づき構える!


「ジード、長年の因縁に決着をつけましょう‼︎」


 クロロはジードを鼓舞する!


「ああ!やってやる‼︎」


「クォォォォォォォン‼︎」


 グリフォンは開戦の咆哮をする。そして、石柱から飛び立つ‼︎


「いくぞ‼︎」


 長きにわたる因縁の戦いの火蓋は切られたのだった‼︎

読んでいただき誠にありがとうございます。

貴方の貴重なお時間と共有できましたこと、大変嬉しく思います。


よろしければ温かい評価とブックマークのほどお願い致します。

今やってるゲームのリセマラから卒業できると思いますので、作品の創作意欲に繋がります。


では、次話でお会いしましょう。


※本作のサイドストーリー『迷子の女の子のサポーターに魔王の婚約者はいかが?』も是非よろしくお願い致します。

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