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第14話 ジードの決意

- ダリス 産業区 -



「親父さーん‼︎」

「例の武器の進捗状況はどうだい?もう完成したかい?」


 クロロは鍛冶屋ゴンドに顔を出した。


「馬鹿野郎‼︎……んなもん一夜二夜でできる奴がおるかっ‼︎…………俺以外にはなぁ‼︎」


 ゴンドはクロロが設計した武器を披露した!


「うおぉ‼︎さすが親父さんだぜ!」


「ったく、この老体に徹夜なんかさせやがって!」

「おめぇの設計図通りとはいかねぇが、無駄を省いたりクセの修正をしたり、久しぶりに骨が折れる作業だったぜ」


 ゴンドは自分の肩を叩き、鞭打った体を労わる。


「とりあえず見てみろよ!」


 ゴンドは出来上がった品をワークテーブルに広げる。


「まずはここから加工した魔石を装填するだろ、トリガーを引くと撃鉄が魔法発動の刻印が入った撃針を叩いて、魔石の魔力が発動し飛射物が出る……」

「どうだ?」


 クロロは険しい顔で入念にチェックをする。


「……………」


「うん!いいと思う‼︎」

「いや、むしろ文句無い出来だ‼︎」


「ハッ!あったりめぇだろ‼︎それくらい言ってもらわねぇと……」


「「クラフトスの名が廃れるってもんさ‼︎」」


 ゴンドの口癖をクロロも口を揃えて言う。


「ガハハハハハハハ………‼︎」

「ワハハハハハハハ………‼︎」


波長の合った2人は声を上げて笑うのだった!




ドンッ‼︎‼︎


 クロロが勢いよく机に下ろした麻の袋は、机にある物を容赦なく落とすほどの重量だ。


「親父さん!報酬の20万メルスだ‼︎

 受け取ってくれ!」


「に……20万メルスだとぉ⁉︎おめぇこんなに…」


「親父さんには感謝してる。僕の思った以上の働きで作ってくれた代物だ‼︎……だから今の僕が出せるメルスを報酬にさせてもらった」

「あと、コレも受け取ってくれ!」


 クロロはブラッディの刃翼を渡した。


「こいつぁ……スゲェ素材じゃねぇか‼︎加工しがいがある!……ここまでしてもらっていいのか⁉︎」


「……足りないか?」


 ゴンドはクロロの誠意を理解する。


「………ふん!商談成立だ‼︎有り難く頂戴するぜ‼︎」


「よっしゃあ!」


 クロロとゴンドは固い握手を交わす。



「で、肝心の魔石の加工についてはどうなんだ?何か目星はついたのか?」


「いや、まだ見つかってない。ただ、この武器を上手く扱えそうなやつは見つけた!」


「いやいや、そっちじゃねぇだろうがよぉ」


 ゴンドは呆れた。


「まぁ、うちで造れねぇこともねぇからよ、必要なら声かけてくれ!おめぇなら最優先でみてやるよ‼︎」


「その時はまた頼むよ!」

「んじゃまた、寄らせてもらうよ」


 クロロは鍛冶屋を立ち去るのだった。



「ふぅ………ったくどいつもこいつも鍛冶屋引退に半分足を突っ込んだ俺に無理難題を言いやがる」

「今日はちったぁ休ませてもらおうかな……」



*******



 クロロが鍛冶屋を後にしてから暫く経った頃、誰かがやって来た。


 ゴトッ……


 作業をしながら来客の物音に気づいたゴンドは営業の事情を伝える。


「すまんなぁ……今日はもう何も作らねぇぜ」

「作成の依頼なら他を当たってくれ……」


 そう言いながら振り返ったゴンドは、表情が一変する。


 なんと、そこにはジードの姿があり、何やら思い詰めた表情をしている。


「お前………いきなり何のようだ」

「何も言わず出てったきり、一つも連絡よこさねぇで。5年振りにノコノコ帰って来やがって‼︎」


 ジードの表情は浮かばれない。


「……親父……すまない。これだけ伝えにきた」


 ゴンドはジードの話に耳を傾ける。 


「俺はここを出てってから、妹を……イスカを殺したアイツを倒す為に冒険者をやっていたんだ」

「アイツはイスカを殺してから行方をくらませていたが、最近になって戻って来たらしい。討伐依頼が出ている」

「俺は、アイツをこの手で倒して自分自身にケジメをつけてくる!」


 

「ふんっ!何を言うかと思えば……」

「ジード……イスカはそれを望んでいると思うか?」


 ゴンドは写真たての少女に目をやった。


「正直わからない……ただ、あの日から俺をこんなにも苦しめているアイツを、俺がこの手で討伐しねぇと俺は変われねぇと思うんだ‼︎」



「…………………」


 ゴンドは少し考え込み、一呼吸置き口を開く。


「"クラフトス家の人間は後悔しねぇように生きろ"」



「……⁉︎」


 ゴンドはそばにあった片手剣を手に取り、柄頭から剣身にかけて食い入るように見ながら話し出す。


「鍛冶屋の俺たちは武具を作る際、各工程に入ったらしまいまで止まることは許されねぇ。止まっちまうと、まともなモノが出来ねぇからな……」

「これは人間の生き方にも当てはまんのさ。後悔してっと、まともな人生を生きれねぇ……ってことなのさ!」

 「昔から言い続けてきたから覚えてんだろ?」


 ゴンドは持った片手剣の鋒をジードに向ける。


「あぁ、耳にたこができるくらいな」



「バカなお前が自分なりに責任感じて苦しんでたんなら、自分なりにきっちりケジメをつけてくればいい」

「お前の後悔の無いように生きろ!」


「はっ、はは……なんだよ。俺はてっきりブン殴られてどやされるのかと思ったぜ」


「ふんっ!ほんとはそうしてやりてぇとこだがな……。俺だって娘を失って悲しく無いわけじゃねぇよ。1日だって忘れた日はねぇ!」

「お前のようにアイツに復讐してやりてぇが、俺には護らなきゃいけねぇもんがあったからな………」




(おとうさん!わたしね、おおきくなったら、あくせさりーやさんになるの!

 それでね、おとうさんのこのおみせのなかにおみせをひらくの!

 おきゃくさんにわたしのつくったあくせさりーをつけてもらって、すこしでもたのしいひになってもらうんだー!

 えっ?なぜここにおみせをひらくのかって?

だってー、わたし、おとうさんとこのおみせがだいすきだから!)




 ゴンドの懐かしい思い出が蘇る。


「俺はお前と、イスカが好きだったこの店を護らなきゃいけなかった。だけどせめて俺ができる事といやぁ、俺の作った武器や防具を使う奴が魔族を倒して、同じ思いの人が少しでもいなくなればと思って鍛治に打ち込む他なかった……」


 ゴンドは自分の鍛冶に対する思いを打ち明けた。



「俺がここを出てったのは、イスカを殺されたのに何にもやり返さねぇ親父に愛想を尽かして出てったが、親父は親父なりの後悔の無い生き方をしてたんだな……」


 ジードは長年思い詰めていた父への鬱念が、次第に晴れやかになるのだった。



「それじゃ、行ってくる」


「ああ、行ってこい!」



*******



- ダリスギルド -



 ギルドの酒場では、アシルとクロロが食事をしていた。

 クロロは食事を摂る傍ら、ゴンドに作ってもらった武器の設計図を見ながら問題点の解決を探るのだった。


「クロロ、最近は時間さえあればその設計図をみてるね」


「うーん。武器はできたんだけど、まだ問題点がね……」



……ガラン、ゴロロン……



「あっ‼︎いた!」


 ギルドに来たのはジードだった!


「アシル!クロロ‼︎」


「ジード?どうしたんだい?」


「お前達に頼みがある!」


「頼み……ですか?」


「俺とコイツを討伐してほしい‼︎」


 ジードはクエスト依頼書を2人に見せた。




 〜 討伐依頼書 〜


 【 大空の覇者 グリフォン 】


 5年前ダリス近郊に現れたグリフォンは各地に多大なる被害をもたらした。その後、行方をくらませていたが再び戻ってきたようだ。

今のところ以前のような被害は報告されていないが、新たな被害が発生する前に討伐を依頼する。なお、出現場所は『風塵の塔』と思われる。



*******




「グリフォンっていえば、上半身は大きな羽の生えた猛禽類で、下半身は獅子の魔物だよな。性格は極めて獰猛で高い知能があると噂程度に聞いた事がある」


 依頼書をみたアシルは、自分の知識にある相手の情報を思い出し、これから迎え撃つであろう相手が強敵だと覚悟する。



(グリフォンか……。結構大物級だな)


 一方のクロロは生態ピラミッドの観点からグリフォンの強さを推測した。

 (まぁ良く配下が魔族領の移動手段で使ってたな)



「なぜ僕らなんだい?」


 アシルはジードに率直に問う。


「まず、アシルはその類稀なる剣術とバトルセンス、それが俺のガードとの相性が非常に良い!」

「特にグリフォンの一撃はかなりの強さだ!1人がガードに徹さないと、攻撃に転じれ無いまま押されてヤられてしまうだろう」

「そして、今回のグリフォンが棲みついている『風塵の塔』は、ここダリスからだと2日はかかる。その道中の飯炊きやら寝泊まりの支度はクロロにお願いしたい。だがクロロはそれ以外にも幅広い知識や、戦術、自らが調合した薬など、どんな不利な戦況に陥ろうとも脱する力を持っている。俺はそこに評価点を置いた!」


「まぁ、これはすべてブラッディの件でわかったことなんだが、俺にとっちゃ今回の討伐依頼を成功させる中で充分すぎるものだった。………どうだろう?引き受けてくれるかい?」


 ジードは2人の顔色を伺う。


 アシルとクロロは互いの目を合わせる。2人とも胸中は同じのようだ!


「ああ‼︎僕たちで良ければ力になるよ‼︎」


「うん!遠征なんて楽しみ過ぎる!」


 クロロは大物を狩りに行くという目的が念頭になく、目的とは別の自分の興味に心躍らせている。


「おいおい…。ピクニックに行くんじゃないんだぜ⁉︎」


 ジードは呆れ顔だ。しかし、すぐさま気を取り直す。


「よし!出立は明日、時刻は明朝、ダリス入り口門前に集合だ!」


 ジードはクロロの言動に気掛かりを覚えつつ、それを拭うかのように啖呵を切った。


「了解!僕は今から準備を進めていくよ」


 クロロは意気込んでいる。


「よろしく頼む‼︎」


「わかったよ。迷わないように行くね」


「いやいや……。迷わねぇだろ?」


 ジードはすかさずツッコむ。


(いや、普通にありえる……)


 クロロは思い当たる節が大いにある。


「アシル、念のため僕がニコロに日時を伝えとくよ」


「マジかよ………」


 ジードは先行きに少し不安を覚えたのだった……。

読んでいただき誠にありがとうございます。

貴方の貴重なお時間と共有できましたこと、大変嬉しく思います。


よろしければ温かい評価とブックマークのほどお願い致します。

自家用車の右フォグランプの調子が良くなり、夜道と私の暗い心も照らしてくれるので、作品の創作意欲に繋がります。


では、次話でお会いしましょう。


※本作のサイドストーリー『迷子の女の子のサポーターに魔王の婚約者はいかが?』も是非よろしくお願い致します。

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