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第13話 称賛に値する者の帰還

 ブラッディを倒したクロロ達は無事に洞窟から出てきた。


 クロロは亡くなったソーサラーの亡骸を大きな白い布で包んだ。


 一同は自らの命と引き換えに、仲間を救う光を導いてくれた亡骸に手を合わせ、鎮魂の祈りを捧げるのだった……。


「くそっ‼︎また(・・)守れなかった……あの日、誓ったのに……」


 ジードは自責の念に駆られ、悲痛な面持ちでぼそりと呟いた……。



(……?)


 それはクロロにだけ聞こえた………。



*******



「今日はここでキャンプをしましょう。毒を食らったエドガーさんも処置済みとはいえ、まだ体を動かすのもよくありませんからね」


 クロロは早速キャンプの準備を進める。



・・・・・・・



「腹減ったなぁ。飯は……」


「僕が作ります!メニューはエドガーさんの体調に合わせた薬膳リゾットにしましょう」


「おいおい。そんな料理もできんのかよ……クロロお前はホント何者だよ…」


「僕ですか?……無駄に知識のあるただのサポーターってとこですよ」


 そう言いながらクロロは着々と準備を進める。



 一同は食卓を囲む。


「エドガー、食えるか?」


 症状が落ち着きつつあるエドガーにジードは食事をあたえる。


「うめぇ。か……体に染み…る…。」

「うぅ……う…ぅぅ………あ、ありがとう…」


 エドガーは自らの不甲斐なさなのか、それともクロロらへの感謝なのか、泣きながら食事する。


「わかった、わかったから…今は食え」


 ジードはエドガーを宥めた。



*******



 食事も一段落ついた頃、焚き火を囲みながら談話に花が咲いていた。


 エドガーも談話に加わる。エドガーは白い布に包まれた亡骸を見つめる……。


「あいつは……ミッドってんだ。昔からの幼馴染でいっつも一緒だった…」

「俺が剣術試験に合格した時、あいつムチャクチャ喜んでくれたし、あいつが魔法使えるようになった時も、俺は自分のことのように嬉しかった」

「あいつ……仲間思いだから…今回ブラッディが現れた時、先に負傷した俺を助けようと勝手に体が動いちまったんだと思う。だから……あいつがこんな目に…」



「………………………」



「すまん……。違うんだみんな、気を落とさねぇでくれ。ミッドは冒険者同士で騒ぐのが好きな奴だったんだ。だから、今日は楽しく送ってやりてぇ」



「わかったよ。明るく送りだそうか」


 アシルは焚き火に照らされるミッドに微笑みかけた……。



 赤々となった炭は音を立てて崩れ、舞い上がった火の粉は星々が瞬く夜空へと天高く登っていくのだった……。




*******





 また朝日が今日を映し出す。


「さっ、行きましょうか」


 ミッドはジードが背負う。


 早々に身支度を終え帰路に着く。


「ジードさん!」


 エドガーは真剣な眼差しで呼びかける。


「どうした?」


「今回の報酬だが……」


「報酬はいいよ。結局俺はミッドを守れてねぇ」


「だが……」


「当てにしてたもんはミッドの身内に返してやんな」


「…………すまん。恩にきる」


 エドガーは深々と礼をした。




 クロロはジードに問う。それは直接聞けはしないが、ミッドの亡骸に手を合わせた時に呟いた言葉が気になったからであった。


「ジードはエドガーさんやミッドさんとずっと同じパーティーでは無かったんですね」


「ああ。俺は固定したパーティーは持たねぇ主義なんだ。自分で寄せ集めのパーティーを組むか、用心棒として雇ってもらうかだな。要はノラだ」


「なぜです?」


「情が移っちまうと……失うのがつれぇだろ?

 俺は……もぉ…あんな思いをするのはごめんだ……」


 ジードは左耳の羽付きピアスに手を触れ、とても辛そうな表情を垣間見せた。





- ダリスギルド前 -




「んじゃ、俺はこのままエドガーと行くわ。

 悲しいけどミッドを早く家に帰してやりてぇ」


「わかった。こっちは報告手続きを済ましておくよ」


「アシルさん、クロロさん、今回は本当にありがとうございました」


 エドガーは恩人に心から敬意を表した。




- ダリスギルド -





「戻りました」


「‼︎」


「あっ‼︎アシルさん!クロロさん!

 よくぞご無事で……‼︎なかなか戻られないので心配しておりました」


 カロナは張り詰めていた気持ちから解放されたのか安堵の涙を浮かべていた。


(誰もいなければ抱きしめるのに……)


 クロロの心はよこしまだ。



 アシルは緊急クエストの報告手続きを済ませるのだった。



・・・・・・・



「そうですか、ミッドさんが………とても仲間思いに溢れた方でしたね………残念でなりません」


 カロナも馴染みだったのか突然の死別を受け入れられない様子だ。



……ガラン、ゴロロン…



「おっ!いたいた」


 ギルドに入ってきたのはジードだった。


「ジード!」


「お前ら報告手続きは済んだか?」


「あぁ!終わったよ、そっちは?」


「……あぁ………目も当てられない有り様だったがな………」

「でも、ミッドの両親、お前らに感謝してたぜ」



「そっか……」



「それじゃあ、やっぱり今回の報酬はミッドの両親に贈ろうと思う。僕たちはこんなことしかできないが……」


「私たちギルド側からもミッドさんの功績を称え何か報賞を贈ろうと思います」


「……ありがとう。俺からも礼を言っておく」



「では、僕たちは失礼しますね」


 アシルとクロロはギルドを後にした……。




 暫くするとギルドのフロアが騒がしくなってきた。


 細身で長身、ビシッと決めたギルドの制服、腰の辺りまで伸びた金髪をなびかせながら、女性ギルドマネージャーのランスロットが2階通路からフロアへ続く階段を降りてきた。

 手には新たなクエストの依頼書を持っている。


「エサの時間か……」


 ダリスギルドでは1日1回クエストの更新される。時間は大体同じな為、冒険者達はこの時間になると我先にと言わんばかりに依頼書が張り出される掲示板へと群がる。

 ジードはその光景を揶揄しているのだ。


「おぉぉ…‼︎」


 群がる冒険者達から驚きの声があがった。


「?……なんだ⁉︎」


 ジードは気になり冒険者の群れを掻き分け掲示板へと向かった。


「…………‼︎」


 ジードはある1つの依頼書に思わず目を見張る。そして、次第に静かなる闘志漲る表情へと変わっていく。


(待ってたぜ。ずっとお前を探してたんだ……)


 ジードの覇気を感じてか周りの冒険者は距離をとる。


「これ……もらってくぜ…」


 そう言うとジードはその依頼書を片手で鷲掴みにし、乱暴に引きちぎると、そのままギルドを後にするのだった……。


 ギルドの2階からランスロットは去って行くジードの姿を見ていた。


「やはりな………武運を……」


 そう言ってランスロットは2階の自室に戻った。

読んでいただき誠にありがとうございます。

貴方の貴重なお時間と共有できましたこと、大変嬉しく思います。


よろしければ温かい評価とブックマークのほどお願い致します。

自家用車の朝イチのエンジンのかかりが良くなると思いますので、作品の創作意欲に繋がります。


では、次話でお会いしましょう。


※本作のサイドストーリー『迷子の女の子のサポーターに魔王の婚約者はいかが?』も是非よろしくお願い致します。

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