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第11話 鉄の男と緊急クエスト

- ダリス 産業区 -


 規則正しいリズムで澄んだ打音が付近一帯に響き渡る。ここはダリスの産業区の鍛冶屋が並ぶ一画だ。ここいらの連中は職人気質な者ばかりで良くも悪くもクセが強い。



「親父さん!頼むよ!」

「こんなの頼めるの親父さんだけなんだ!」


「確かに、お前さんの発想は素晴らしい!この設計図通り実現すりゃあ画期的だ。だがな、この飛射物になる魔石の加工が必要ってのが俺は気にくわねぇ!」


 歳を重ね渋みを増し、髭を蓄えたガタイの良い男性はクロロの要望に難癖つける。


「そんなこと言わないで頼むよ!」

「親父さんの腕を見込んで来たんだ‼︎」


 クロロはかつて魔王だったとは思えぬほど下手に出ていた。それくらい人間との付き合い方がわかってきたからなのだろうか。


「僕が武具屋で気になったものが全部親父さんの作ったやつだったんだよ!」



「親父さんの打ったシャムシール、あの刀身の曲線と柄のバランスがあるからこそ、相手の反応より半歩先の攻撃を与えられるし」

「メイスも!あの絶妙な重心だからこそ振り抜きやすいし疲れにくい」

「防具も良かったよー。あのなめし皮!縫い方が特徴的で守りに隙がなく、可動範囲にストレスがない!」

「ほらっ!普段使ってるナイフも!【鍛冶屋ゴンド】の刻印入ってるだろ?」


「親父さんの作る武具はどれも一級品だよ‼︎」


「ほぉ……わかってるじゃねか。俺ら一族の名は鍛冶の神様の名の一部を頂戴してんだ。それくらい言ってもらわねぇとクラフトスの名が廃れるってもんさ!」


「じゃあ僕のこの依頼もやらないと、クラフトスの名が廃るんじゃないのか?」


「ぬぬぅ……おめぇも引き下がらねぇな。

………わかったよ!引き受ける」


「良いのか⁉︎……本当か⁉︎」


「ただし、お前の設計図通り作るが、物には当然クセが出る。そのクセを直すうち多少、形状が変わるのは大目に見てくれ」


「わかった」


「あと、問題の飛射物だが、ある程度ストックは持てるだろうが、旅先で無くなったらどうするんだ?素材の魔石は旅先で調達できるだろうが加工が無理だろ?」


「それは僕が加工技術を身に付ければ大丈夫だ!」


 それを聞いたとたんゴンドの目の色が急に変わる。


「バッカモンッ‼︎‼︎」



「……⁉︎」


 クロロは上級雷魔法が炸裂したのかと思うくらいの怒号を浴びさせられた!


「おめぇは鍛冶をなめてんのかぁ⁉︎あぁん⁉︎

おめぇみたいなヒヨッ子がやろうったって付け焼き刃では到底通用しないんだよ‼︎」


 ゴンドはものすごい形相でクロロに迫る。


(ヒヨッ子ね……俺、実年齢1018歳なんだけどね……)


 クロロはゴンドを軽くあしらっている。


「……とにかくだ、この武器の方はこっちで進めるからよ、おめぇは魔石の加工について何か策を立てとけよ‼︎」


「わかったよ!」

「……んじゃ親父さん!僕、人待たしてるから!よろしくー!」


 クロロは鍛冶屋を後にした。


「ふん!何がよろしくだ……」


「旅先で武具の加工か……あいつ本当になんとかできんのか…?」


(ま、どっかでフラついてるバカ息子なら……)


「だぁー…いかん!あいつのことは‼︎」


「なぁ…そうだろ?」


 ゴンドは写真たてに写る少女に話しかけた。



*******



- ダリスギルド前 -


「おーーい!」


 クロロは用事を済ませ待ち合わせ場所へとやって来た。


「アシル。クロロが来たぜ!」


「うん。目的が済んだようだね」


 ギルド前にはアシルとニコロが待っていた。


「ごめん。待たせた!」


「目的は?」


「ああ。何とか交渉成立だ!鍛冶屋のゴンドに頼んできた!」


「えぇーーっ⁉︎マジかよっ⁉︎」

「鍛冶屋のゴンドってあのゴンドー⁉︎」


 ニコロは驚愕している!


「クロロ、よくあんな頑固親父に仕事頼めたな!ゴンドっていやぁ鍛冶職人の中でも随一の腕利きだが、依頼された仕事はしねぇって噂だぜ⁉︎」


「まぁ、確かに頼むのは大変だったな……でも何回も足を運んでいると、ああいった人こそ人情味溢れるものだよ」


「ふーん。俺にはわかんねぇや」

「んじゃ、俺は教会に戻るぜ」


「ああ。道案内ありがとう」


「いい加減ここまでの道くらい覚えろよなー」

 そう言いながらニコロは2人の元を去っていった。


(教会か……)

 あれからクロロはメーヴィスの言っていたオクストロスや女神の真意などの情報は得られないでいた。


「さぁ、クロロ、今日もクエストをこなそうか!」


「あ、あぁ!」




- ダリスギルド -




ガランゴロ……


 いつも賑わうギルドのフロアは閑散としてしいる。


「ねぇ。アシル、最近は冒険者が町にいませんよね……」


「そうだね。なんでも暫く前の禍々しい魔力発生事件と、ダリス近郊の魔獣狩り事件でダリスの冒険者がギルドからの依頼で調査団を組んで最終遠征に出てるからね」


「アッ。ソウナンダネ……」


 クロロは心底、居た堪れない気持ちになった。



ガラン‼︎ゴロン‼︎


 いきなりギルドの扉が勢いよく開き、ウェルカムベルがけたたましく鳴った‼︎


「ぼ……冒険者はいるかぁ⁉︎」


 駆け込んで来たのは老人。血相を変え息を切らし慌てふためく様は、とても良くないことが起こっているのを物語っている。


 ギルドの空気も一変する。


「どうした⁉︎」


 アシルは老人に問う。


 慌てる老人は息が続かないでいるので喋りにくそうにしながらも伝える。


 「…北の………洞窟…の………ほう…から……煙…………応援…の……応援の…煙……」


 「北の洞窟!応援要請の煙‼︎」


 アシルは聴いた言葉を要約し声に出した。


 それを聴いた受付のカロナは急いでクエスト台帳を広げ調べる。


 クロロは老人に精神安定効果のあるポーションを飲ませた。


 時は一刻を争う事態、緊迫した空気に包まれる。


「ありました‼︎」


 カロナはクエスト台帳にあった内容を読み上げる!


「北の洞窟、ポイズンバットの討伐依頼で冒険者3名がクエスト受注!まだ帰還の報告なし‼︎」

「パーティージョブはウォーリアー、ソーサラー、ガードナーです‼︎」



「討伐対象がポイズンバットにソーサラーも入れた3人か……実力に見合った受注だと思うのだが」


「そうだねアシル。恐らく予想外のことがあったに違いない」


「アシルさん、クロロさん行けますか⁉︎」

 カロナは神妙な顔つきで語りかける。


アシルとクロロは頷く。



「ダリスギルドより緊急クエスト‼︎」


 カロナが凛とした態度で勢いよく号令をかける。


「ウォーリアー、アシル‼︎、そしてサポーターのクロロ‼︎」


「ダリスギルド准一級主査官カロナ・フィルナートより命じます‼︎」

「ポイズンバット討伐に向かった3人の冒険者の応援、救出を直ちに遂行!なお、今回、ポイズンバットとの戦闘に関わらず救出を優先することとする‼︎」


「以上‼︎」



「よし、行こう‼︎」


 アシルとクロロはギルドを後にし、目的地まで大至急向かうのだった。



「どうかご無事で……。」


 足早に去っていった2人の無事を祈るカロナであった……。

読んでいただき誠にありがとうございます。

貴方の貴重なお時間と共有できましたこと、大変嬉しく思います。


よろしければ温かい評価とブックマークのほどお願い致します。

朝の車通勤でいつも赤で止まる信号も、青になり遅刻を回避できると思うので、作品の創作意欲に繋がります。


では、次話でお会いしましょう。


※本作のサイドストーリー『迷子の女の子のサポーターに魔王の婚約者はいかが?』も是非よろしくお願い致します。

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