第5話 ふわトロオムレツと難問
「ただいま〜。」
と声をかけると、いつも通り母はいなかった。
うん、どうせ今日も残業だな、なんか作ろう。
と思いながら二階の自分の部屋に向かうと、ベッドに寝っ転がった。
しばらくゴロンゴロン回ってから、窓辺に置いてあった大きな熊のぬいぐるみを抱きしめて、んー、とうなる。
むっくりと起き上がると、足を開いて、おもむろにストレッチをした。
ん、思ったより固くねぇな、俺。
ちょっと喜びつつ、しっかりと伸ばす。
俺昔、体操やってたんだよね。
だからストレッチの方法とかは一通りわかってるし、時々やってはいるけど、でもやっぱ固くなるよなぁ。
え?部活?
あぁ〜、今んとこ、帰宅部。
んでも、途中で変えられるし、楽しそうな部活あったら入ろうかなぁ………(中二)
涼貴も帰宅部だよ。
勉強したいから、つって。
なんかねー、科学部とか物理部とか数学部とかあるんだけど、そんなんじゃやなんだって、そう言ってた。
まぁ俺も、家とか塾の自習室で勉強した方がいいんだけどね。
最近行ってないけど。
でもま、次のテストまでに全科目完璧であればいいんだろ?
なんとかいけるって。
さて、なにつくろーかなー。
思いながらスマホを開き、検索。
一番上に出てきた”失敗しない!絶対うまいふわトロオムレツ!”
というものを作ることにした。
「うし、やるか。」
と呟いてから、おもむろにカーテンを開く。
向こう側に見える涼貴の家の、彼の部屋にはあかりが灯っていない。
また自習室か、偉いな。
昔はよく一緒に行ってたなぁ。
気分が沈んだので、うっし、とまた気合い入れをすると、俺は一回に向かった。
材料を並べていき、手順を確認しながら作る。
一番難しいのは当然オムレツだ。
綺麗に、とろとろに焼けるかが一番の肝になると考えている。
まぁ結論から言おう。
うまくいった。
俺、家庭科は苦手じゃねぇんだよね、実は。
だって、母さんがよく残業だったから、ね。
必然だよ、必然。
一人食べているのは静かで寂しいので、テレビをつける。
もぐもぐ、もぐもぐ。
とろっとろのオムレツと、少し味の濃いライスとが絡み合い、先ほど甘いものをしこたま食べた俺の腹を優しく満たしていく。
食べ終わると、俺はお菓子のたくさん乗っている籠の方へ歩いた。
上に乗っていたコンペイトウの缶を開けると、一粒口に放り込む。
ボリボリ。
ボリボリ。
甘い。
硬い。
んっっ………
うん、頭を使った方がいいな、このままだと、ただ太るだけになる。
俺は立ち上がると二階に行き、教科書とノートを開いた。
シャーペンをくるくる回しながら、めっちゃめんどくさい数学の難問を三つ程解く。
ヤベェ、頭の中がぐっちゃぐちゃだ、この計算はどの計算だ!?
どこを求めたんだっけ!?
計算用紙が、足りないっ!?
桁が長すぎんだよ!
………おっと。
言葉遣いが悪くなってしまいましたわ。
ごめんあそばせ………
ん、女言葉恥じぃ。
目をこすりながらどうにか三つの難問を解き終わると、俺は思いっきり反り返って、またコンペイトウを食べていた。
はっ!
だめだ、さっき食べたコンペイトウのエネルギーを使うために頭を使ったのに、また食べてたら意味ないじゃんっ!
………もういいや。
風呂はいろ。
俺は立ち上がると、新しい着替えを持って風呂場へ向かった。
読んでくださってありがとうございます!!
そして、待っていてくださって本当にありがとうございます!!
長らくお待たせしました、申し訳ありません。
さてさて、涼貴と千隼の交代交代の視点だと言いましたが、そうじゃなくなってますね。
1話1話で交代にはならなさそうです。
すいません。
次は涼貴視点の話。
もう夜も遅いのに、涼貴は家に帰っていない。
一体どこにいるのか………?
どうぞお楽しみに!
それでは次の話でお会いしましょうっ!