第3話 悪夢と甘い現実
「いってきます………」
俺はため息をつきながらそう言うと、母の「いってらっしゃい」を待たずに外に出る。
気が重い。
今日の目覚めは最悪だった。
と言うか、夢が最悪だった。
涼貴が俺に、
『お前が幼馴染なのがぼくの最大の過ちだよ。』
『ぼくのほうを見ないでもらえるかな、きしょいから。』
と、立て続けに暴言をはくという夢である。
はっきり言って、悪夢だった。
起きた時には汗がびっしょりである。
母に、
「ちょっと、どうしたの?眉間にシワが刻み込まれてるわよ?」
と、割とガチめに心配された。
俺は苦笑いで返すことしかできなかった。
ため息をつきながら歩いていると、
「「あっ。」」
と声が揃う。
一本向こうの通りから大通りにやってきたのは、涼貴だった。
気まずい空気が、爽やかに晴れた朝と対照的である。
「涼貴………」
俺が声をかけようと口を開くと、涼貴はスピードをはやめて歩いて行ってしまう。
「っ………」
俺は顔を歪めた。
夢に続き、現実世界も最悪である。
「いい朝なのに………」
深い深いため息が、コンクリに吸い込まれて行った。
「キーンコーンカーンコーン」
授業の終わりを告げるチャイムがなり、教室内の空気がふっと緩んだ。
「よしっ、もう帰れるっ!」
「帰りに駅前のタピオカショップ行こーぜー。抹茶味が出たってよ!」
一気に教室が騒がしくなる。
「な、千隼も一緒に行かね?」
「え………?何が?」
「だーかーらー、タピオカショップだってば。」
あ、俺もか。
「んー、どうしようかな。」
「だって、今日は塾休みだろ?」
「まぁそうだけど………」
「なら行こうぜ!それに、その近くのカフェでスイーツフェアやってるらしいから、それも一緒に………」
「行く。」
皆まで言わせず言う。
「きまりなっ!」
俺が行くと言うのをわかっていたみたいに、得意げな顔で頷かれ、俺は少し複雑な心境である。
やっぱ俺、わかりやすいのかも。
「………?」
友達が変な顔を始めた。
それは本当に“変な顔”で、何とも形容しがたいんだけど………
「何やってんだよ。」
何ともムカつく顔で、俺が小突くと、友達は変な顔をやめた。
そして、ホッとした顔をする。
「よかったぁ、千隼、普通になったぁ。」
「は?」
「千隼、今日一日ずーっと怖ぇ顔してたから、心配したんだぞ?」
「うんうん。」
腕を組んで言う友達たちの真剣な顔を見ていて、ズタボロになった俺の心が治って行くのを感じた。
「ふふっ。」
「なんだよ。」
俺が笑い声を漏らすと、友達が怪訝な顔をした。
「いいや、俺、お前らにめっちゃ心配されてんだなぁって、嬉しくなっただけ。」
「そ、そうかよ………」
恥ずかしそうにほおを真っ赤にして、頭を掻く様子が、なんだかすごく幼く見える。
ほおが緩むのを止められずにいると、
「はいみんな、席について。」
という担任の声がした。
慌てて、俺の周りにいた友達が自分の席に散って行く。
先生が言う、”大事なお話”なんて一つも頭に入ってこなくて、どこかふわふわしていた。
ホームルームが終わると、俺は───俺たちは一斉に立ち上がった。
「よし、行くぞっ!」
と叫ぶ姿は、まるで戦場に行くかのように精悍な顔つきをしていた。
読んでくださってありがとうございます!!
毎度毎度サブタイトルでフリーズし(私が)悩みます。
そして、涼貴があんな暴言吐くって………ありえねー。
第二話を千隼に見せてやりたいですね。
次の話はスイーツ大戦争!
読んでいただけると嬉しいです!
それでは、次の話のあとがきで、お会いしましょうっ!