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第6話

 次の日。華雅里は登校中の電車の中でアップルへメールをした。


 アップルさんは、背が高いほうですか? 低いほうですか?

 白人ですか? 黒人ですか? それとも黄色人ですか?

 朝は何を食べますか?

 趣味はなんですか?


 授業を受けている間に返事が返ってくるかもしれないと思ったからだった。

 だが、返事は華雅里の予想より早かった。すぐに返ってきたのだ。


 身長は、真ん中くらい。

 混血なので、偏った肌の色はありません。

 朝は、いろいろな野菜を食べます。

 趣味は、散歩です。

 ミサキさんも趣味はありますか?

 朝は何を食べるのですか?

 肌の色は何色ですか?

 身長はどのくらいですか?


 ミサキとは、交流サイト・オーシャンで使っている華雅里のサブネームである。

 アップルの返事は、当たり障りの無いものだった。そして華雅里の質問をマネて返事をしてきたのだ。

 華雅里は違和感を感じたが、アップルの返事が嬉しかったので、電車に揺られながらすぐにメールした。


 趣味は、このメールだけど、ほかはカラオケかな。

 朝は、パンだったり、お米だったり、食べなかったり。

 アジア人なので、肌は黄色です。

 身長は、160センチくらい。

 私はこれから学校なので、すぐに返事はできないけど、終わったら返事をするので、遠慮なくメールしてね。


 華雅里は、携帯電話を閉じた。次の駅で電車を降りるからだ。しかし、メール受信の音がしたので、また携帯電話を開いたのである。


 学校に通っているのですか。

 どんな事を学んでいますか?

 1+1=

 これは分かりますか?


 華雅里は、目を見開いた。一桁の足し算の答えを求めてきたメールは初めてだったからだ。

「こんなの簡単じゃない」

 華雅里は、電車から降りて、ホームを歩きながら携帯電話のボタンを押した。前を見て歩いていないので、肩を並べて歩く人々とぶつかったりしたが、華雅里は全く気にしなかった。


 1+1=2

 これなら簡単。誰だって分かるよ

 アップルさんの最終学歴は?

 どこの学校を卒業したんですか?


 華雅里のメールに、またしてもアップルからの返事はすぐに来た。


 通信で学んだので、特にどこというのはありません。

 最終学歴ですか。

 一応、最後まで学んだので、ミサキさんのとこだと、どの辺りになるのかな?

 次の質問です。

 ミサキさんが、自身の固体を増やす時は、どうするのですか?

 分裂ですか?

 

「え!?」

 この声は、アップルからのメールを読んだ華雅里のものである。それは華雅里が渋谷駅を出て高校への通学路を歩いていた時だった。

「自身の固体を増やす時ですって? 分裂って、どういう事よ?」

 アップルは、思考が変なのだろうか。それとも、メール相手が女性と分かると、卑猥な言葉を誘導したがるエロ系の人なのだろうか?

 華雅里は、メールの返事をやめようと思った。相手が変態なら、下手に返事をすると何度もメールを送信してくるようになるからだ。授業を受けながら返事をどうするか考えたが、授業が進むにつれ、メールの事はどうでもよくなり、帰る頃にはアップルの事はすっかり忘れてしまっていた。

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