第5話
華雅里はアップルからのメールを読んで不思議に思った。
ドウイなんて国、聞いた事がないよ。前に国名と首都名の書き取りテストをしたけど、無かったし。
疑問に思ったものの、アップルとのメールのやり取りが楽しくて、浮上した疑問の事などすぐに忘れてしまい、華雅里はまたすぐにメールをした。
私が住んでいる所はビルが多いです。
アップルさんが好きじゃない喧騒もあります。
便利な物もいっぱいあります。
必要のない物もいっぱいあります。
街にはいろんな物が溢れています。
でも、アップルさんが好きな自然はありません。
木が一定の間隔で植えてあるくらい。
アップルさんの事を聞いてもいいですか?
男の人ですか?
女の人ですか?
何歳ですか?
働いていますか?
ドウイと日本との時差はどのくらいあるのだろうか。
もしかしてアップルの就寝時間帯ではないかと、華雅里はメールをしてから思い、睡眠の邪魔をしていないかと心配したが、次のアップルの返事もすぐに返ってきた。
私は一応男です。歳は二十歳くらい。
仕事はしております。
でも、どんな仕事かは秘密です。
アップルからの返事はきたものの、その内容に華雅里に対しての質問はなかった。
華雅里はメール文を読み終えてから携帯電話の蓋を閉じて机の端に置いた。
アップルの真面目な文章は、華雅里の脳裏に優しい印象で残っている。
アップルは、男性で社会人で二十歳くらい。白人なのか。それとも黒人なのか。もしかするとアジア人かもしれない。
今までいろいろな国の人々とメールをしてきたが、年が近い人ほど相手の個人情報についての質問が多くなる。そうなってくると鬱陶しさを感じてしまうが、質問が無いと逆に淋しさを感じてしまう。
しかし、アップルは違っていた。華雅里が暮らす環境についての質問はするが、華雅里自身についての質問はしてこない。それは今までに無かった感触。
アップルは田舎暮らしといっていたから、個人の事よりも諸外国の事が知りたいのだろうか。
疑問に思えば思うほど華雅里はアップルの事がとても気になり、会う事もないだろうアップルについての妄想が膨らむばかりであった。