第3話
華雅里は、この返事を見て驚いた。ネットシステムが発達し、世界各国の人々と会話が可能な昨今、日本を知らない人がいたからだ。
「なんで日本を知らないの? オリンピックで金メダルをとったりしてるのに……。アップルさんの田舎って、どこなのよ?」
華雅里の口から自然と漏れる言葉。華雅里はその事に気づいてはいない。
華雅里はもう一つ気付いていない事があった。
それは、アップルと名乗る人に過剰なまでの興味を持ってしまった事だった。
小学生からオーシャンに登録している華雅里にとって、どこの誰か分からない相手の対応は慣れているはずだった。なのになぜアップルという人がとても気になってしまうのだろうか?
時刻は十七時半になろうとしている。
華雅里は、時間の流れを忘れてまた返事をした。
私が暮らす日本は、世界の誰もが知る有名な国だと思っていました。
日本は海に囲まれた国です。
ビルもあるけど、山も河もあります。
都市と自然が両方あるとてもいい国ですよ。
今度は、アップルさんの田舎の事を教えてくれませんか?
華雅里は、アップルからの返事を待った。
まだ一分しか経っていないのに、待っている時間がとても長く感じてしまう。
華雅里は、苛ついて携帯電話の蓋を閉じた。
正体不明の相手、アップル。
メール送信あとの返事がすぐにこないのは当たり前で、一回の交流で終わってしまうのもよくある事なのに、それが分かっているはずなのに、華雅里は苛々をどうする事もできなくて立ち上がった。
カバンを持って渋谷駅に向う。華雅里は、自分を苛々させてしまうアップルに見切りをつけて、家に帰ろうと思ったからだった。
「なんか面白くない」
携帯電話をスカートのポケットに入れて歩く。
マークシティの長い通路を東へ歩けば渋谷駅がある。そこから電車に乗り、千歳船橋駅へ向った。その千歳船橋駅の近くに華雅里が住む自宅があった。