第2話
今、華雅里は、携帯電話からオーシャンにアクセスをして、コメントの返事をしていた。
コメントを残す相手も当然サブネーム。サブネームだけでは、華雅里にとっても、相手にとっても、実名どころか性別・年齢も分からない。文章の内容から相手の人物像を想像するしかなかった。
華雅里がオーシャンに登録したのは小学生の時。学校の友人に誘われての事だった。
最初は、学校の友人のみでオーシャンを利用していたが、華雅里の成長に伴い、現在は世界各国の人々と意見交換ができるほどになっていた。
そして、高校二年の九月に入ってからである。
華雅里のところに、奇妙なコメントが入るようになった。
誰なのか分からないあなたへ
あなたの言葉は、心地よい感じがします。
わたくしの想像ですが、きっとあなたは、とてもよい環境で生活をされていらっしゃるのでしょう。
あなたは、どんな環境で暮らしているのですか?
差し支えなければ、教えて下さい。
コメントは英語だった。とても丁寧な言葉遣いを見て、華雅里は、相手は英国人ではないかと予想した。
華雅里が暮らす時代では、英語は公語として使用されているため、誰でも子供の頃から普通に英語を使用する事ができた。
華雅里も英語で返事をした。
初めまして。
ミサキです。
コメント有難うございます。
今後はサブネームのアップルさんとお呼びしていいですか?
私が暮らしている環境を知りたいとの事ですけど、私は日本人です。
これでどんな環境なのか想像がつくと思います。
アップルさんは、どこの国の方ですか?
もしよかったら教えて下さい。
ミサキとは、華雅里のサブネームである。
華雅里が返事をすると、返事はすぐに返ってきた。
あなたはミサキさんという名前なのですか。
初めて聞いた発音なので驚きました。
世界は広いですね。
教えて下さった日本ですが、わたくしは田舎育ちなので、日本を知りません。
日本という発音を初めて聞いて感動しているほどです。
日本を図書館で調べようと思いましたが、私が暮らす田舎の図書館に日本に関する文献はありません。
差し支えない程度でいいので、日本について教えて頂けないでしょうか。