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happy ending  作者: 雨木うた
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子供

就職先は地元で有名な会社で、両親は近所の人や知り合いに私がその会社に就職した事を自慢気に話していた。

私は自分の事を自ら考えて決めるのを全てやめていたからどうでもよかった。無難に会社に勤めながら日々を過ごしていた私の体調はますます狂っていったし、本以外の楽しみは無かった。

仕事が休みの日は1人で車で県外に行き本を読んでいた。この頃の両親は私に男の気配がしないのを危惧したのか、しきりに見合いをさせようとしてきていたから休みの度に車で県外に逃げていた。

とにかく両親と関わりたく無かったが、 情けない私は家から離れて自立する勇気も気力もなかった。

「可哀想な」自分を甘やかしていたのだ。愚かしいことだが。

だが、あの両親がそんなぬるま湯のような状態を見逃す訳がない。

私が仕事が休みの日を両親に知らせずにいたら、会社に連絡して3ヶ月後までの休みを聞き出していた。ぞっとした。そこまでやるのかと。

自分の考えが甘かったのも痛感した。

結局両親の思惑通り、見合いする事になった。

相手は隣町の人で同年代、三男との事だった。見合いの席で相手の顔を見た時に「この人と結婚して子供つくるのか」とボンヤリ思った。

相手に対して好意も嫌悪も無かった。ただ単純にそう思っただけだ。

両親は始終笑っていた。

後日、相手方から見合い受諾の返事があり初めて男性と「お付き合い」とゆうものを経験した。

何が何だかよくわからなかったが、相手は私を気に入ったらしく翌夏に結婚したが私の名字は変わらなかった。

次の年の冬には子供を産んだが、

特別好きな男の子供ではないが、間違いなく自分の子供だと思うとお腹にいる頃から自然に愛おしく大切になった。

不思議なもので妊娠初期から「普通分娩は出来ないのではないか」と考えていたら出産途中で緊急帝王切開になった。

この時、医師看護師約10人の前で全裸にされたが私はそれどころではなかった。お腹の子供の心臓が停止したからだ。電気ショックで心臓は再び動きだしたが私はパニックになり全裸で手術台の上から「早く子供を助けて下さい!」と叫んでいた。

緊急帝王切開でも家族のサインが必要で偶々居合わせた夫がしてくれたらしい。

子供は何とか産まれた。可愛い女の子だった。

夫が双方の親に子供が産まれたと連絡したらしく、翌日親達は子供を見に来た。

その時母が術後で管だらけの私に「普通に産んであげれないなんて子供が可哀想ね」と夫の母に言った瞬間、初めて親に対して殺意を抱いた。

明確で強烈な感情だった。

この時代は1度帝王切開すると次も帝王切開だったし回数も3回までが限度だった。

だから私は仮に次出産するとしても帝王切開以外に選択肢がない。

その私に、産後1日しか経過してない状況でこの発言は無神経すぎる。しかし夫の母も「そうねぇ」と同調し夫も黙って聞いていた。

あぁこの人達とは思考が別で、別の人間だから私の望む言葉を言うわけではないから仕方ないと無理矢理思ったが、義母そして夫に対して初めて嫌悪を抱いた。

子供の名前は私が考えていた名前をつけた。春が芽吹く季節には少し早いけど、そうゆう意味の名前にした。


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