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happy ending  作者: 雨木うた
3/7

保護者とゆう名の支配者

学校から戻ると家には私1人。

洗濯物を取り込み畳んで夕食の支度を始める。

時々、両親の居ない時間に祖母が電話をしてくれたり祖父がこっそり会いに来てくれる事だけが安心出来る時間だった。

引っ越してから子供部屋として個室を与えられたが私は嬉しくなかった。祖父母の居ない家に1人ぼっちの部屋など苦痛以外なかった。

新しい学校も表面的には穏やかに過ごせたが親しい友人はいなかった。

ある日、私は朝から腹痛で体調が悪く学校を休みたいと母に言ったが、「あんたが休んだら私まで欠勤しなきゃならなくなるから登校しなさい」と言われ痛むお腹を押さえ登校した。

午後の授業が終わり「やっと帰れる」と帰宅し、いつもより早めに夕食の支度を終えお風呂の支度をしていたら珍しく母が先に帰宅したのでお湯の番を頼みトイレに行ったら下着が血塗れだった。学校でトイレに行った時は何もなかったのに何故下着が血塗れなのかとパニックになった私は母に「下着に血がたくさんついてて怖い」と伝えたら、母は「下着をこんなに汚して!」と怒った。

私は訳がわからず呆然としていると、母が「生理よ、全く大袈裟な」とさらに怒られた。

父が帰宅すると母は父に「この子生理が始まったみたい」と告げ、父も「そうか」と言いながら晩酌を始めた。

私は混乱する頭で必死に考えた。

下着が血塗れなのは「生理」で病気じゃない、でも下着に血が付いて母は怒ってる。

どうしたらいいのかわからなかった私は隠れて祖母に電話した。祖母は処置の仕方を教えてくれ「おめでとう」と言った。

意味がわからなかった私は「良い事なの?」と祖母に聞いたら、普通はお祝い事なのよと教えてくれた。

電話を切った後、目の前が真っ暗になった。両親と3人だけで住む生活になり、私は無意識に両親に期待していたようだ。祖父母ほどとはいわずとも少しは私を「子供」として気に掛けてくれるのではないかと。今の3人だけの生活で両親が私に無関心なのを再認識しただけだったが。

そして気付いてしまった。

今の私はこの2人に見捨てられたら普通に生きていく事が出来なくなる事に。

祖父母は元気だか年齢が高いし離れて暮らしている為すぐ助けを求める事は今は出来ない。電話するのが精々だ。

両親が、この2人が、私の絶対的な支配者なんだと理解した日だった。

心身の不調は悪化していく。

特に家に居る時に。

父が癇癪をおこして物を投げたり怒鳴ったりすると動けなくなったり息苦しくなったりお腹を下すようになった。

夜は日付が変わってからやっと少し眠れる程度で、よく鼻血が出るようになった。

母は怒鳴ったりはしなかったが、その時の気分で私に対する態度を変えるので相手するのが疲れた。

祖父母ともなかなか会えず電話もほとんど出来ない生活が数年続いた頃には私は本ばかり読むようになっていた。現実が苦しいなら本の中で楽しむしかなかったから。

夜はいつもなかなか眠れないからその時間に本を読んでいた。

本代は中学生になって初めて貰った小遣いで買っていた。

1ヵ月2000円の小遣いは全て本代になり、読む本が足りない時は市立図書館や学校の図書室で借りて読んでいた。

他に楽しみが無かったから。

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