親の心子知らず
あたしは美織のことを大人に相談しようと思った。
仕事をし、家事をし、育児をしていたとしても……あたしはまだ子供だ。
ついこの間まで世間知らずの高校生だったのだ。
身体は大きくなって大人と同じような外見をしているが基本的には知っていることは少ない。
だから……自分の手に負えない話は周囲の大人に力を借りる必要がある。
『もしもし……』
あたしが相談しようと思ったのは両親だった。
夕凪がお腹にいることが分かった時……。
最初は戸惑い、怒っていたものの、あたしの両親は時経つうちに理解をしてくれた。
だから難しいことは両親の相談しようとあたしは心に決めたのだ。もちろんいつまでもそれではいけないのだろうけど。
『そうなの……』
『うん。一応、自分一人では言いに行きづらいだろうから、あたしも一緒に行こうと思って』
『それはいいことだと思うけど……嫌なことも言われるかもしれないわよ』
母親はあたしに言った。
確かにそうかもしれない。
子供を産んで高校を中退したような友人が一緒に来て、自分の娘の妊娠を知る。
相手の男は来ない。
そりゃ……パニックになるなという方が無理だし、あたしを見て『あんたとうちの子は違う』と思うかもしれない。
『うん。なんとなく言われそうなことは分かるつもりなんだけど放っておくことができなくて……』
『そうね。それは分かるわ』
『お父さんにも相談したいんだけど、明日、顔出していい?』
『ふふ』
不意に母親が笑ったのであたしはびっくりした。
『どうしたの?』
『いや……春海ちゃんがお父さんに相談だなんてね……』
『そうか……前は話もしなかったもんね』
『そうそう』
『あたしね。夕凪を産んで分かったの。この世の中で一番あたしのことを思ってくれているのはお父さんとお母さんであるってことが……』
『そう。ありがとう。お父さんもその言葉聞いたら喜ぶわよ』
話を終えてあたしは携帯電話を切った。
あたしにとって何よりも大事なものが夕凪であるのと同じように、両親にとって何よりも大事なのは娘であるあたしなのだ。世の中には例外もあるけど、大抵の親は子供を愛おしく思っている。
『親の心、子知らず』という言葉……。
大きくなってある程度なんでも自分で判断できるようになってしまうと、いつしか親のありがたさを忘れてしまう。
大人になった気になって性急に判断すると失敗する。
両親というのはありがたいものだ。




