俺が賢者だった時の、仲間との冒険の日々
随分と長い時間を、この4人で過ごしてきた。
[勇者][武闘家][踊り子][賢者(俺)]
彼らと出会ってから、もう6年が経とうとしている…
俺の冒険は、勇者から声を掛けられてスタートした。
「よっ!俺、勇って言うんだけど、名前は?」
「おっ、俺は賢治」
「賢治、ヨロシクな!」
「お、おう」
中高一貫校での入学式が終わり、緊張感が漂う教室で勇は俺の前に座っていた。サッカー部に所属していた勇を、俺は毎日図書室で待って一緒に帰った。勇は、言葉に出す事は無かったが、チームメイトとはどこか一線を引いていた。
ある日、二人で歩いているとガラの悪い奴等が現れた!
「オ〜イ!金くんねぇ?」
相手は3人。きっと足が速い勇だけなら逃げて回避出来たのに、俺が居たせいで…勇は俺の前に立ち、彼らと対峙した。
「金なんかねぇよ!」
その場に緊張が走った瞬間、俺の後ろから声が聞こえた。
「おっ!ナニナニ?喧嘩?俺も仲間に入れろよ!」
俺の前に出てきた武闘家は、そこに居た誰よりも身体が大きかった。
「今日、すんげ〜嫌な事あったから会心の一撃かますけど…いい?」
その言葉に、奴等は逃げ出した。
「ふん!大した事ねえ奴等だなぁ…確か、お前ら1組の…」
「俺は勇、こいつは賢治。ありがとな!」
「おう!俺は、武士。2組で空手部。ヨロシク!」
「ねぇ!武士!」
物陰から踊り子が出てきた。
「もうホント、喧嘩とかヤメてよ!」
「あっ!ごめん。ごめん。こいつは、幼馴染みの舞子。こいつは3組で演劇部」
「勇さんと、賢治さんね。はじめまして!」
舞子の笑顔に、俺は一瞬で心を奪われた。
「あっ!別に俺たち付き合ってる訳じゃないから。こいつも、一度奴等に絡まれてさ…その時から、用心棒として一緒に帰ってやってるだけ!」
「『もう大丈夫』って言ってるのに、ウチの両親が武士くんに…だから、変な噂立てないで…」
「ハハッ、そんじゃ、これからは4人で帰ろうぜ!そしたら変な噂も立たねぇし…どうよ?」
勇の提案に、武士と舞子は顔を見合わせて「いいね!」と、笑顔で答えた。
それから、今日までの6年間をいつも4人で過ごして来た。
勇が孤軍奮闘したが勝てなかった予選大会
武士が準決勝で拳を痛めて決勝に立てなかった大会
舞子がヒロインとして輝いていた最後の文化祭
俺が講師となって喫茶店で開催したテスト勉強
そして、センター試験と言うラスボスに全員で挑んだあの日も…
俺は仲間の中にいた。
4人で過ごした冒険も今日で終わりだ。
これからは別々のRPGが始まる。
そこでは新しい仲間に出会うだろう。
その時必ず、4人で過ごしたこの経験値が役に立つだろう。
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②『トカゲ』と『おっさん』。時々『彼女』
③俺がオヤジの後を継いでダンジョン経営するなんて…
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