【4時間目 冷徹姫の溶かし方】 村人Aの誘い方②
【サイネリア】
登校初日。
教科書を校門で受け取るだけと考えていた生徒だけだったため、金銭面的に遊びに行ける人数が限られてしまい、早乙女、久喜、天塚、天塚と同じ中学の衛宮優華の4人という寂しい結果になってしまった。
「アタシも来てよかったの?」
「全然、女子が増える分にはオレは大歓迎だ」
空気を読む衛宮と、分かったうえで笑う久喜。
それを見ながら早乙女と天塚は話していた。
「で、実際のところ星宮さん狙ってるの?」
「やっぱりそういう勘違いになるよな。たしかに見た目では凄い好みだな。一目するレベルだ」
「じゃあ、声かけてよかったじゃない」
「おう、俺の栄誉を讃えてくれ。讃えて慰めてくれよ。村人Aがお姫様に声を掛けたんだ。どこぞの王子でも出てこないなら万々歳だ」
大袈裟に両手を広げリアクションを取る早乙女。
どうにもこの年代での話題は恋愛物が鉄板。
早乙女とて興味がないわけではないが、自分に矛先が向いていない場合に限ってだが。
「おーよしよし。ならばこの美少女、天塚紗季さんが拾ってしんぜよう」
「紗季も美人だけど遠慮しとくわ」
「あら残念。あ、皆メニュー決まった?」
適当なメニューを頼み、運ばれてきたものを口に頬張る。
「そういえば見た?教科書と一緒に渡された紙」
「見た見た。クラス選抜サバゲ―でしょ。それで再来月修学旅行のグレードが変化するんでしょ?」
嬉々として衛宮が取り出してきたのは1枚の用紙。
《クラス選抜サバゲ―》
クラス内だけじゃなく交流を深めていこう!
【ルール】
・クラス内で5人代表で参加してください。
・1学年1~6組全クラスでのバトルロワイヤル方式。
・5人全員が倒れた段階で脱落。
・1位のクラスから豪華特典を進呈いたします。
・再来月の修学旅行でグレードアップがあるかも?
・当日まで罠を仕掛けるのは禁止!
「夢があるわよね」
「クラス内で誰が何を得意か把握できてない状態だからな」
ドリンクバーで謎ジュースを生成した久喜が戻りながら会話に混ざる。
サバゲ―。本来は仕切られたフィールド内でBB弾やペイント弾を用いて、闘うサバイバルゲーム。相手を全滅させる殲滅戦、特定の場所に置かれた旗を先に取るフラッグ戦などあるが、今回は前者だ。
必要なのは敵を逸早く見つける方法と誤射しないための連携。
「誰が参加して、負けた場合の責任を負うかだな」
「安心しなさい伊織。間違いなくアンタが選ばれるわよ」
「だと思うよ。《冷徹姫》に挑戦して敗れた村人なら生贄にはピッタリだろ」
半ばクラスの人柱が確定した早乙女。
「まじめな話。クラスの連中と話せた?」
「私は伊織のおかげで」
(俺が自転車で衝突しなくてもギリギリだっただろうが)
「オレは結構喋ってたけど、当たり障りない感じだったな」
「アタシは女子ばっかりだったな。途中から久喜君とこに混ざったけど」
クラスでの情報集めは明日からという結論でまとまり、腹を満たして当初の目的であるゲームセンターに向かう。
【スペースドラゴン】
学園近辺に建てられた複合遊具施設『スペースドラゴン』。
UFOキャッチャーやシューティングゲーム。コインゲームなど幅広い層をターゲットにしており、中には温泉宿泊施設も完備。学生が少し贅沢するならここで十分賄えるようになっている。
「何からやる?」
「オレはシューティングだな。最近どのゲーム機もスコア1から5位が独占されててよ」
言うなり100円を筐体に入れゲームを始める久喜。
早乙女達3人は近くにあった自販機で飲み物を購入し、それを見物する。
「アタシ、シューティング系ってやったことないのよね。ゲーセン来ると大体プリクラかUFOキャッチャーだし」
「私は少しやったことあるけど。伊織は?」
「やったことあるけどレコードなんて数回しか取れたことないな。しかもコンテニューありで」
よっぽどやりこんでいる人でもなければ敵の出現や攻撃のパターンを回避することはできず、初見で行えるなど、そうそういない。
久喜はやりこんでいるタイプだが、序盤のパターンは理解できているものの、一定のステージを超えてから苦戦し、残基も残り1つ。
「うぉぉぉぉぉ」
残り残基から自棄になったのか、残った弾丸を撃ちまくる久喜。
「私達も何かして遊ぶ?それか入学記念にプリクラでも撮る?」
「いいね。アタシめっちゃプロよ。みんなで100円ずつね」
久喜がゲームオーバーになったところで、天塚が強引に腕を引きプリクラの機体の中に入る。
ほぼ同じ厚さの学生鞄を荷物置きに置いて、配置につく。
<全力笑顔でピース>
ポーズを要求され、女子達がノリノリで、男子は恥ずかし混じりでポーズを取る。
その後も数枚のポーズを取り、出てきたプリントシールを四分割に切る。