表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/29

夜の途中

 ヴァンパイアが外に出たいと言い出したので、大晦日の夜に車を出した。田舎と言うほどでもないが、やはり田舎なので、普段より人通りは少ない。


 ふとミラーを見て気づく。設計ミスじゃなかった。愛車をなで回して謝りたくなる。ヴァンパイアを助手席に乗せていると、ミラーが変だ。時々、何と言うか、歪んでいるように見える。


「ねえ。鏡、だめなの?」


「あ。いってなかった。ちかくにいるとときどきなる。わたしはわれない、ゆがむほう」


 首をかしげる。鏡が割れるタイプと歪むタイプが存在する? ますます謎だらけだ。割れるタイプはさぞ生活し辛いことだろう。


「今後から鏡、見てみようかな。どのくらい歪むんだろう」


「あんまりみないほうがいい。つきにとんじゃうらしいから」


 よくわからない言葉が出てきたが、とにかく、歪む鏡を眺めるのはおすすめしないとのこと。たしかに、それが趣味と言われたら不健康な感じはする。


「あと聞きたいことがね」


「なあに?」


 なに、じゃなくて、なあに、だって。横に並んで声だけ聞いていたら幼い子どものようにも感じる。ヴァンパイアは、じっと見れば、大人の女性に見えるのだが。


「私にくれたアミュレット、あれは何でできてるの? 銀が黒ずんだみたいな微妙な色合いだけど。それと、あなたの名前も聞いてなかった。あなたたちの仲間のこととかも聞いてみたい」


「あみゅはち、わたしのち。わたしのなまえ、みしぇる。わたしたちはあんまりつながらない。どうるいのことは、ろどりすってよぶ。たしか、あかいみずのいみ」


「ミシェル?」


「うん」


 血。ミシェル。ロドリス。うーん、わからん。考察しようとかいう気はないし、血をあげるだけで深く関わるつもりもないが、ヴァンパイアは、ミシェルはどうにも放っておけない気にさせる。私にそれを言った人も、こんな気持ちだったのだろうか。


 夜の真ん中を、あてもなく走る。そういえば太陽は平気なのかと聞こうとしたが、ミシェルの寝息が聞こえてきて、やめにした。夜行性というわけでもないらしい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ