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明日が来ない証明

 私が床に膝をついて、その人は我に返ったように私から距離を取った。きつく目を閉じ、まばたきをする。生きてる。


「ごめん」


 震える声が謝罪を告げた。


「ごめん。ごめんなさい。わたし、ごめん、ごめんなさいごめんごめんなさいほんとに、きみ」


「大丈夫だよ」


 私の一言は聞こえたのか、届かなかったのか、その人は謝罪を繰り返した。私もその分だけ大丈夫だ問題ないと答えた。


 割れたコップを片づけて、見えない破片はシャワーで流す。


「チキン食べていい?」


「いいよごめん」


「この後どうする? 結局雨降ってるし、泊まってく?」


「でてくありがと」


「どういたしまして。また何か困ったら来て。チキン食べてなかったら、血あげるから。そうだ、他にもだめな食べ物あるの?」


「あんこ」


 なるほどそれはただの好き嫌いなのでは? 死に至るアレルギーがないならいいか。それに、苦手な食べ物の申告があるのは、また頼るつもりを持ってくれているからだろう。野垂れ死ぬ心配はしなくてもよさそうだ。


 その人は宣言通り、すぐに出ていく旨を実行した。私はリビングに戻り、チキンを食べた。左腕を心臓より高い位置にあげながらという不格好さに、自分で笑う。傷は簡単には塞がらない。深い。肌を伝う血を舐めてみた。

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