表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/29

よるのあと

 ミシェルと過ごすはずだったホテルで夜を明かす。朝焼けが涙を誘った。酒が入っているせいかもしれない。眠くならないのも、私が変わってしまったせいか。ミシェルを殺したからか。朝焼けが、ミシェルの瞳の色をしている。


「それで」


「なんだ?」


「私、あなたの組織の仲間になったつもりなんてない」


「あのヴァンパイアは何と?」


「たしか……世界を支配しているつもりの組織だと」


「……まあ、木っ端はそうだな。はじまりの男が利用するためにかき集めた無能の馬鹿共だ。結局、私とはじまりの男しか、ヴァンパイアを殺せる者はない。今は、なかった、と言うべきだが」


「何人殺せた?」


「世界中探しても、死にたがりのヴァンパイアは少ない」


「……何人生きてる?」


「私と、はじまりの男が、殺せずに傷つけたのは、世界中にあと二人。まだ生きていれば、だ」


 すでに誰かに出会って、その誰かに殺されているということもあるかもしれない。


「そういえば、あなたの名前を聞いてなかった」


 ブランカニエベスは黙った。私が勝手に呼ぶ白雪姫を、それでいいと聞き流してきたブランカ、ハンター。それでいいということは、それではないということ。


「それは必要か?」


「いいえ、必要ではない。ただ、ともにいるなら、呼び名はあったほうがいいかと。何でもいいなら、今まで通りにする」


「ブランカでいい。お前は?」


「そう、じゃあ……私のことは、クルスとでも呼んで」


「十字架か」


「……そうかもね」


 栗栖理香リカ・クルス。私の名前。そういえば、ミシェルには結局、名乗っていないのだった。だから、当然、呼ばれたこともない。なぜ、名前を言わなかったのか、思い出せない。何も理由があったわけではないのに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ