君を滅ぼす星
コンビニで新発売の炭酸ジュースを買っていると、後ろから伸びた手がレジのカウンターにカップラーメンを置いた。
「……ええと、お会計は、ご一緒でよろしいですか?」
何でだよと店員を見ると、彼女は私のななめ後ろを見ていて、そういえばこの店員は前にハンターがここの駐車場でカップラーメンを食べた時の店員だと思い出した。後ろには、案の定。
「一緒でいいぞ」
「仲良くない人にたかるのやめた方がいいんじゃない?」
「仲良しだろう?」
「しいて言うなら、友だちの友だちの友だちかな……」
他に客がいないとはいえ、レジでいつまでも揉めるわけにもいかないので、出した小銭を財布に戻して千円札を出し直した。
「待て、お前が出すなら他にも持ってくる。待ってて」
「……すみません」
ご面倒をお掛けしまして、と店員に謝った。カップラーメンが並ぶ棚に駆けて向かったハンターに、店員も苦笑いで言う。
「お湯、確認してきますね」
「ありがとうございます。ちょっとねえ、ブランカ、ラーメンここで食べる気なの?」
「食べる! お、新発売!」
遠慮という言葉が脳内辞書に載っていないのか、あるいはさっきのカップラーメン一つというのが遠慮の結果だったのか。私が金欠でもなく、むしろ今は何もかも捨ててしまいたいという流れであったこと、ハンターは読みきっていたとでもいうのか。
どうでもよくて。
カップラーメンが二つ三つ積まれて、会計に至る。店員はふにゃりと笑いながら、お湯の用意がある旨を告げた。ハンターはまったく気にした様子もない。
駐車場で、ハンターは前と同じようにカップラーメンを食べはじめる。一つ目はとんこつ。
「何しに来たの?」
「何って……」
言いかけてハンターは麺をすするから、待つ。私も自分用に買ったジュースがある。というかジュースがそもそもの目的だったのに。待ってもハンターは食べ続け、結局完食まで待った。
「本当のことを言おうと思って。本当というか、これはきっと誰も知らないことで、一応言っておいたほうがいい可能性だ。お前が死にたいなら、お前に不利益だ、けしかけておいてだが、もしも本当にお前があいつを殺したら、お前は……お前は私になる」
お前は私になる。
どういうことか反射的に尋ねようとした私は、自分で考えることを放棄して上から落ちてきたものに文句を言いながら従う影と同じだった。
お前は私になる。私が死にたいなら不利益。つまり、ミシェルを殺せば、私が不死になるのか。なるほどそれは、人魚の肉を食べるより手近でお手軽な方法だ。




