表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/29

病まぬ雨

 カッターナイフとミネラルウォーターと絆創膏を買って、車に戻った。その人はおとなしく私を待っていて、私と目が合うとホッとしたようにかすかに笑った。


「お待たせ。ここでいい? 雨が降りそうだから、車に乗る?」


「くるまよごすかも」


「あー。じゃあ、うち来る?」


「いいの?」


「おなかすいて、お金も無くて、帰れないなら。とりあえず」


「ありがと」


「じゃあ、乗って」


 鍵を開けて、助手席を示す。運転席と助手席しかないので、迷うこともないだろう。


 車に乗り込んだその人に、買ったものを押し付けて、私も運転席に座った。エンジンをかける。

 そのまま車を出そうとしたところ、その人が嫌そうな顔をしていたので、チキンの袋だけ受け取ってドアのポケットに入れた。窓も開けた。これで匂いは大丈夫?


「大丈夫?」


「うん。にわとりきらい」


「ああ、鶏か。てっきり、にんにくがだめなのかと思った」


「さいきんたべた?」


「これ食べたら三日ぶりかな。でもたまごは今朝食べた」


「たまごへいき」


 私がチキンを食べた後だったら、私の血はいらないと言われていたのだろうか。ここにないもしもを考えても意味がないので、今は家に帰ることにしよう。


 助手席に誰かがいるのは、普段と違って、慣れない。見える視界が違う。左のミラーが見にくい。この車はきっと設計ミスだ。見た目買いした私も私か。


 車内は静かだった。名前を聞いていいのか、名乗るべきか、迷っていた。雨が降りだした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ