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美しい魔法

 キリエさんは一呼吸置いて、髪飾りを外してこたつテーブルの上に置いた。


「これが何から出来ているか、ご存じでしょうか?」


「私のこれと同じなら、ミシェルは自分の血だと言ってた」


 指で示して答える。お守り。アミュレット。


「形状については?」


「それは何も」


 なぜ十字架であるのか、私は知らない。ヴァンパイアだと思っていたから、そうなる前にはそのあたりの宗教に敬虔な信者だったかもしれないなと推測する程度だった。今は、彼女たちがどうあってロドリスになるのかもわからない。生まれつきなのか、否か。


 キリエさんは続ける。


「これは、血からできています。誰かを守ろうとしたときに球体としてあらわれ、その形状を変えるには、きずなという繋がりが必要になります。私のお友だちは、私に親愛を示し、ゆえに牡丹を削り出すことができたのです」


「私は、はじめから十字架の形でもらったけど……」


「もちろん、我々が自らの血からできたそれの形状を変えることもできます。ですが、これは誰か、守りたい誰かがいるときに作るもので……いえ。もうひとつ、もうひとつのお話もしなければ」


 話す中身が纏まらないのか、キリエさんはうつむいたり、首を振ったり、やがて私を見た。


「きずなは、我々を殺すことができるのです」


「殺す?」


「我々ではなく、誰か、私のお友だちのような誰かが、これの形状を変える時、変えるほどのきずなを繋げた時、これは、我々を殺す凶器になり得るのです」


「えっ、えっ? 待って、前提としてあなたたちは不死なの?」


「はい。基本的には。我々は不老でもあります。私はもう何百年もこの姿で、困っていたのです」


「それは……大変だね……」


「いえ、おかげでお友だちに出会えたので、今はよいのです」


 ほんのりずっと思っていたけど、キリエさんのお友だちさんは危ない人ではない? なんかこう、ノータッチを掲げている系の。

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