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不確実な目眩

 夜、車で走っていると、時々思う。アクセルを思いっきり踏み込みたい。対向車のヘッドライトの明かりに頭から突っ込むように破壊し尽くしたい。なぜか、自分が死ぬとは思わないで考える。

 不思議だ。死にたいとしか言いようがない妄想をしながら、死ぬとは思っていないなんて。


「年が明けたよ」


 ミシェル。


 呼びかけてみたが、ミシェルは眠りから覚めはしなかった。寝顔も美しくて、その前髪をかきあげようと手を伸ばしかけて、止める。触れようとした。触れて、どうなるわけでもないのに。


 意味もなく、ふらふらと、小さな町の中を車で走り回る。同じ道、そうでなくとも同じ交差点。誰もいない。正月でなくとも、真夜中でなくとも、夜八時を過ぎれば人も車も少なくなる町だ。


「きりえ?」


 ミシェルが何かを呟きながら、微睡みから起き上がってきた。様子を見ながら、それでも前を見て、周囲に目を配りつつ、車を走らせる。すると突然。


 それが何かを確認する前に、後続車も確かめずに、ブレーキを踏み込んだ。強く踏んで、車はそれに激突する前に停まった。


「きりえ」


「何?」


「あれ、しりあい」


 ミシェルが指差したのは、ヘッドライトに照らされて闇に浮かび上がる少女の影。私からは、突然降ってきたように見える人影。

 音がしなかったことから、幸いに、ぶつかってはいないと思われる。轢いたわけではない。彼女は立って、こちらを見ていた。白い雪のように、髪が舞った。

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