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人魚姫は繰り返す  作者: 久夜
そして、すれ違う
6/7

運命はいつでも残酷で




打ち付ける雨と風の強さに体が悲鳴を上げても。

抱えた生命の重さに腕が軋みを上げても。


離すものかと。

この人を離してたまるものかと。

ただただ必死に、貴方を抱きしめていることしか出来ずに



そうして気が遠くなる程何時間も経った後に



ようやく嵐は止んだ。




ホッとしたのも束の間で、徐々に冷えて呼吸がゆっくりとなっていく彼に気付き、慌てて私は陸へと泳いだ。


お願い間に合って。

彼をどうか誰か、救って。


祈りながらようやく着いた岸辺に彼の体を横たえると、白く生気のない頬を見て体から血の気が引くのを感じた。



ああ、人間とはこんなにも弱いのか。

愛しい人の生命の灯火が消えようとしている。


私はこんなにも愛しい人の命を救うことも出来ないの。

気付けば頬を濡らした涙が滑り落ちて、彼の額に落ちる。



もう、二度と叶わなくてもいい。

瞳を交わすことがなくても、言葉を交わすことがなくてもいいから。


だからお願い、生きて。


生きていて。




そう願ったその時、誰かの足音が砂浜を軋ませる音がした。


誰かが来てくれたとハッとして、私は慌てて岩場に隠れた。


お願い気付いて。彼を助けて。




その祈りが通じたように



「王子!しっかりして下さい!」




走って来た女性が、彼を抱き上げ連れて行ってしまった。




ああ、よかったと。


彼はきっとこれで助かったと。


ただただ安堵に満ち溢れて溢れる涙をそのままに私は泣いた。




それが、悲しみの始まりだとも知らずに。








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