表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人魚姫は繰り返す  作者: 久夜
そして、すれ違う
2/7

それが恋だと気付いたのは




なんて素敵な人なんだろうと、

初めてあの人を見た時私はすぐに心を奪われた。




生まれてからずっと、どうやって息をしているのかは分からないけれど

私は海の底で産まれて、そこで生きてきた。



きっと陸の上で生きる人間という種族からは幻のように噂されている、人魚という生き物。

それが私だった。



沢山の姉さん達と、優雅な魚達と、静かな海を泳いで戯れる毎日。

それは時の流れを遮断した、ただただ穏やかな日々。

それが幸せだったし、姉さん達に可愛がられて楽しく過ごせていた。




けれどあの日、禁止されていた陸に上がってしまった、あの時から。



私はずっと、人間になりたかった。





幼い頃から、母親代わりのように私を育ててくれた姉さん達が、昔から言い続けてきたたった一つのこと。



それは陸に上がって人と関わってはいけないということ。



その昔、人間にその姿を見られた人魚が、人魚の肉を食べると不老不死になるなどという人間の迷信から根絶やしにされてしまったという悲惨な過去があった。




人とは恐ろしい化け物だ。

人魚にとっては天敵であり、畏怖の対象であると。


それから人魚達は人を憎み、人と関わることを拒絶してきた。



小さな、まだ物心もつかなかった頃からそう言われて育ってきた私は、人間とはただ凄惨な生き物だと思っていた。





ーーーだから、驚いたの。

初めてあの人に会った時、

あんなに優しい目をした穏やかな人間がいるものかと。



禁止されていても、駄目だと分かっていても

それでもあの人を見たくて、一目でもいいから目を合わせたいと願った。



会って、言葉を交わしたい。

その瞳に私を映して欲しい。

手を伸ばして、その身体に触れたい。



堪らなく、胸が締め付けられるように、苦しくて、熱い。



それが恋だと気付いたのは、何回目の生を受けた時だったのか。




それはもう、覚えていないけれど。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ