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0話 僕は時空警察官

 ある日、ふと思った。

 なろうって異世界警察物なくね? と。

 いや、実際あるのかもしれないけど、無いなら自分で書くか、と思い書き始めました(後悔はしてない)


 ここは、ディファースと呼ばれる異世界。


 剣と魔法での圧政時代は、とうの昔に終りを告げ、コンピューターと高度科学技術の力で世界を統治するようになった今。

 人々は恒久的平和と、利便性、快適性を極限まで高めた生活を手に入れることが出来た。

 

だが―――


 ―――なぜ社会がヒトではなく機械での管制を欲したのか、なぜヒトが社会を纏めることを辞めたのか、なぜ、世界はヒトではなく、┃AI《人工知能》を求めたのか。

 

 答えは簡単だ。


 今から約800年も前の出来事。

 ディファースでは、亜人と人類との300年にも渡る長期戦争を終え、戦勝側である人類がこの世界を掌握するようになった。

 

 それから、また300年が経った頃。

 世界では、蒸気機関が開発され、製品の大量生産の可能化、つまり地球同様の産業革命が起きた。

 

魔力に頼らない生活を繰り返し、人類と亜人の身体魔力量は代を重ねる毎に少なくなり、現在では【魔力欠乏症】を産まれながらに抱えた新生児が誕生することも珍しくは無くなった頃。

 

そんな時、ヒト科ヒト目の脳の完全解析が成功し、脳の完全数値化が果たされた。

 それによって、人間と亜人の心理、行動分析が飛躍的に進み、身体の成長度合や、凡そ50年先という制限が有るものの、自分が何時、どのような病を罹病するかなども了知することが出来るようになった。

 それにより、生まれてから死ぬまでの間、一度もレベル2以上の病(胃腸炎、各種生活習慣病、喘息など)を罹病することのない人も現れた。

 最早、現代に生きる人々にとって、病など少しの脅威さえ感じる対象では無い。


 このように、現代人は読んで字の如く快適な生活を手に入れることが出来たが、それは一過性のものに過ぎないであろう。

 なぜなら、科学技術の過ぎた進歩は、人の有りと有らゆる欲望を顕現する為の副産物に過ぎず、それらの主目的、つまり蔑ろにされている部分からは凶器、悲壮、争い事しか生まれないのだ。

 

 事実、進み過ぎた科学技術の進歩は……。

 徹底的な管理社会の成立を為してしまった。


 産業革命から500年の歳月が流れた現在では、自身の歩むべき人生、生活習慣を管理、推薦され、自身の可能性、才能の完全数値化、例によるヒトのステータス化が完成。

 

 この技術の事を人々は【L・M・Sライフ・マネージメント・システム】所謂、生活管理システムと呼んでいる。

 この技術の開発により、人々は自身の将来を不安に思う事なく、自身の人生に何も難しく考える必要もなく、紆余曲折の人生を過ごさず、何もかも【LMS】に判断を任せて、悠々自適に生活を送ることが出来るようになった。  


 学校卒業時など、様々に思いを馳せ、家族と話し合い、自分自身に自問自答を繰り返し悩みながら進路を決めたり、適正は一見低そうに見えても憧れや好意からによる将来の夢の選択、そしてそれに向けて多少狭き門でも邁進すること。


 そんなことは、もう、しなくていい。


 なぜなら、【LMS】が全て教えてくれるから、全て自分を数値化してくれるから、自分を最も効率的な人生に永遠に導いてくれるから。


 『【LMS】はいつも貴方の側で……』


 そんな謳い文句と共に、【LMS】は急速に普及、現在では生誕した瞬間から脳内の電気パルス信号を読み取り、サーバーにそれを送信可能なマイクロチップを首元に埋め込まれる。

 それを元に、身体の頭の先から足の爪までの解析、管理が始まる。

 つまり、ヒトは産まれながらに『管理』されている現状なのだ。


 しかし、この技術の開発によって不自由も幾つか発生した。

 その一つというのが、職業選択の自由など微塵も無く、限られた適性の中から、人生の歩みを選択肢形式で一つを選ぶ、というものだ。

 管理社会の欠点である、『不自由さ』が人々の不満を煽ることになるが、それと引き換えに超安全的な治安、交通事故が起こる事のない交通社会などの実現の甲斐もあり、内乱の発端には未だ至ってはいない。

 

 そして、約5年程前、ついに管理社会の末路、と言っても過言ではない技術革新が起きた。

 

 【M・R・Tメモリー・リライト・テクノロジー】(記憶改竄技術)の誕生と、

 【S‐TTT(スペースタイム・トランセンデンス・テクノロジー)】(時空超越技術)略称、エス・トリプルティーの誕生だ。

 

 それらの概要説明は、残念ながら割愛するが、それらの登場により、世界はまたも一変する。

 

 世界最大権力を持つ、時空警察タイムポリスの創設だ。


 時空警察の主目的は、世界の、そして人類の将来をより良くする、というもの。

 因みに【MRT】と【S‐TTT】技術の所有権と特許は時空警察が持ち、時空警察のみが研究、利用できる。 

 

 そんな時空警察の活動内容は、たった一つ。

 人類の将来を左右するであろう特殊指定有力者、有力物の保護。それに伴う、殺人、強盗、などの重大事件が起きてしまった際に―――





 ―――全て、『無かった事』にすること。

 




 『なるほどなっとく! タイムポリスができるまで!』参考文献より一部引用。 



  





  


  

 

 今は、常世、清々しい朝! 


 皆さん初めまして、僕は時空警察、刑事第四課、巡査です。


 いきなり時空警察? 刑事課? 巡査? ってなんだよとツッコミが飛んで来そうだけど、警察官にとって忙しい早朝にそんなことを説明する暇は無い!

 本当は面倒なだけだけど……兎にも角にも、僕は立派な時空警察官なのです。

 でも、警察官で順風満帆な人生を歩んでそうな僕にも一つだけ悩みがあります。

 

 この世界は、世知辛い、ということ。

 そして、早く地球に戻ってお母さんのお味噌汁が飲みたい! という悩みです。

 

 えっ? 地球に戻る? っと言われそうですが、そうです、戻るんです。


 僕はもともと地球生まれの地球育ち、そんな僕が異世界の警察官になり、早一ヶ月。

 そう、今から丁度一ヶ月前、ひょんなことから僕はこの世界に転移してしまったらしい。

 今にして思えば、転移直後、いや就職直後は本当に大変でした。

 吐き気がする程の時空超越訓練に、この世界の法律を全て覚えさせられたり……。

 思い返せば思い返す度に思う、やっぱり時空警察はブラックだよ。

 

 それに僕はそもそも高卒警察官として、9月入校予定の警察学校に向けて、筋トレ(ゲームで指の運動)とか、勉強(漫画を友人から借りて読み漁る)とか頑張っていたのに……。 

 ある日、異世界に飛ばされ、時空警察官になってしまった。

 ん? 何言ってんだコイツ……状態なのは否めないが、僕にだって転移した時のことは訳が分からなかった。

 それに転移した直後、この世界で一番就職が難しいと言われる時空警察に、よりにもよって僕が就職するなんて、本当にどうしてこうなったんだよ!

 

 地獄の研修を終え、そう言えば今日で一週間。

 そんな風にこれまで過ごした一ヶ月を面白おかしくお浚いしている最中。

 また憂鬱な朝が始まるのか、と肩を落としている僕に、今はもうお馴染みのある人物が話し掛けてきた。

 

まもる君は、この期に及んでまだそんな顔をしているのですか?」 


「だってさ! こんなのおかしいよね!? アリサ巡査部長!」


「そうですね。守君の『異世界から来ました、住所不定無職18才、佐藤守さとうまもるです!』とかいう、新人挨拶の方がおかしいですね」


「ぐ、ぐはぁ……またその話を」


 今、僕に話し掛けて来た人は、アリサ・ブルーム巡査部長といって、僕の教育係兼これからのパートナーだ。

 中々の毒舌だが、仕事は完璧に熟すし、責任感と正義感も強く、とても頼れる先輩です。

 驚く事にまだ僕と同い年で、たった一年で巡査から巡査部長に昇級したスーパーエリート警察官なのだ!

 

 まだまだアリサ巡査部長には驚くことがある、それは、滅茶苦茶美少女ということ。

 その容姿たるや、綺麗で生糸のような長い金髪を後ろで一つに纏め、稚気もある整った顔立ちに、清廉さも兼ね備えた青い瞳。

 そしてそしてッ、小ぶりの女性用警察帽を被り、ミニスカート!

 極めつけは、ネクタイが浮いてる様にも見える豊満な胸、正にパーフェクトボディーの持ち主なんだよね。


 今の僕の野望……いや夢は、そんなアリサさんを振り向かせられるようなナイスガイになる事だ。

 いつかきっとアリサさんを手に入れ……いや、振り向かせて見せる!

 目標をゴタゴタ言うよりは、ま、先ずは、通算38回断られている連絡先を交換しないと。

 

 そう思い、39回目のアプローチを僕が仕掛けようとした時、アリサさんは僕の挙動不審さを見て何かを察したのか、僕の一言目を遮り、強引な口調で言葉を放った。


「守巡査、朝礼を始めます」


 アリサさんは年相応の幼さが残る顔で、キリッと僕を睨みつけている。

 はぁ。どうやら39回目は言う前に鉄壁に塞がれたみたいだね。

 

 それに朝礼かぁー、今となっては慣れた行為だけど、お願いだから場所を弁えて欲しいよアリサさん。

 何たって今、僕とアリサさんが居る場所は時空警察の本部前で、右横には国会議事堂、そして左横には【LMS】のメインサーバーである世界最高の電波塔がある。

 勿論、特殊指定区域で一般人の立ち入りは禁止されているけれど、この世界の中心的場所のド真ん中で、毎日朝礼だなんて羞恥心が燻られないほうがおかしいからね。


「おっ、久方ぶりの快晴ですね」

 

 僕は朝礼に対する嫌悪感を誤魔化すように、ビル群に呑まれて尚、微かに垣間見える青空を見る。 

 アリサさんは僕が今言ったことを無視しているが、少し空が気になるのかチラチラと顔を見上げていた、やっぱり可愛い人だねアリサさんって。

 そこから少し視線を落とすと、時空警察の本部だ。地上からでは、最早何階建てか分からない程に高いビル。僕は、今ここで働いているんだ、と見る度にあってないような自尊心が芽生える。

 アリサさんから邪険に扱われ、心が折れそうになった時は、こうして本部を見るに限るよ、自信が少し湧くからね。 


 そうだ、自信を持て! 佐藤守! 

 アリサさんから如何に往なされようと、諦めてなるものか……佐藤守の唯一の取柄、『諦めが悪い』を遺憾なく発揮していけ。

 今から、世界の中心で朝礼を叫ぶんだ!

 僕は吹っ切れたような笑みを浮かべて、アリサさんに言った。


「アリサさん! 早く朝礼をしましょう」

 

「ん? マモル巡査は朝礼をいつも嫌がるのに珍しいですね。折角の快晴なので雨が振らなければいいんですが」


 ヒドいよ! アリサさん! その言い方はあんまりじゃないかな。

 アリサさんは、悲しみに歪む僕の辛辣とした表情を気にも留めずに「では」と前置きを置くと、声高に掛け声を発した。

 朝礼が始まるようだね。

 

「では、マモル君いきますよー。せーのっ!」


 僕とアリサさんは二人同時に本部に向けて、高らかに敬礼を捧げ、朝礼を叫ぶ! 


「「時空警察タイムポリス刑事第四課、本日も職務を全うします!!!」」


 瞬間、僕は微かに見える青空を見て、地球に住む両親の顔を思い出した。

 力強く頼もしいお父さんと、いつも優しかったお母さんの顔だ。


 あぁ、お父さん、お母さん、必ず待っててね。いつ地球に戻れるか分からないけど、僕はこの世界で時空警察官として生き抜くから。


「さてっと……」


 今日も僕は、異世界の悪い人達を逮捕します! 

 

 次話からはこれまで(転移から1ヵ月)の過程を説明します。

 ブクマ、評価など頂けると嬉しいです(^^)

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