出会いはここから
日高駅に着いた。
サラリーマンやOLのお姉様たちがぞろぞろと降りていく。
そして狙い通り、僕の目の前の席が空いたため、ゆったりとした動作でそこに座る。
やっと座れて、残りの6つの駅までの間は寝ていられる。
この時間が僕にとっては、ゆっくりできるプライベートの時間の1つであり、わりと揺られながら寝るのは嫌いじゃなかった。
そっと隣を覗き見ると、座っているのは女の人で真っ黒な長い髪の毛をたらし、静かに読書していた。
ぁあ…なんだろうな。
僕が最後に読書をしたのなんていつだろうか。
暇さえあれば携帯をいじっている僕。
でもそれは、僕だけじゃなくてこの車内にいる人たちは【寝てる人】か【携帯をいじる人】のどちらかだ。周りに本を読んでいる人なんて、この人くらいで…別にめずらしいことじゃないけど。
《"やっと座れた。隣には黒髪地味女子(0エ0)"》
Twitで呟く。
〈ざんねーーん!ドンマイ〉
大抵コメントはこうしてすぐ来る。
しばらくやりとりをしていたが、なんだか眠くなってきた。
《"木戸に着くまで寝る"》
〈お!(^^)/〉
コメントを見届けてから僕はしばしの眠りについた。
ーーーーーーーーーー。
【~♪……き…ーー、木戸~♪…】
「……?。」
車内アナウンスで目を覚ます。
いつの間にか最終駅の木戸駅に着いていた。目を閉じてから、すぐに爆睡してしまったらしい。
気がついたら車内は誰一人いなくて僕だけ取り残されていた。
こういう時、人って冷たいと思う。最終駅がここだって決まっていて、もちろんそのあとはこの電車は回送になるわけで…
掃除するスタッフたちが各車両を回ってくる。
何回かその人たちに起こされたことはあった