チャレンジ
ZAAL~チャレンジ~
ツバサとマサオのキックオフからいきなり僕にボールが落とされた。
同時に、マサオは僕の後ろへ下がりディフェンシブなポジションに、そしてタカオが中に切れ込む。
その外をユウヤが一気に駆け上がる。
左とは別に右のケンジはゴールを目指し中に切れ込むとその穴をタイヨウが埋める。
そしてリョウも高めのポジション。
ディフェンスはタイキとヒロキが真ん中を空けて構える。
前掛かりな布陣に、相手チームはどう対応したらいいのか悩んでいるような気がした瞬間、タカオがボールを要求。
長い時間考えていたようだけど、ボールが足元に来るまでで・・・ダイレクトでタカオに出した。
僕はパスした瞬間に右に斜めに走りながら「タカオ!」と叫ぶ。
タカオがボールを戻してくれるまでにもう一度、周りを把握。
ツバサとケンジが真ん中。
ユウヤが相手の右サイドバックの裏を目指している!
挨拶代わりと思い、右サイドバック裏を目指そうと考えた。
斜め右前から強めにダイレクトで返されたボールを僕もダイレクトでバックスピンをかけて蹴りだす。
キック力がなくても、パスの勢いを借りて蹴れる。
蹴りだされるボールはただ蹴られるのではなく、回転も考えられたボール。
ユウヤ!間に合え!!
こころで叫びながらも、フォローの位置を考え、僕はそのままペナルティエリアの角を目指して走る。
デイフェンス4枚とボランチ2枚に対して、ZAALは7枚が攻撃参加という異様なシチュエーションだった。
ユウヤは追いついたが、流石に170センチ近い相手のサイドバックが追いつき、センターバックの175センチはあるかと思う選手にも寄せられながらも、ニアに走りこんでいるツバサにダイレクトで出すがボールに少し勢いはない。
ツバサももうひとりのセンターバックを背負いながら楔となり走りこんでいた僕に丁寧にしかし強いグラウンダーダイレクトパス・・・。
僕は気持ちよかった。
左足を軸に、身体を傾け、少し無理な体勢ながらもボールの右側から擦り上げるように右足を振り切った。
誰も反応できず・・・。
キーパーすらも一歩も動かず・・・。
20メートル近いキックが相手のゴール右上に弧を描きながら入った。
きぁぁぁ~~~!!!
なんか、黄色い声・・・。
僕らはまだ声変わりもしていない。
攻撃参加していた6人が僕に抱きつく。
ベンチを見るとカツコとカナコが両手を上げて飛び上がっている。
ベンチの3人も両手を上げながら走りまわっている。
最後に自分のゴールを見たら、タロー、マサオ、タイキ、ヒロキが笑いながらガッツポーズ。
5年と3ヶ月・・・。
初ゴールが開始2分。全てダイレクトの8タッチ目で初得点となった。
ん?カツコが選手交代としてジローを立たせている。
「ミズホ~!こうた~~~い!!」
え?
ベンチ前に戻り、ジローとハイタッチして交代された。
なんで?と食って掛かろうと思ったら、カツコ、涙流してやんの・・・。
なんか、もみクシャニされながら僕も泣いていた。
頭をガシッとつかまれて見上げるとカナコが「そんなに泣いていたらボール見えないだろう」ってやさしい笑顔で語りかけてくれた。
ZAALフットボールクラブ
初陣、開始2分の得点は池田瑞穂・・・。
日の当たることもなくサッカーを続けてきた僕が第一歩を踏み出した瞬間。
そして、怪我以外で開始2分交代はクラブ史上破られることのない記録となった。