大スクープだよ!
ここはとある公立高校。もうすぐ学園祭だということで、学校中が慌ただしい雰囲気に包まれていた。特に文化部の忙しさは異常で、週に一度しかなかった活動が毎日に変更されることもざらである。かくいうここも例外でなく、この日も活動を行っていた。
「スクープ!スクープ!大スクープだよ!」
ばぁんと、ドアが壊れるぐらいのスピードで飛び込んできたのはこの写真部の部長である、初瀬川ななだった。
初瀬川部長はわりと好奇心旺盛で写真部の主な活動は風景写真の撮影なのに、興味本位でかときどき特ダネを撮ってくる。
それは、クラスでの色恋沙汰であったり、テストでの不正行為であったり、先生の不倫の様子であったり、毎回できはまちまちだが学校の新聞部に売りつけるには申し分ないほどの写真技術をもっている。
そんな部長が今回はどんなネタを撮ってきたのだろう?
「部長、どんなスクープなんですか?」
そう問いかけると予想外の答えが返ってきた。
「王子の初恋撮っちゃった…」
王子というのは、この学校一番のイケメンである相馬洸を指す言葉だ。
彼は容姿だけでなく内面も完璧で、男女共から人気と嫉妬の嵐だ。その上勉強も運動も出来るクラス……いや、学校代表だ。もてないはずがない。だというのに、今まで一度も色恋沙汰を聞いたことがなかったことから、もうすでに外部に恋人がいるのでは?婚約者でもいるのでは?という噂があとをたたない。俺自身もその線が強いだろうと思っていたのだが、どうやらそれは違ったようだ。
「初恋って、どういうことですか?あの王子が初恋?」
まさか、そんなはずはなかろうと疑問を口にするも返ってきたのは俺の思っていた言葉とは逆のものだった。
「初恋って本人が言ってたからまちがいないはずだよ。王子は嘘つけるような人じゃないし。これからのこと考えるだけでワクワクしちゃうよ」
とりあえず、俺はこれからのこと考えるだけで、胃がキリキリしちゃうよ。
読んでくださり、ありがとうございます。
次話投稿は、10月10日です!