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文字通りの切り札みたいです

「強がりはいいが……それでどうするんだい?

 お嬢ちゃんはどう頑張ってもここまで届かないだろう?」


 上昇気流に煽られる様に浮かび上がるエクダマートの肢体。

 でもその実態は実際に舞い上がっていった訳ではなく、

 存在強度である空気の濃度を下げ浮上してる様に見せかけてるだけです。

 言うなれば風船に込められたヘリウムの様なもの。

 手品のタネが割れてしまえば何の脅威もありません。

 しかし彼女の指摘は最もです。

 私の攻勢技能に遠距離を想定したものはあまりありません。


(ならば有効な範囲に落とし込むまで)


 安っぽいエクダマートの挑発に、私は不敵な笑みで応じます。

 箒を持つ左手とは反対の右手。

 胸元に構えた拳に力を込め、真横に力強く引きます。

 星色の輝きを帯び宙に奔る軌跡。

 それらは凝縮すると3枚のカードになります。

 符のそれぞれには<跳躍ジャンプ><回転ターン><蹴打キック>と書かれてました。

 視界の隅でそれを確認しながら私は全力ダッシュ。

 勢いよく踏み込み、上空目掛け跳びます。

 幾ら私が闘気で身体機能を向上しているとはいえ、そこは子供。

 精々2メートルを跳ぶのが(それでも凄いと思いますが)やっとです。

 そう、通常なら。

 上空に跳んでしまった事により回避行動の取れない獲物を見て、エクダマートの顔が愉悦に歪みます。

 いかに私を嬲ろうかと思索してるのでしょう。

 その顔を確認するよりも早く。

 私に追随し、共に浮かび上がった符を握り締めます。

 砕け散り霧散する符。

 代わりに瞬時に現れたのは虹色の札。

 返す指で私は札を掴み、掲げます。

 微かな呟きと共に。


「<螺旋跳蹴スパイラルキック>」


 途端、札は眩い光を放ち、

 そして……


「かはっ!

 ……これはどういう……ことだい?」


 自らの胸元を激しく叩きのめした苦痛。

 理解の及ばぬ衝撃。

 気がつけば地面に撃墜された自分の身体。

 何が起きたのか分からないのか、狼狽しながらエクダマートは当惑します。

 当然でしょう。

 自分よりも『上空』から攻撃されるというのは、彼女にとって初の経験でしょうから。

 彼女の疑問に答えず、私は乱れた呼吸を整え着地。

 予想以上の結果に、面白くもなさそうに札を消します。

 そして流れる様に新たに指を引くと、再び浮かび上がる符。

 そこには<斬撃スラッシュ><闘気オーラ><倍加ダブル>の文字。

 私は再度間合いを詰めながらそれらを握り砕きます。

 甲高い破砕音。

 代わりに浮かぶのは虹色の札。

 よく目を凝らせば、そこに書かれてる文字<闘撃重斬オーラスラッシュ>を確認できる筈です。


「先程の蹴りといい、アンタまさか!?」

「<闘撃重斬オーラスラッシュ>!」


 エクダマートの疑問に答えず、私は箒をその身体に叩き込みます。

 充分に練られた闘気と属性封滅を秘めた虹色の穂先が光芒を放ち、鋭くそして柔軟にしなります。

 叩き潰すというより掃き掃除の様に消し去るといったような打撃。

 半身を瞬時に掻き消されたエクダマートが絶叫します。


「何だい、アンタ!?

 何故こんな事が可能なんだい?

 アンタが今使っていたの、それは……」

「あら、御存知なのですか?」

「嘘だ嘘だ嘘だ!!

 教えを乞いたあたしに魔神皇様は言った。

 これは自分にしか使えぬ、と。

 アンタなんかに使える訳がない!!」

「へえ~……魔神皇も似たような技能を所持してるのですか……

 良い事を聞きました。

 それにしても、口が軽いんですね。

 身体同様に」

「ぐっ!

 小娘が……生かして返さないよ!」

「同感です」


 今得た情報を整理しながら、私は箒をヒュンヒュンと回し構えます。

 無造作に突き出す右手。

 おもむろに指先でチョイチョイと挑発してみます。


「小娘えええええええええええええええ!!」


 激昂し髪の色まで灼熱に染まるエクダマート。

 最早術式も何もなく、ただ全力で焔を放ってきます。

 摂氏1000度を超える灼熱地獄。

 何者をも焼き尽くす紅蓮の業火。

 計り知れない脅威の前に、誰もが泣いて慈悲を乞うでしょう。

 対抗手段を持たぬなら。

 私は唇の端に苦笑を浮かべると、三度指を引き発動させます。

 浮かび上がる符は<吸収アブソーブ><遮断シャット><火属カウンター>の3つ。

 すぐさま握り締め浮かぶ虹色の札を大地に叩きつけます。


「驚いた……

 本物、なのかい……?」


 驚きに立ち竦むエクダマート。

 木立ちから身を乗り出したゼノスさんクヨンさんも、必死に焔を消去しようと(残念ながら力が及ばなかったみたいです)してくれたフィンさんも一緒です。

 皆が見詰めるのは地面より立ち昇る虹色の障壁。

 淡いカーテンのようなそれが、業火を苦も無く吸収し無効化しているからです。

 立て続けのぶっつけ本番。

 高鳴る心臓に口渇する口内。

 しかし私は悟られない様、平静さを装います。

 何故なら私が発動できるのはあと一回が限界だから。

 次が最期になる筈です。

 父様も打破した文字通り私の切り札。 

 所持するスキルを符として可視化するのみならず、

 望む様に編成・加工・統合する裏の手。

 ユナティア流スキル融合術<タロットインテグレート>は。





 多めのアクセスありがとうございます♪

 ついにお披露目されるユナの隠しスキル<タロットインテグレート>

 イメージとしてはペルソナ4の発動シーンを参照して頂ければ。

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