得難い手段の獲得みたいです
「スタイルを見い出したと言ったね、ユナ?」
「はい、父様」
「それが本当なら……
研鑽の成果を見せてもらえるかな?」
「はい」
ノルン家の訓練場に父様を呼び出した私。
怪訝そうな父様に冷静に告げます。
理に適った自分だけの戦闘流儀を形成出来たと。
ついては中断されていた稽古を再開してほしいと。
父様は幾つかの条件を確認後、黙って木剣を構えます。
闘気術を操る私にとって、木剣など通常なら殺傷力は皆無に等しいです。
しかしS級冒険者であり卓越した父様の手に掛かれば、それはどんな凶悪な武器よりも危険な武具と化します。
更に私に注がれる真剣みを帯びた父様の怜悧な眼差し。
そこには父と娘という甘ったるい関係はなく、
弟子の行く末を冷淡に推し量る師匠としての意が込められてます。
無論それに臆する私ではありません。
一本の棒を構えると、緩やかに間合いを取り宣言します。
「そろそろよろしいでしょうか?」
「ああ、いつでも来なさい」
「ではあと1分後に開始させて頂きます」
「ああ。楽しみにさせてもらうよ。
ただ……」
「ただ?」
「ユナが手に構えてるいるのは槍を模した訳ではなく普通の棒だね。
棒術にしたのかい?
確かに随分と様になっているみたいだが」
「それも……すぐに分かります」
「そうか。ならばこれ以上は無粋だな。
……来なさい」
「はい」
言葉はいらず、二人の間に張り詰めていく空気。
風に飛ばされた葉っぱが周囲を舞い、何かに弾かれた様に砕けます。
覇気とも圏気とも形骸される現象です。
闘気ではなく意志ある気迫が境界を象る達人特有の業だと聞きます。
私も初めて遭遇する現象ですが、今の状態なら有り得るとも思いました。
シャス兄様やネムレスの助言。
更にティアとの邂逅。
周囲の人々からの関わりを経て、今の私は自分でも空恐ろしいレベルまでディープに研ぎ澄まされていくのが実感できます。
ならば出来る筈です。
失敗し、血の滲む研鑽の末に生み出されし独自編成されたオリジナルスキル……<カレイドライオット>の発動を。
「参ります!」
「来い!」
瞬時にトップギアに入り込んだ意識が撃鉄を上げます。
迸る闘気は虹色の光芒を纏い構えた棒に集います。
片眉を上げ、木剣を守りに向ける父様。
そしてーー
「参ったな……
まさか娘に感服する日がこようとは」
片膝を着き苦笑する父様。
その顔はどこか誇らしげで晴れ晴れしてます。
しかし賛辞を受けるべき対象者である私は肩で息をし、倒れそうになるのを棒に寄り掛かることで必死に堪えてますが。
僅か数瞬。
10合に満たない打ち合いと駆け引きの間に、そこまで消耗してしまったのです。
ただ手ごたえは確実にありました。
父様と互角以上に渡り合えた事。
それが何よりの証拠です。
「どう……でしたか、父様……
これが私流のスタイルです……」
「ふむ。大変素晴らしい。
ユナ独自の世界観と戦闘流儀、そして高密度な技術が練り込まれている。
そのまま磨けばユナにとって間違いなく最大の武器となるだろう」
「良かった……
努力した日々は……
無駄じゃ、なかった……」
「ただ……一つ訊いてもいいかな?」
「はい……何でしょう?」
「何がユナをそこまで変えた?
春先までのユナとは別人みたいなのだが」
「そんなの……
もう~父様は……鈍いんですから」
「ん?」
「恋する女の子は……
どんどん変わっていくのですよ♪」
「な、なななな何いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」
可愛く告げた私に動揺し絶叫する父様。
あ、あの~父様?
「わたしの可愛いユナが誰かに誑かされてしまったああマリーすまない君との約束は果たせそうにないそれにしても誰だわたしの知ってる奴かいやいや知り合いかどうかはどうでもいいまずは殺すいや殺しては殺せないから取り敢えず殺そう……」
余程ショックだったのか、何やら物騒な事をブツブツ呟く彫像と化した父様。
その病んだ様子にホンの軽い冗談でした~(てへぺろ★)とも言えず、
私はそっと……けど足早に訓練場を離れるのでした。
まあ、何はともあれ。
こうして私は戦い抜く為に得難い武器をまた一つ手に入れたのでした。
入れ忘れたエピソード。
こっそりとここで入れちゃいます。
次回は本編の続きです。
今回お披露目し損ねたスキルの解説などを。
溺愛する娘に対するカルの病みっぷりを痛ましく思いながらお待ち下さいw
あとユナの兄、シャスの物語であるタガタメも更新しました♪
こちらもクライマックスが近づいてるのでご期待下さい。




