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勇者の系譜とやらに異世界転生した私ですが、そんな事など関係なくメイド喫茶で働いてます  作者: 秋月静流


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覚醒とお礼みたいです

「うん。今日も良い天気です」


 洗濯物を全て物干しに掛けた私は汗を拭います。

 照り付ける日差し。

 颯爽と吹き抜ける風。

 春の息吹を纏ったそれらが、単純作業に勤しんだ私を清々しい気持ちにさせてくれます。

 色々ありましたが、やっと落ち着いてきたようです。

 私は猫の様に大きく背を反らして深呼吸をします。


「ユナ、ここにいたの?」


 そんな私に声を掛けてきたのはシャス兄様でした。

 男性が運び込まれて三日。

 細々とした雑用を買って出た兄様は少しやつれた気がします。

 無理もありません。

 昏睡状態とはいえ病室で病人といるのは、

 それなりに陰の気の影響を受けやすいのですから。

 父様に尋ねてみた事がありますが……

 病院等を訪れた際に感じる謎の倦怠感。

 その九割はメンタル的な勘違いですが、

 残りの一割については陰なる気が生み出す磁場の所為らしいです。

 闘気を使いこなす兄様ですから対策は大丈夫だと思いますが、やはり気分的な問題は避けられないのでしょう。

 しかし心配する私とは裏腹に、その表情は晴れやかでした。

 おや?

 これはもしかして?

 推測する前にシャス兄様が結論を述べます。


「あの人が目を覚ましたんだ。

 記憶の混乱なども無く、しっかりしてる。

 ユナを含めて皆にお礼を言いたいみたい。

 今一緒に来れる?」


 やっぱり。

 ついに男性が……

 霊長の守護者と思わしき人物が目を覚ましたようです。

 私は銀狐とのやり取りで得た情報を内心で反復。

 うん。覚悟は決まりました。


「分かりました。

 同行しますね、兄様」


 差し出された兄様の手を取り、私は一人決意を固めるのでした。






「随分と世話になったようだ。

 礼を言わせてもらう」


 ベット上にて自らの赤衣を肩に掛けた男性が父様に頭を下げます。

 私やファル姉様、そしてシャス兄様にも順を置いて個別に。

 その様子を窺っていた父様が声を掛けます。


「もう大丈夫なのかね?

 大分血を失ったようだが……

 眩暈や虚脱感、吐き気などは?」

「ああ。お蔭様でこの通り快調だ。

 回復薬等による治療と気功療法を併用してくれたのだろう?

 後遺症も無く順調のようだ」

「それは何より」

「迷惑を掛けた礼をしたいのだが、

 ……生憎持ち合わせが無くてな」

「そんなものは別に構わんよ。

 娘が連れてきたんだ。

 我が家の客人として扱わせてもらう。

 ただ、一つだけ質問をいいかね?」

「わたしに答えられるものなら」

「君は……曽祖父が言っていた存在。

 つまり霊長の守護者なのかい?」

「……その質問には応じられない。

 下手をすればわたしの事情に君達を巻き込んでしまう恐れがある。

 わたしはそういった事態を望まないし、なるべくなら回避したい」

「なるほど。ならば深入りはすまい。

 ただ曽祖父からの言い付けでな。

 自分達ノルン家の誇りに掛け、出来る事は支援させてもらう」

「やはり君達はアルの……?」

「曽祖父の名を知ってるという事は確定か。

 歴史に潜みし英雄、赤衣の弓聖。

 お待ちしていた」

「よしてくれ。

 わたしはそんな大層な存在じゃない。

 それにもう忘れた名だ」


 深刻な顔をして告げる父様に男性は苦笑を浮かべます。

 父様も痛い二つ名に思い入れがあるのか、相好を崩し応じます。

 似た者同士なのか、二人は気が合いそうな気がします。


「確かにそうだな」

「理解があり助かる」

「では何と呼べばいい?」

「そうだな……

 ならば、ネムレス・アノーニュムスとでも。

 今は使われない古い言葉だ」


 名無し。

 無名。

 そう呼んでくれ、と。

 ネムレスさんは私を鋭く見据えながら告げるのでした。




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