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対話しちゃうみたいです

「……銀狐」

「こちらに」

「状況は?」

「はっ。

 情報戦を仕掛けた結果、市場に出回る麦と大豆、三割の買占めに成功しました。

 時間が経過する度、徐々に値上がりを開始しております」

「ふむ。利益は?」

「投資分は既に回収済みです」

「結構。あと少しだけ市場を揺らしたら、

 レーベン地域に格安で卸しなさい」

「よろしいのですか?

 しばらくは現状維持のみで儲けが出ると具申しますが」

「儲けは過程に伴う結果であって、目的ではありません。

 それにあまり派手に儲かり過ぎると余計な恨みを買うのでしょう?

 この辺りが引き時です」

「畏まりました。

 しかし何故レーベンなのです?」

「あそこはまだ<アラクネ>の糸が伸びてない地域。

 傘下の商会を通じて恩義を売っておけば今後の役に立つからです」

「……確か今年のレーベンは近年稀に見る不作で、飢餓の恐れがあったかと」

「何が言いたいのです?」

「いえ、何も。

 ……お優しい、盟主様」

「私に意見ですか?

 貴方も随分偉くなったものですね」

「越権行為でした。

 どうかお許し下さい」

「……まあいいでしょう。

 それより、頼んでおいた彼の件は?」

「はい。我等が配下の情報屋を総動員し詳細を調べておりますが……

 残念な事に、詳しい事は分かっておりません。

 ただ二つだけ判明致しました」

「それは?」

「百年前の大戦時、魔族との決戦要員たる百人の勇者の中に、

 赤衣の弓聖と呼ばれる存在がいた事は確かです。

 その生まれも所属も不明。

 ただ復活した魔族に呼応するかのごとく、辺境を舞台に活躍し始めたと」

「そうですか……

 確証ではないも、裏付けが取れましたか」

「ええ。盟主様の曽祖父様が人々の希望たる表の英雄ならば、

 彼は言うなれば力無き人々の拠り所たる裏の英雄。

 辺境では今も根強い人気があるようです」

「なるほど」

「それと」

「何です?」

「盟主様から頂いた言葉を基に王都や魔導学院の資料を検索させました。

 結果は黒。

 カウンター・ガーディアン……そのような概念的存在は実在する、と」

「本当ですか?」

「はい。霊長の守護者、抑止の守護者などの分類があるようです」

「違いは分かりますか?」

「人の世を滅びに導く理由に起因するみたいですね。

 霊長の守護者とは即ち、霊長(人族)の存命を目的として、人が自ら生み出してしまった「霊長を滅ぼし得る原因」を排除しようとする存在。

 人々の味方であると思われるかもしれませんが……

 それはある意味正解であり、間違いでもあるのでしょう。

 あくまで霊長全体の存命を優先するものであり、

 邪魔と認識されれば容赦なく切り捨てられる可能性もあります」

「そうですか……微妙なラインですね」

「シンクタンクの推測によれば、その正体は全人類に共通する本能とも共通無意識と言えるものらしいです。

 いわゆる普遍的無意識……人間全ての根源は繋がっているという概念ですが」

「ふむ。もう一つは?」

「これは世界(琺輪)の抑止力ですね。

 霊長の守護者が人間自身が作り出してしまった滅びの要因を排除する存在であるのならば、こちらの担当分野はその逆。

 両者は根本的には別物ですが……霊長と世界、

 いずれかが致命的な状態に陥った場合、共倒れとなる危険性の高い現代においては、結果的に同じ方向に向かって行動している事になってるとの事でした」

「へえ~……面白いですね。

 推測が確かならば、交渉する余地は残されてる筈です」

「自重を願います、盟主様。

 我等の御旗であることを理解し、どうか御自愛下さい」

「フフ……私も馬鹿ではありません。

 ちゃんと分かっていますよ」

「それは重畳」

「話は以上です。

 下がりなさい」

「はっ。それと盟主様」

「何ですか?」

「情報を集める過程で知り得た、例の盗賊団の事ですが」

「ああ、あの辺境の村々を執拗に狙っているという?」

「はい。いかがなさいましょう」

「潰しなさい」

「!!」

「我が組織<アラクネ>の全力を以て。

 金銭だけが目的なら、官憲に通報すればいい。

 けど自らの快楽の為に女子供すら皆殺しにする輩共は……

 決して生かしておけません。

 負の螺旋は速やかに断ち切るべきです」

「……恐ろしい、盟主様」

「私を盟主と仰ぐなら、その名に懸けて……

 全て、殲滅なさい。

 その罪科は私が背負います」

「……さすがは無慈悲な女王。

 すべては貴女様の御心のままに」



 鬱蒼と枝葉が茂る鎮守の森。

 深々とした一礼と共に、狐の面をつけた銀髪の旅装束の男が木立に消える。

 前方を鋭く見据えたまま動かないユナ。

 握りしめたその拳は、微かに震えていた。

 自らの決断を悔悟しているのか?

 それは分からない。

 ただ少女の中には固い決意があった。

 泥に塗れ様とも前に進むという、誰にも譲らない毅然とした意志が。

 傍らに佇む一角馬もそれを理解してるのだろう。

 低く嘶くと、まるで慰める様にユナに首元を寄せるのだった。






 こうして、男性を救い出した例の騒動が起きてから三日が経ち、

 昏睡していた男性はついに覚醒の時を迎える。

 



 闇狐 → 銀狐 に変更。

 実はこっそりちょこちょこと編集してます。

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