表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

61/403

憤慨しちゃうみたいです

「お~い。どうしたんだ~い」


 間延びした声と共に駆けつけてきたのはジャランさんです。

 ゴランおじさんとジャレッドおばさんの一人息子。

 20前後の特に目立ったところがないごく普通の青年ですが、

 人の好い笑顔が魅力的で、村の若い娘に人気があります。

 けど本人はどうやらファル姉様に御執心みたいですね。

 最近何かと理由をつけては我が家に来てる姿が見えます。

 どうやら今も配達の帰りらしいです。

 眼を凝らせば遠くに配達用の馬車が視えます。

 ロバが引いてるのでスピードは出ませんが、

 人ひとりくらいなら余裕で運べるでしょう。

 目の前の幸運に小躍りしちゃいます。

 まさに渡りに船。

 地獄に仏ならぬ窮地にジャランさん。

 私は大声でジャランを呼び寄せます。


「ここです! ジャランさん早く!」

「お。ユナちゃんじゃないか。

 いったいどうしたんだい……って!! その人は!?」

「行き倒れというか、怪我をして川を流されてたんです」

「大変だ! どうする!?」

「体力を消耗しひどい状態なので、取り敢えず家に運びたいのですが」

「ああ、詰所なら回復薬もあるか。

 うん、分かった。馬車で運ぼう」

「お~い、どうしたー」

「こっちだ~! 怪我人がいる~手を貸してくれ~!

 カル先生のとこに運ぶぞ~」

「分かった~」


 ジャランさん同様駆けつけてくれた村人と協力し、男性が運ばれていきます。

 ふう……助かりました。

 いくら私が鍛えてるとはいえ、成人した男性。

 しかも水に濡れた状態の人を運ぶのは至難の業です。

 更に気を注ぎ込む事による状態維持は可能ですが、

 その事に掛かり切りになる為、私も身動きが取れなくなります。

 共に馬車に乗せて貰えるのは幸いでした。

 しかし……

 集まった方々に礼を言い、急ぎ我が家に向け発車する馬車。

 皆に運ばれ馬車に乗せられ、

 今も揺れる荷台にいるのにピクリとも動かない男性を見ながら私は思います。


 いったいこの人は何者なのでしょう?

 どうして私が転生者と看破できたのでしょう?

 そもそも転生してるという概念を何故見抜けたのでしょう?


 命を狙われた事を含め、さまざまな疑問が次々に浮かびます。

 血の気を失い蒼白な面差し。

 整ったその容貌が時折苦悶するげに歪みます。

 夢を見てる間すらこの人に安らぎはないのでしょうか?

 私は慰撫スキルを併用しつつ、気を循環させ生命力を活性化します。

 せめて束の間でも安息を得て貰いたいな。

 心配し声を掛けてくるジャランさんに応じながら、そんな事を思いました。 









「助かりました、ジャランさん」

「いや、何。

 ユナちゃんにはいつも世話になってるからね~。

 お役に立てて何よりだよ」

「いえ。そんな。

 そういえば……

 どうしてあんな時間にあそこに?」

「それはね~うひひ。

 何と今日は……

 ファルさんとお話しだけに留まらず、夕飯を御馳走になったんだよ!

 普段おふくろがユナちゃんに御飯を御馳走してる礼だって。

 ほら、お土産ももらっちゃった」

「それはミートパイですか?」

「うん。共に頂いたキノコシチューやリンゴパイといい、

 絶品だね~ファルさんの料理は!

 才色兼備で料理も上手い。

 おまけに性格も優しいときては、もう非の打ちどころがない女性だよ~」

「おばさんの料理も充分美味しいと思いますけど?」

「ん? どうしたんだい、ユナちゃん?

 なんだか不機嫌というか……

 言葉に棘があるよう、な?」

「何でもないです!(ぷい)」


 いかに敬愛するファル姉様の話題でも、

 傍にいる女性の前で他の女性を褒め続けるなんて断固同断です。

 私はデリカシーのないジャランに憤慨し、

 機微に疎い彼を当惑させるのでした。

 ふん。



 多めのアクセスとお気に入り登録ありがとうございます。

 いつのまにやら2万ユニーク達成です。

 これからも応援よろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ