述懐と判断基準みたいです
「ユナの髪は綺麗だね」
「兄様に負けます」
「これも母さん譲りかな?」
「さあ~どうでしょう?」
「あ、加減はどう?
痛くないかな?」
「ええ。大丈夫です。
逆にすごく気持ちいいくらいです」
「そう。それならいいけど」
「昔、母様にもこうして髪を洗ってもらってました」
「そっか……」
「私、他人に髪を委ねるのは嫌いだったのですけど……
母様は別だったんです。
繊細な指遣いが絶妙で」
「うん。僕もやってもらってたよ。
アレは凄いよね」
「はい!
指が櫛のように髪を梳き、
さらに頭皮を程好く刺激していくタッチ……
今も時折思い出しちゃいます」
「フフ……ユナの記憶にある母様には及ばないけどね」
「ううん。兄様の洗い方も丁寧で好きです」
「お褒めに預かり光栄だね」
「おかしな兄様」
「なんだ。先に言い出したのはユナの方じゃないか」
「そうでしたっけ?」
「そうだよ」
「あは★」
「しかし……もう4年か」
「月日が経つのは……早いですね」
「うん」
「一ヶ月前、ミスティ兄様の旅立ちの時……
改めて互いの気持ちを再確認し合いました」
「そっか」
「私は……やはり諦められません」
「僕も一緒だ」
「ただ、時折怖くなるんです」
「何がだい?」
「こうして続けてきた事。
それが全て無駄じゃないのかって」
「ユナ……」
「本当は全て手遅れで……
今更何をしても……
定められた結末を変えられないんじゃないか、と」
「ユナ、それは違う。
目標に向けて努力した事が無駄になる事は決してない。
過程は道標となり、いつだって自分の力になるよ」
「たとえ……報われなくても?」
「報いがあるから頑張ってる訳じゃない。
特に僕達はね。
家族を取り戻す。
ただ当たり前のことを叶える為、皆は前に進んでいってる」
「そう……ですよね」
「だから今は信じよう。
母さんと、皆の想いを」
「はい」
「しかし何だか……
今日のユナは昔みたいだね」
「え?」
「ほら、何故何故ちゃんだったころ」
「ああ。アレは……忘れて下さい。
出来れば記憶から抹消して頂けると幸いです」
「そうはいかないよ。
あんなあどけなかったユナが今はこんなに美人さんになって。
昔からしっかりしてたけど、最近は更に磨きが掛かってるし」
「そんなこと……えへへ」
「フフ……まるで別人だね」
「別人?」
「うん」
「……ねえ、兄様」
「何だい?」
「私らしさって……何でしょう?」
「どうしたんだい、急に改まって」
「父様に問われたんです。
自分らしさを見い出しなさい、って」
「それはまた難しい質問だね」
「ですよね」
「どんな答えをユナが期待してるか僕は分からない」
「はい」
「だってそれは……
人によって物差しが違うから」
「物差し?」
「そう。物事の判断基準。
ユナにとっての自分。
僕にとってのユナ。
父さんや兄さんやファルさん……
そして、母さんにとってのユナ。
皆、ユナのユナらしさを勝手に分かった気になってる。
でも多分、そのどれもが違うんだと思う」
「違う?」
「うん。それは万華鏡のように多種多様な側面だから。
定められた自分なんてないんじゃないかな?
大切なのはどう感じ、どう思うか。
そしてシンプルにどうしていきたいのかだと思うよ」
「万華鏡のような……多種多様性……
終わりの無い方向性……」
「参考にならないかもしれないけどね」
「いえ、兄様」
「何かな?」
「そんなことありません……
すごく……うん。
ものすご~~~~~く参考になっちゃいました!
ありがとうございます!!」
「それは幸い。
まあ、あまり深く悩まないようにね」
「はい!」
「じゃあ、これにて洗髪は終了。
はい、水を掛けるよ~
目を瞑ってね~」
「え……?
あっ! ひゃうっ」




