和解と行き遅れみたいです
緊迫した雰囲気。
どこかピリピリした意図の糸が飛び交う食堂。
恐ろしいくらいの重圧です。
戦闘とはまた違うこのプレッシャー。
こんなものが続くなら、私は神経性の胃炎になること間違いなしでしょう。
だけどそんな中、
「いや~寝坊してしまったよ。
わたしも歳かな?
お、今日も美味しそうな朝食だね~。
おはよう、みんな」
起き出しくるなり間延びした声を掛けてくる父様。
空気を読めないというか、無視するというか……
ある意味、凄い才能です。ええ。
そんな父様の態度に毒気を抜かれたのか、
二人とも呆気に取られた顔をしてます。
そして大人げない自分たちに気付いたのでしょう。
どちらともなくお互いを見やり、苦笑すると父様に挨拶を返すのでした。
「おはよう、父さん」
「おはようございます、カル様」
「うん。おはよ。
あ、ユナ。
さっそくで悪いけど、香茶を貰えるかい?
ユナの煎れた香茶は絶品だからね」
「あ。は~い」
急ぎワゴンにティーセットを乗せ父様に向かいます。
テーブル脇の椅子に「よこらしょ」と座った父様と目が合いました。
瞬間、私にウインクする父様。
あっ……
どうやら私は勘違いをしていた様です。
私の父様カルティア・ノルンは空気の読めない人ではなく、
人の心を慮れる優しい人なのでした。
……多分。
一抹の疑念を拭いされないまま、私はカップに香茶を注ぎます。
出来るだけ高く。
出来るだけ遠く。
十分な空気を孕んだ香茶は芳醇な香りだけでなく滑らかな舌触りすら与えます。
「ん~美味い。
見目麗しいだけでなく家事も万能。
ユナはいつでもお嫁さんにいけるな」
「そんな……」
「まあユナにそんな相手が出来たら……
絶対○(ピー)す、がな」
親馬鹿全開で呟く父様。
と、父様父様。
元とはいえS級冒険者の殺気がダダ漏れです。
っていうか、どれほど娘ラブなのです?
うっすら闘気すら帯びてません?
私の事を案じてくれるのは嬉しいですけど……
このままだと行き遅れ確定です(はあ)。
私は私自身の幸せの為にも母様を取り戻す事を固く誓います。
……っていうか、母様が何か言って変わってくれるのでしょうか?
少なくとも父様を実力で納得させる人を探すだけでも一苦労なのですけど。
異様な殺気と闘気を放つ父様を尻目に、私はシャス兄様の前へ赴きます。
エプロンを摘まんで一礼すると、兄様の杯にも注いでいきます。
「ん……ありがとう、ユナ。
いい香りだね」
「今日はレミナ草とアリセプ草のブレンドになります。
少しですけど、精神安定と疲労回復効果があるんですよ」
「ユナが言うなら、きっと気休め以上だね」
無言で杯を傾ける父様が徐々に鎮火していくのを見ながら、兄様が笑います。
「さあ、ユナも席に着いて。
せっかくファルさんとユナが腕を揮ってくれたんだ。
料理が冷めない内にいただこうよ」
「あっ……
は、はい!」
明るくファル姉様を見やるシャス兄様。
少し目を見開いた後、嬉しそうに微笑み頷くファル姉様。
完全に和解するにはまだまだ時間が必要です。
ですが人は変わるもの。
少しずつですが歩み寄る事は可能なのです。
いつもよりちょっとだけほんわかした朝の食堂で、
私達は共に食卓を囲み声を上げるのでした。
「「「いただきます」」」
「はい、召し上がれ」
アクセスありがとうございます。
勇者シリーズの方も更新しました。
これからもよろしくお願い致しますね。




