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勇者の系譜とやらに異世界転生した私ですが、そんな事など関係なくメイド喫茶で働いてます  作者: 秋月静流


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自覚と称賛みたいです

「ただいまです」

「おかえりなさいませ、ユナ様」


 再び台所に戻った私にファル姉様が声を掛けてくれます。

 その間もピザ生地を捏ねる手は休まる事が無く、

 程よく練られたとみるや指先に乗せ回していきます。

 ファル姉様の繊手で綺麗に円状に広がるピザ生地。

 どのような作用が働いてるのでしょう?

 生前もテレビで見た事がありますが……

 完全に重力に反してますよ、アレ。

 傾斜角度が45℃超えても落ちないのは変ですって。

 怪訝そうな私に対し、満足いく結果がいったのかファル姉様が生地を置いて尋ねてきます。


「どうかされましたか?」

「いえ……鮮やかな手並みに驚いてました。

 ファル姉様はパン屋さんで修行したことがあるのですか?」

「いいえ。ありませんわ」

「でもその手際は……本職並です。

 凄過ぎます」

「まあ、何事も基本が大事なのです。

 根本となる骨子を制定すれば後は小手先の技術を覚えていくだけですし」

「そうでしょうか?」

「ええ。おそらく貴女ならばすぐにわたくしに追いつく筈ですわ、ユナ様」

「……精進致します」

「そういえば首尾の方は如何だったんですの?」

「はい。この通りです」


 エプロンの中に仕舞い込んでいた卵を見せます。

 闘鶏種だけあって無駄に栄養価が高いです。

 その栄養価は通常種の3倍。

 色も真っ赤です。


「素晴らしいですわ。

 これなら美味しいスパニッシュオムレツになります」

「私も大好きです」

「ならば今日はユナ様が挑戦されてみますか?

 こないだ手解きした点に気をつけて料理をしてみて下さい。

 きっといつもと違った感触が得られる筈です」

「はい、ファル姉様♪」


 火が燈る竈前を譲り受け、私はフライパンを乗せます。

 軽く温めた後、植物油を伸ばしていきます。

 仄かな芳香が鼻腔をくすぐります。

 私は少し微笑むとファル姉様が刻んでくれた材料を用意します。

 スライスした玉葱、

 3~4ミリ厚のじゃがいも、

 千切りにした人参、

 短冊に切ったベーコンを入れるとさっと塩を振ります。

 混ぜずにじっくり揚げるように弱めの中火で火を通していくのがコツです。

 これらは通常は料理スキルで統一される技能です。

 何もしなくともスキルの熟練度が高ければある程度の味は出ます。

 でも違うのです。

 私はファル姉様から教わりました。

 人を持て成す、誰かに喜んで欲しい気持ち。

 そういった想いを込める事こそが重要なのだと。

 ただスキルの熟練度を上げるのではなく、

 限界を超える意志、

 想いの力を以て質を上げる事を意識する事こそが大切なのだと。

 リーディングで自らのステータスを客観視できる様になった私の例で云えば、

 この事を教わる前までは、


 料理スキル(家事:一般)熟練度99


 としか表記されてなかったスキル欄が


 料理スキル(家事:万能)Bレベル クック熟練度34 専用効果<活力付与>


 へと変化していました。

 ただ習熟すればいいのではなく、

 何の為に、

 どのような思いでスキルを使いたいのか?

 という事を意識するのが大事なのです。

 普通は各人のステータスなど冒険者組合の発行する冒険者カードでも参照にしないと拝見できないでしょうが、

 どのような生き方をしてきたかがスキルに現れるのが大きな特徴なのです。

 この事を知ってから益々研鑽すべき事があるという事を知りました。

 ……閑話休題。

 まずはオムレツですね。

 焦げないように注意しながら炒め、コンソメを加えます。

 全体的に透明感がでてきたらそっと混ぜながらムラなく火を通していきます。

 ボウルに卵を割りほぐすと、塩やチーズを入れて混ぜていきます。

 素早くフライパンに流し込み混ぜながら弱火で全体をざっくり混ぜます。

 ここまでくればほぼ完成です。

 蓋をして5分くらい火を通すと、

 ジジジ……と油が飛ぶ音と共に焼き上がっていきます。

 蓋を開け半熟状態になった事を確認。

 大きなお皿を利用してひっくり返しフライパンにバターを入れ、

 お皿から滑らせるようにフライパンに生地を戻して逆の面を焼きます。

 再度蓋をして3分も待てば……


「どうでしょうか、ファル姉様?」

「完璧です。

 手順だけでなく料理に対する想いがしっかり込められてました。

 お見事ですわ」


 皿に盛られパセリを和えたスパニッシュオムレツを前に、

 ファル姉様は会心の笑みで答えてくれたのでした。






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