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そんな事とは関係なくメイド喫茶で働いています


「ふふ……

 懐かしいですね」


 嵐の様に慌ただしくなる開店前の一時。

 全ての準備を整い終え、控え室で香茶を飲んでいた私は、壁際の一角を見ながら眼を細め呟きます。

 そこには魔神皇との決戦を潜り抜けた勇士一同で撮った魔導念写の記念写真が飾られていました。

 こっそり開かれた祝賀会の後なので皆さん思い思いにはっちゃけた姿で写っています。

 英雄と持て囃された人々が見せる惨状といっても差し支えない姿。

 思わず口元に笑みが浮かんでしまいますが、誰も私を責められないでしょう。


「もう5年ですか……」


 過ぎ去った日々を思い返し、そっと溜息をつきます。

 ここ数年で幼かった私の肢体もすらりと伸び――

 年齢詐称薬を用いたような身体に徐々に近付いてきました。

 このままいけばアラクネ盟主であるアズマイラの姿になるのは間違いない筈。

 母様似の姿になるのは私にとって何にも勝る喜びです。

 気になる一部分も僅かにありますが――

 大いなる躍進を遂げましたし!

 ええ、多分……

 私にとっては、ですけど。

 香茶をテーブルに戻すと、私は写真を手に取りそっと思いを馳せるのでした。






 

 5年前のあの日。

 魔神皇率いる世界蛇との決戦。

 母様達、ネムレスとの別れ。

 そして――最期まで戻らなかったイズナさん。

 勇者とまで呼ばれた彼が戻らなかったのは正直信じられません。

 ですが相手が悪かったのでしょう。

 強大な力を持っていても、防御手段を無効化し位相空間に引き摺り込む固有能力を持つ歪曲妖精は確かに相性が悪かったのかもしれません。

 色々思う所はありましたが、彼は人々の為に力を尽くした立派な人でした。

 その功績を讃えると共に冥福を祈っていた私達の前に現れたのは転移宝珠の力で迎えに来たルナさんです。

 決戦に勝利し母様を取り戻したその結果に喜びと――

 戻らなかったイズナさんに対し深い悲しみを示します。


「仕方ないよ。

 あいつもきっと覚悟の上だったと思うし。

 それにさ、あいつなら――

 いつの日かひょいっと戻ってきそうじゃない?

『いや~危ないとこだった』って感じで」


 確かに。

 パーティメンバーであった父様やガンズ様も得心が言ったように頷くのでした。

 まあ何はともあれ報告です。

 特にお世話になったユリウス様には一番に報告しなくては。

 転移で王宮へと戻る私達。

 そんな私達を待っていたのは、王宮を上げての凱旋歓迎会――

 などと言う事はなく、ささやかな慰労祝賀会でした。


「今回の騒ぎは大陸規模の大きなものだ。

 各国首脳部と協議し、足並みを揃えて公表をせねばなるまい。

 民草にとっては丸一日意識を失うという結果に対し、最もらしい理由が必要だろうしな。

 功労者に対しこんな事しか出来ず申し訳ない。

 だが――君達の活躍により大陸は救われた。

 この世界に生きる者として――何よりも感謝を述べさせて頂く」


 頭を下げるユリウス様、慌てる一同。

 次期国王様にそんな事をさせたら不敬にも程があります。

 そうして催された宴でしたが……

 こうして今思い返してみても――

 それはまさに無礼講の名に相応しいパーティとなりましたとさ。まる。








 そして月日は流れ――

 5年の歳月が経ちました。

 







 この数年で、皆それぞれの道を歩む事となりました。


 まずミスティ兄様です。

 兄様は魔術協会との交換留学を終え、魔導学院に戻りました。

 持ち前のやんちゃぶりを大いに発揮しており学院創設以来の問題児らしいです。

 ですが実力・学力共に正魔術師トップクラス。

 上層管理部である自治統制局への入局も噂されているらしいですが……

 まず導師クラスの認定の試験に落ちると思います。

 素行もですが主に性格的な理由で(あっ)。

 たまに帰郷してはチートクラスの魔術披露と怪しげな魔術理論を朝まで語ってくれてます。

 

 シャスティア兄様は弓士の資格取得後、冒険者になりました。

 喪った能力を取り戻す訓練中に出会った方々とパーティを結成。

 瞬く間に名を上げた後、王都の有名ギルドの勧誘を受けたとの事。

 パーティメンバーがフェイム冒険者組合屈指の美人ばかりなのが兄様の女難を窺わせます。

 まあ最も、一番美人なのはシャス兄様に間違いありませんがね!(えっ)

 普段はポニーテールにしてますが、腰まで伸びる濡羽色の黒髪を下ろしてる姿なんて傾国の美女にしか見えませんって。

 実際男女問わずナンパされるらしく兄様の未来が心配です。

 誰かしっかりした人が兄様の傍にいてくれると良いのですけど。


 父様はフェイム村自警団長の地位を辞しました。

 では今は何をしているのかというと――

 未封印の魔導書を封ずる為、大陸各所を探索しています。

 姉様と一緒に。

 ファル姉様と一緒に。

 大事な事なので二回言いました。

 まあ浮気とかではなく、魔導書管理者であるレカキス一族の要請に応じた結果らしいですけど。

 世界蛇の騒動で各地に封印されていた魔導書が活性化しており、災厄を起こす前に再封印するのが使命らしいです。

 ただ父様に憧れている姉様と一緒というのが問題です。

 母様達の帰還に合わせて、毎年ちゃんと帰ってくるのであまりうるさくは言いませんが。


 ファル姉様は、上記した通り父様と共に魔導書探索の旅に出ています。

 妖しげな噂があれば調査に赴き、真贋を確かめる。

 ほとんどがデマのトライアンドエラーな日々。

 ですが姉様は楽しそうです。

 最近益々美しさに磨きが掛かってきており正直ヤバいです。

 一般的によく~する女は綺麗になるとは聞きますが、要因がはっきしりしてるだけに怖い。

 幸い母様と姉様の仲は良好なのであまり深刻に悩んではいませんけど。


 母様はトレエンシア様の力添えもあり、無事ドライアードへクラスチェンジしました。

 眷属化といい、どちらかというと半人半精に近いらしいですけど。

 普段は樹木の精霊界に居る為、会う事は叶いません。

 でも、新緑の魔力が満ちる時期は仮想樹の実の力を借りて物質界に顕現する事が可能です。

 多忙なノルン家の面々ですが……この時ばかりは村外れに借りたバンガローへと皆集います。

 ティアと共に過ごす精霊界はとても刺激に満ちた日々らしく、毎回楽しそうに起きた出来事をお話ししてくれます。

 あっ、父様との関係は姉様共々良好ですよ? 一応補足です。


 ティアも母様同様、ドライアードへクラスチェンジしました。

 精霊王である聖霊を祖先に持つノルン家の血筋だけあって、その潜在力は破格のものらしいです。

 トレエンシア様曰く「この娘以外に妾の後継者はおらぬ!」と驚喜してらっしゃるとか。

 常に母様の傍に寄り添い、空白であった母子の間を埋めてるようです。

 母様共々初夏の頃は現世に顕現し、すっかりノルン家の一員として談笑していきます。

 またその傍らには美しい一角馬がいるとか何とか。

 ふむ。リューンも大変な娘に見染められたようですね。


 リューンは前述した通り、ティア専属の守護者みたいな立ち位置になっているようです。

 精霊界と物質界を繋ぐ架け橋。

 幻想郷の守り手にとって悩みが尽きる事はありません。

 私達との関わりもリューンにとっては難事の一端でしかないのです。

 しかし一角馬の麒麟児ユニコーンなのには負けません。

 今回の案件で培った力を以て毅然と対処していくのです。

 私達との絆をその胸に秘めて。

 ……まあティアの付き添いでやってくる時など、ティアにべったりホールドされてるので、涙目で救いを求めてきてもガン無視しちゃいますけど(てへっ)。


 タマモはしばらく一緒に過ごした後、諸国漫遊の旅に出ました。

 あの騒動の後、喪っていた力が徐々に回復し、今の私とそう変わらない年齢まで成長したからです。

 ……一部、大幅に負けている部分もありますが(くっ)。

 彼女が慕っていた覇王の痕跡を巡りながら墓所に籠っていた年月を埋めていきたいとの事。

 今も行く先々で運命石スマホによるメールしをくれます。

 ただその内容が――どうみても悪人を成敗する世直しチックで――

 まるで水戸黄門みたいです。

 いや旅のお供に魔狼・猿忍・鳳凰を従えて(まさか妖魔王の権能ともいえず、タマモは表向きにはビーストテイマーということになってます)いるので、もしかすると桃太郎かもしれませんが。


 ソウジさんとカエデさんですが――

 あの戦いの後、紆余曲折の末――何と結婚されました!

 そこにどのような物語があったのか不明ですが(外伝にすると多分50話くらい)今は仲睦まじい夫婦となっています。

 カエデさんは十二聖を引退しましたが、一方のソウジさんは益々腕が冴え渡り、歴代でも至強に届くほど。

 何でもあの決戦時に自分の分身(同一存在?)と死闘を繰り広げたのが限界突破の切っ掛けになったらしいです。

 またお二人の間に生まれた男の子――マコト君もすくすく育ち、3歳にして刀を振るい始めました。

 史上初となる十二聖同士の子供ということもあり、周囲の期待はかなり大きいみたいです。

 でも母となって驚くほど穏やかになったカエデさんにとっては、元気に健やかで育ってくれればそれだけでいいみたいですがね。


 ガンズ様とルナさんはあの後二人で婚活を開始。

 今も様々なパーティに参加され意欲的にお見合いをしてるらしいですけど……

 なかなかゴールに至らず、たまにお会いした時に激しく愚痴を聞かされます。

 二人とも理想が高い訳ではなく、相手が引いてしまうとか。

 容姿が悪い訳でも性格に難があるわけでもないんですけど。

 まあ個性的なお二人ですから仕方ないかもしれません。


 ユリウス様ですが、公に出来ないですけど大陸存亡の危機を救ったとして正式に王位を継ぐ事となりました。

 この功績には流石に反対派の貴族達も黙るしかなく、今現在は恐れ多くもランスロード皇で在らせられます。

 戴冠式には私達も御招き頂きました。

 厳粛でありながらも荘厳な式におけるその優雅な姿に、参加者みんなが心を打たれていました。

 各国の信頼も厚く諸国連合の宗主として大陸に関わる災厄の対応を図ってるようです。

 

 ルシウスはお父様であるユリウス陛下が王位を継いだので正式に皇太子に任ぜられました。

 これからは殿下ってお呼びした方がいいですかと伺うと苦笑混じりに馬鹿者、と一喝されました。

 男子三日会わざれば刮目して見よとはいいますが、この5年でルシウスもすっかり大きくなりました。

 愛らしいけど毒を持った天使⇒毒舌美少年へのクラスチェンジですね。

 今現在は王宮の雑務処理を積極的に処理して回ってるとの事。

 時折息抜きに来ては気の置けない私との時間を楽しんでいかれます。


 銀狐やセルムス、スカイ達アラクネメンバーは相変わらずです。

 私を支え、今も組織の運営を手助けしてくれてます。

 しいて言うなら少しだけ運営活動が認められてきたということでしょうか。

 5年前の世界蛇との対峙、各自の努力の成果もあり――

 非公認組織としてどうにか王国に認可されたような感じです。

 まあいつも変わらぬ銀狐や晩餐会出席後お招きの絶えないセルムスはともかく、いつか絶対スカイが何かやらかしそうですけど。


 その他身近な人達で言えば――


 コダチちゃん、クーノちゃんは蛹から孵った蝶の様に美しい少女へと成長を遂げ――同じく逞しく成長したワキヤ君と共に王都のお店で働いてます。

 え? どこのお店かって?

 それは勿論メイド喫茶<アズマイラ>ランスロード本店です。

 ええ、ついに出店しちゃいました。

 プレオープンから幾星霜――周囲の方々の熱烈な支持もあり運営は順調です。

 でも人間関係はちょっとフクザツかな?

 今では看板娘と化した二人にアプローチを受けるワキヤ君。

 そういう気まずいオレンジロードは二次元の中だけにしてほしいものです。

 まあトラぶるが闇増ダークネスで大変らしいですけど。


 ゴランさん、ジャネットおばさん達マイスター商会の方々もお変わりなく、

 相変わらず豪快なおば様の笑い声が店から絶える事はありません。

 仕事の付き合いだけでなく、今でも実の娘みたいに可愛がってくれます。

 激戦に対応する為、魔改造した<紅帝の竜骸>でしたが、恐る恐るお返しした私に笑いながらそれは私にあげたもんだとおっしゃってくれました。

 こうして共に過ごせるのが何よりの報酬だと。

 たださすがにお値段がお値段なので、父様を通して相応の謝礼を受け取って頂きました。

 おばさんだけでなくおじ様も固辞されたのには少し焦りましたけど。

 あっ、ちなみに一人息子のジャランさんは見事ブレイクハートしたそうです。

 合掌。


 星探しの面々は王都で躍進を遂げ、今では組合を代表する冒険者になりました。

 清廉潔白なリーダーである聖戦士ゼノスさんの指揮の下、沈着冷静な忍者であるクヨンさんが動き、消去魔術という固有能力オンリーギフトを持つフォンさんが支える。

 個々の技能が高いのもありますが、アレイドに匹敵する連携が素晴らしいと業界の噂です。

 しかし本人達に気取ったところはなく、今も気軽にメイド喫茶にいらっしゃってくれてます(っていうか常連です)。


 まあこんな感じで例えを上げれば枚挙にいとまがありません。

 では肝心の私は何をしてるのかというと――






「メイド長、休憩中申し訳ございません。

 そろそろ開店の時間になります」

「もうそんな時間ですか。

 は~い。今参りますね」


 私はすっかりぬるくなった香茶を一気に飲み干すと、エプロンとカチューシャを装備。

 姿見の前で身だしなみをチェック。

 うん、今日も完璧ですね。

 急ぎながらも姉様に教わった優雅さを失わずにお店へ向かいます。

 メイド喫茶<アズマイラ>フェイム支店に。

 そうです。経営が順調に乗ったのでついに支店を出したのでした。

 一応便宜上は私が責任者(支店長兼務)という形になります。

 これからの店舗拡大を想定した場合、顧客数の多い王都はともかく、地方の開業はかなり懸念事項が検討されます。

 まあそういう訳で受け入れられる土壌がしっかりしているフェイム村からの開始となったのでした。

 ここなら冒険者を相手にかなりの収益率が望めるのは経験済みです。

 しかし何事にも誤算はつきもの。

 予想以上に好評頂き、正直猫の手も借りたいほどマンパワーが足りてません。

 求人広告を出してはいますが、望みうる人材がいるのかどうか――


「ネガティブに考えても仕方ないですね。

 さっ、今日も張り切っていきましょう」


 軽く腕まくり。

 本日も御主人様達をお迎えする、大切な一日の始まりです。








「お疲れ様で~す」

「お疲れ様でしたーメイド長」

「お先に失礼します」

「あっ、はい。

 皆さん今日もご苦労様でした。

 明日も宜しくお願いしますね」

「「「は~い」」」


 仕事を終え帰宅するスタッフ達を見送ります。

 和気あいあいと談笑しながら帰る皆。

 明るく朗らかで真面目な子達。

 本店でじっくり教育を受けてもらっただけあってしっかりした子達です。

 でもやはりマンパワーが足りてないのは実感します。

 彼女達が浮かべる笑顔。

 その陰に潜む疲労を私は見逃さずに把握します。


「……すみません。

 皆さんに負担を掛けてるみたいですね(溜息)」


 今日も忙しい一日でした。

 最後の御主人様を送り出しを終え、店内を掃除し、明日の仕込みを終えるともうこんな時間になります。

 サービス残業はさせたくないので後は私の頑張り時間でもあります。


「さ~て。

 あとは帳簿整理と物品購入伝票の作成ですか」


 発破を掛けるように頬をペチペチ。

 嘆いても仕方ありません。

 千里の道も一歩から。

 まずは溜まった領収書の山を――

 

 トントン

 ズコっ


 って、誰です!?

 気合を入れたところを絶妙に遮るノックの音。

 もお~間の悪い人もいますね。

 あ、もしかしてタチの悪いファンでしょうか?

 うちの子達を狙って押し掛ける困った人達が何回か来てるのです。

 きつめにご退散を願ったのですがいい加減してほしいものですよ。

 私は手近にあったフライパンを手に取ると深呼吸を一つ。

 思い切ってドアを開きます。

 

 ガシャーン!

 ガランガランガラ~ン!!


 驚きのあまり手から滑り落ちたフライパンが派手な音を奏でます。

 でも今の私にはその事を把握してる余裕がありません。

 だって、ドアを開けた先にいたのは――

 ここ数年待ち望み夢にも見た――


「夜分遅くに失礼する。

 従業員を募集してると聞いたのだが――ここで構わないかな?」

「えっ? ――ええ。

 そ、そうですよ」

「ふむ。

 飲食業全般に関わる技能所持者推奨と募集要項にはあったのだが……

 果たしてわたしは該当するだろうか?」

「もう~(ふう)。

 そうですね、スキルで例えるなら執事スキルS級くらいは欲しいですね」

「なかなか厳しいのだな」

「あら、お持ちじゃないんですか?」

「これがどういった訳か――所持していてな」


 肩を竦め困ったような苦笑を浮かべ入室する彼。

 私もつられて笑いながらゆっくり近付いていきます。

 白髪に近い白銀の髪。

 鋭く全てを見据えながらも、どこか優しさと寂しさを秘めた双眸。

 試練を乗り越えた者が持つ、秘めた強靭な意志をたたえている唇。

 鍛錬を重ね磨き上げてきた、しなやかな筋肉と少し焼けた銅の肌。

 何より聞く者を安心させるその深い声の持ち主は一人しかいません。


「前のお仕事は――よろしいのですか?」

「死亡退職もある、とても素晴らしい職場なのでね。

 降臨申請が受理されるのに随分と時間が掛かってしまった。

 まあ長年勤めてきたんだ。

 溜まった有給休暇を消費しても罰は当たるまい?

 そうだな――君の傍にいられる間くらいは」


 近付き見つめ合う私達。

 互いの瞳に映る、お互いの姿。

 別れの日から少しは成長した私を見てどう思ってくれてるのでしょう?


「綺麗になったな、ユナ。

 口下手なわた――俺だが、本当にそう思う」

「あっ、う――ずるいですよ。

 いきなりそんな風に言われたら困るじゃないですか」

「大分待たせてしまったからな。

 君が心変わりしてないか気になって仕方なかった」

「あら、そうなんですか?

 ふふ……良かった。

 ならば私と一緒ですね」

「そうなのか?」

「はい、そうです。

 だから――確かめてくれませんか?

 あの日の約束が果たせるかどうかを」

「ふむ。どうやって?」

「こうやって、です」


 心を突き動かす衝動を抑えきれず、身を委ねる私。

 そんな私を優しく受け止め抱擁する彼。

 もう何もいりません。

 そこに彼がいてくれる。

 ただそれだけの事が私の心を満たし、侵し、潤っていきます。

 そのままゆっくり顔をあげそっと瞳を閉ざします。


「おかえりなさい、ネムレス」

「ただいま、ユナ。

 あの日の誓いを今ここで果たそう」


 そして重なる唇。

 身を焦がすような歓喜に私はネムレスを再度強く抱き締めます。

 ちゃんと彼は約束を守ってくれました。

 だからこれからどうなるか?

 物語の行く末は不明です。

 ただ明日からは少し皮肉屋で――

 でもお人好しな執事がアズマイラ支店に増えると思います。










 さて、随分と長くなりましたが――

 私のお話はこの辺でおしまいにしましょうか。

 まあ色々あって勇者の系譜とやらに異世界転生した私ですけど――

 そんな事関係なくメイド喫茶で働いてます。

 これからも、彼と共に。






                                




                              FIN


 更新大変お待たせ致しました。

 この話を以てユナシリーズは完結です。

 3年の長きに渡って更新できたのは読み続けてくれた皆様のお陰です。

 改めて感謝を述べたいと思います。

 個人的に大団円が好きなので頑張ったつもりですが……

 いかがだったでしょうか?

 良かったら感想をお聞かせ下さい。

 それではまた違うお話でお会いしましょう。

 

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