決闘<デュエル>8
唸りを上げ襲い来る槍斧を躱す。
戦闘開始から矢継ぎ早に繰り出される質量ある斬撃。
再生能力に定評ある一角馬の癒し手とはいえ、一撃で絶命させられればそれも叶わない。
技量にもよるが、単純に竿上武器という存在は厄介だ。
間合いを瞬時に詰めるだけではなく、遠方からの攻撃を易々と行う事が出来る。
最近躍進目覚ましい帝国の一般兵が5メートルを超す槍で部隊を為すと聞いたが、それもむべなるかな。
嵐の様な攻勢を前にリューンは接敵出来ないでいた。
何より恐ろしいのは敵の能力だ。
振るわれし槍斧にはリューンの力とは真逆、負の生命力が宿っている。
単純な破壊力だけでも危険だというのに、亡者共を支えるその力は触れただけで活力を吸い取る。
この暗黒騎士の力の源泉。
おそらくアンデットナイトなどに代表される上位の死霊騎士。
つまりそれは正の生命力を担う自分の天敵であるということだ。
(しかしそれは向こうも同じ!)
いつまでも回避し続けられるものではない。
リューンは覚悟を決めるとスキル<清浄領域>を発動。
自在に動く浄化結界がまるで生き物ように騎士を絡めとる。
幻想郷での修業はリューンのスキルを大幅に強化し、通常はありえない効果をもたらすほどになっていた。
こういう風に攻勢的な捕縛用途は従来の使い方にないものだ。
その有用性は死霊騎士を絡め取った事からも窺える。
だがその代償もまた大きい。
「くっ……」
深々と腹を貫く槍斧。
槍先から流し込まれる負の生命力。
怨嗟にも似た呪いのようなそれは再生を妨げ、地に堕とそうとする。
「どうした?
この程度か、幻想郷の守り手よ。
自慢の再生力も負の生命力に侵食されている現状では振るわないようだな」
からかいを含んだ騎士の声。
しかしリューンはその声に皮肉的な笑みを浮かべ応じる。
「ならば貴様も味わうがいい」
「なっ! 馬鹿な!!」
決して油断した訳ではない。
リューンと死霊騎士の間合いは2メートル近く離れている。
卓越した技量を持つ騎士にとってその間合いは絶対だ。
たとえ清浄領域に絡めとられているとはいえ、何かしらの攻撃兆候があればすぐに防御行動に移行できる。
だが死霊騎士は貫かれていた。
原初の生命力たる正の力に満ちた荒々しくも鋭いモノ。
即ち――一角馬の角に。
リューンは可能な限り前傾してから人化を解いたのだ。
一角馬の人化は質量を強制的に置換し人の姿に押し留めている。
急激に解放された角は何に勝る武器として勢い良く死霊騎士に突き刺さった。
回避しようがない。
人化を解いた瞬間、転移したようにそこに角があり貫かれたのだから。
「貴様……」
「これで条件は対等。
さあ、人族の言う地獄とやらに付き合ってもらうぞ」
「おのれ!!」
リューンから流し込まれる正の生命力。
負けじと流し返される負の生命力。
互いを貪り食らおうと波が訪れる度、両者は苦悶の貌を浮かべる。
こうなっては駆け引きや技量などは関係ない。
もはや食うか食われるかの生存競争だ。
こうして、文字通り生命を賭けた凄惨な綱引きの幕が上がるのだった。
短めですけどテンポ良く更新。
あと20話くらいで終了です。




