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決闘<デュエル>2

「ふん。吾の相手は貴様か」

「そうなるな、幻想郷の守り手よ」


 整った美貌に凄烈な眼差しを宿しながら前に立つ者を睨むリューン。

 吟遊詩人のような長衣が苛烈な闘志に触れ、揺れ動く。

 1時間近い道程の果て。

 リューンが辿り着いたのは広大な地下円形広場。

 そこにいたのは暗黒に染められた鎧を纏った騎士。

 その顔はフルヘイムに覆われ窺う事は叶わない。

 ただその手に持つ槍斧ハルバードだけが不気味に意思表示を示していた。

 語るまでもない。

 それはここを通さないという絶対の意志の代言。

 即ち――闘争。

 


「では始めるとしよう。

 飽くことなき素晴らしき戦いを」

「望むところ……

 と言いたいが、ひとつだけいいか?」

「何だ?」

「貴様らは――何者だ?

 魔神皇に仕える六魔将は幾人か倒したはず」

「そういう事か。

 あんな小物たちと比べられては困る。

 我らは魔神皇様に真にお傍に仕えし者達。

 誇りある我等の名は――」











裏六魔将リバースシックス――だと」

「ソウダ、琺輪ノ守護者ヨ。

 ワレワレコソ、真ニ魔神皇様ニ仕エル事ヲ許サレシ者。

 名バカリノ表ノ者達ト一緒ニシテモラッテハ困ル」


 双刃<ライトアンドシャドウ>を構えるネムレスを嘲笑うように男は言った。

 リューンと同様に闘技場内部を歩き、辿り着いた先。

 そこは山間地帯が見え隠れする断崖絶壁のステージ。

 待ち受けていたのは野獣めいた獣性を剝き出しにした男。

 粗末な貫頭衣から無造作に突き出ている鍛え抜かれた筋肉を見るまでもなく前衛戦士型、パワータイプだろう。

 醜い乱杭歯をいやらしく歪ませながら男は続ける。


「オ前ハ運ガ悪イナ、守護者」

「どういうことだ?」

「表ノ者ト違イワレラノ持チエシ力ハ比較ニナラン。

 楽ニ死ネルトハ思ワヌコトダ」

「素敵な忠告痛み入る。

 しかしそのような心配は無用だろう」

「ナンダト」

「俺も……そして共に来た者達も。

 生憎一筋縄でいくような気質は持っていないのでね」

















「随分と大言を吐くじゃないか、闘刃よ」

「気を悪くしたなら謝罪しよう。

 しかし事実だ」


 既に幾合か刃を交えたのだろう。

 異名の名の由来ともなった高純度化された闘気の刃を童子切安綱より伸ばしながらカルは答える。

 相対するのは全身を術布で覆われた女。

 体格と伸びた頭髪から辛うじて女性という事は分かる。

 だが女は今しがた矢継ぎ早に繰り出した無数の術布を素早く回収し先を改める。

 様々な効果をもたらす魔術刻印の為された術布。

 鋼鉄と刃の刻印が為された筈の術布ら。

 それらは全て半ばにして断ち切られていた。

 目の前に立つカルの闘刃によって。

 

「まあ口だけの男じゃないみたいだね。

 これは楽しみになってきたわ」

「お褒めに預かり恐悦至極。

 しかし有難迷惑な話だ。

 わたしも、共に来たわたしの仲間達も。

 皆お前達に負ける理由がない。

 裏の六魔将だか何だか知らんが、お前達を倒し魔神皇を討つ。

 ただそれだけのことだ」

「言うね、闘刃。

 いや、カルティア・ノルン。

 ならばあたしを止めてみろ!」


 女の叫びと共に、嵐のようにうねりをあげ鎌首をもたげる術布。

 魔戦開戦の口火はこうして切られたのだった。




  

更新です。

このシリーズもいつのまにかもう少しで3周年ですね。

クライマックスなので今しばらくお付き合い下さい。

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